第195話 昔の姿
最近ちょっと忙しくてあまり時間がとれなくて追加が増えてましたが今日は大丈夫!!
まぁ短いんですけどね。
コピを仲間にした俺たちは第二層のボス部屋の階段を降りて第三層に向かっていた。
「そういえば、第二層の階層ボスはどうなるんだ?」
「多分ゲムが新しい神を創って配置するだけだと思う」
「なるほど」
つまり、滅ぼした神が復活することはないと。
「そういえばふと思ったが、第三層はどんな階層なんだ?」
「知らない。私は生まれてからずっとあの部屋にいたから」
「そうか」
きっとコピが知っているということは本当に少なくて、ゲムに教えてもらったことだけなのだろう。
それを哀れだとは思わない。
同情するほど俺はコピという存在を強く認識していない。
別に死んでもなんとも思わない。
ただ、何故だろう。
心のどこかで俺が言っている。
コピは心から信用してもいいと。
「ここが第三層」
俺がそんなことを考えている間に第三層が見えてきた。
第三層は不思議な場所だった。
いたるところに時計があった。
俺達は第三層に入る。
その瞬間、俺達の体が光った。
次の瞬間、光は消えて俺達の姿が変わった。
ルミネスとコピの姿は何も変わっていない。
だが、俺、ミコ、セーラの姿は変わっていた。
「鏡が欲しいな」
俺は「無限収納」を発動した。
いや、発動しようとした。
だが、出来なかった。
というかそもそも、魔力を使うことが出来なかった。
「魔法が使えない」
「私もスキルが使えない」
どうやらミコとセーラも似たような状況らしい。
「どういうことだ?」
「魔王様、そのお姿は?」
ルミネスのその発言にミコとセーラも目を見開いた。
「シン、その姿。何?」
「私達、シンのそんな姿見たことない」
二人の発言を聞いて俺は今一度自分の服装を見る。
それは高校の制服だった。
「何を言っているんだ?これは高校の制服ふ、く」
高校の制服?
何で俺がそんなものを着ているんだ?
「ルミネス、鏡を用意しろ」
「了解」
ルミネスは「ストレージ」から鏡を出してくれた。
大きな鏡だ。
「「「は?」」」
その鏡で自分の姿を見て俺、ミコ、セーラは驚愕した。
だって俺の姿は草葉蓮の姿だったのだから。
ミコ視点
私はルミネスに出してもらった鏡で自分の姿を確認して驚愕した。
なぜなら私の姿は、私が昔塔に幽閉されていた頃の姿だったのだから。
この姿を見て私は一瞬頭痛がした。
この時の私は弱かった。
誰も仲間がいなくて、ずっと一人で、孤独で。
誰も助けに来てくれない。
私は何も悪いことしてないのに、誰もが私を苦しめる。
楽しそうに、幸せそうに笑う。
それを見るだけで私はしんどくなる。
折り合いをつけたはずの感情がどんどん湧いてくる。
もう存在しないのに、あの国の連中を殺したい、苦しめたいという衝動が湧いてくる。
私はシンを見る。
すると私の心は落ちつく。
大好きなシンを見ていれば、全てがどうでもよくなる。
私はシンのことしか考えられなくなる。
多分、今の私には何もない。
心はそんなことないと分かっていても、体が孤独を感じてしまう。
でもシンを見ればそんな孤独は消え失せる。
私は落ち着くまでじっとシンを見るのだった。
セーラ視点
私はルミネスの鏡で自分の姿を見て驚愕した。
なぜなら私は小さくなっていたのだから。
多分この背丈は中等部一年生くらいだと思う。
服装に関しては普通の服。
昔の私がよく好んで来ていた服だ。
別に可愛いとは思わない。
ただ、動きやすくて着替えるのが楽だったから気に入っていただけだ。
でもこの服はシンとミコと出会ってからは着なくなった。
シンにもっと高性能の服を「創造」で創って貰ったからだ。
ミコと私の服はシンが「創造」で創っている。
可愛くて、動きやすくて、特性も付与されている。
汚れが勝手に落ちる自動洗浄。
破れたりしても自動で修復される自動修復。
他にも魔法威力増加や魔法耐性など様々な効果がつけられている。
シンって本当に過保護だ。
だからシンと出会ってからはずっとシンが創ってくれた服しか来ていない。
つまり、この服とこの背丈から推測できるのは今の私の姿はシンとミコの二人と出会う前の私だということだ。
魔法やスキルが上手く使えなくて。
学園では無能王女と呼ばれていて。
家族には迷惑をかけて。
人生に絶望していた頃の私。
生きるのがしんどくて、でも死にたくなくて無気力に過ごす日々。
私は普通ではない。
それは王女という立場や殺戮神の加護を持っているということではない。
私は元々、少しずれた人間だった。
子供の頃、お母さまからよく聞かされたおとぎ話。
その思い出自体はありふれたもの。
平民の子供であっても似たような経験はあっただろう。
聞かされたおとぎ話もとても有名なもの。
主人公の勇者が初恋の王女様と一緒に悪い魔王を倒してお姫様と結婚するお話。
この国の建国話として有名なものだ。
勿論これはただの作り話。
勇者は私だし、私程度じゃシンに勝てるわけがない。
だからそれはただの作り話。
男の子なら勇者に女の子ならお姫様に憧れるのが普通なのだろう。
だけど私は違った。
まず悪い魔王という表現が嫌いだった。
好き嫌いというのは人の主観だ。
正義というのは見る人によって変わる。
それと同じだ。
作者の主観を押し付けられているようで嫌だった。
次に初恋の女の子と結婚するという話。
これは物語の最後にほんの少しだけ添えられていただけ。
そしてこの物語にお姫様が勇者のことを好きだと分かる描写はなかった。
だからこれは政略結婚の可能性が高い。
政略結婚というのは王族や貴族の義務ともいわれるが、私は嫌いだ。
だからこの物語をハッピーエンドとは言いたくなかった。
おとぎ話一つにをそういう風に考えてしまう子供だった。
私は昔から魔王を倒す物語は嫌いだった。
物語を読む前から嫌悪感があった。
どれだけ魔王が悪い存在として描かれた物語であっても私は魔王を倒す物語が嫌いだった。
きっとそれは私が魔王様のことが大好きだったからだ。
記憶はないにしても魔王様が倒されるという話を魂が嫌っていたのだろう。
少し話がそれたが私は昔から色々と考えすぎてしまう癖があった。
だからこそシンとミコの二人に出会う前の私の記憶は悪いものばかりだ。
悪い想像なんて日常茶飯事だったし。
それが現実に起こることも多々あったから、あの頃の私にはずっと暗い感情があった。
その暗い感情が徐々に私を支配していく。
私はすぐにシンを見る。
心がシンに染まっていく。
心が晴れるのではない。
シンに染まるのだ。
どれだけ悪い記憶があろうと感情があろうと、魂を捧げるほど好きな人を見ればそんなものはどうでもよくなる。
私はしばらくの間、じっとシンのことを眺めるのだった。
シン視点
俺の姿は前世の姿、つまり草葉蓮の姿となってしまった。
服装は高校の制服。
俺が通り魔に刺されたときにも来ていたものだ。
肉体年齢も18歳。
だが今と大して背丈は変わっていない。
前世の俺は16歳あたりから成長が止まったからな。
鏡で自分の顔を見るが普段と大して変わらない。
あまり違わないなと思っていたが、こうやって今一度草葉蓮の顔を見てみるとそっくりだと実感する。
この体にはいくつか問題がある。
まず1つとして魔力が使えない。
またレベルの概念も消えて身体能力も普通だ。
普通といっても平均よりは遥かに高かったが、今みたいにものすごい速さで動いたりは出来ない。
つまり、ダンジョンの攻略は絶望的になった。
身体能力か魔力。
このどちらかが変わっていないならばまだやりようはあった。
別に魔力がなくても俺はそこそこ強いし。
魔力さえあれば「超強化」で身体能力を強化することもできた。
だがどちらも失った現状は少しばかりまずい。
俺はしばしの間どうするべきか考えることにした。
あと少しで総合評価500Pです。
かなりキリの良い数字なので何かしたいと思ってます。
作者はXとかを全くやってないのでアンケートとかもとれません。
感想とかでやってほしいことを教えてくれたら番外編の方でやります。
巻き返しカウント:10話
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