第170話 「災禍」と「聖女」
今日も少し短めです。
私はシンと添い寝していた。
すると「聖女」が入ってきた。
どうやらあの馬鹿勇者を殺したらしい。
本当にお疲れ様だ。
シンは「聖女」にいつでも添い寝していいと言った。
ぶっちゃけ口に出されてないだけで私とセーラも似たようなことをしても何も言われていないので、今更だ。
それに「聖女」のことは親友だと思っている。
なので添い寝くらいで怒ったりはしない。
だけど、私はシンの傍に寝ころぶときの「聖女」の表情を見てしまった。
それは俗にいう乙女の顔。
恋した男を見る顔だった。
翌日
私は魔境に「聖女」を呼び出していた。
「「災禍」、何の用かしら?」
私が魔境で待っていると「聖女」が来た。
「ねぇ、「聖女」貴方、シンのこと好き?」
私は直球に質問する。
「勿論好きよ」
「聖女」はそう返答する。
ここまでならば普通の会話だ。
七魔公は全員、シンのことが大好きだから。
「その好きはどういう好きなのかしら?」
この発言で「聖女」も気づいただろう。
いや、確信したという方が正しいか。
私がこのタイミングで呼び出したというだけで要件の予想はつく。
それをさっきの私の発言で確信したといった感じだだろう。
「貴女はどうなんです?魔王様のことが好きなのは当たり前として、その好きはどんな好きなのですか?」
「聖女」はそう笑いながら答えてきた。
「勿論、恋愛的な意味で好きよ」
私の発言に「聖女」は目を見開く。
恐らく、私が誤魔化すと思っていたのだろう。
確かに4000年前の私ならば誤魔化しただろう。
だが、今の私は違う。
今の私とシンは兄妹でも何でもない。
だから誤魔化したりせず普通に答えることが出来るのだ。
私はシンのことを恋愛的な意味で好きだと。
「さぁ、「聖女」貴女の答えを聞かせて頂戴。貴女の好きはどんな意味なのかしら?」
「、、、」
「聖女」は黙って私をジッと見る。
「はぁ、誤魔化すのは無理そうね。正直に答えるわ。私は魔王様のことを恋愛的な意味で好きよ」
私はその返答を聞いて笑う。
まぁ正直分かっていたことではあるが、確信が欲しかった。
「ふふ、そう。貴女はシンに愛されたい?」
「そりゃ愛されたいわよ。好きになった人に愛されたくない女なんていないと思うわよ」
「それはそうね」
「それで、わざわざそんなことを聞くためにこんなところに呼び出したんじゃないでしょ。要件は何かしら?」
「ふふ、ねぇ「聖女」。今現状シンのことを恋愛的な意味で好きな人の数って分かる?」
「5人。かしら?」
「正解。私、セーラ、ゼミル、ライシュ、貴方の5人ね」
「何が言いたいの?」
「貴女がいなくてもシンの好きな人は既に4人いるの。今更1人増えたところだと思わない?」
私のその発言に「聖女」は目を見開く。
私がこんなことを言うだなんて思わなかったのだろう。
「「災禍」、貴方本当に何を考えているの?」
「聖女」は疑りぶかそうに私を睨む。
「まどろっこしいのも面倒になったし、分かりやすく伝えるわ」
そして私は魔力を高めて「ストレージ」から吸魔を取り出す。
「私はシンと貴女が恋仲になること自体には好きにすればいいと思ってる。勿論私を一番愛してほしいけどね。でもさすがに恋敵に何もしないっていうのは、私としては出来ないの。だから、シンに愛されたければ私を倒したなさい」
中々な暴論だと思う。
本当ならシンが愛する相手を私が決める資格はない。
私のシンと恋人であったり、婚約者であったならば話は別だけど。
今はまだ主従、相棒、親友といったところだ。
だけど、私の感情が「聖女」と戦わないと気が済まないのだ。
きっと私が「聖女」を警戒しているのはきっと不安によるものなのだろう。
セーラやゼミル、ライシュは一番でなくてもシンに愛されるのならばいいと思っている。
でも「聖女」は違う。
「聖女」は確実に一番を狙ってくる。
今現在、シンの一番に最も近いのは私だという自負がある。
でもその立場はいつか奪われるかもしれない。
そしてその奪う相手として最も可能性が高いのは「聖女」だと私は思っている。
だから不安になってしまう。
だから私は「聖女」と戦う。
そうしないと私の気が済まないのだ。
「ふふ、ふふふ、あははははは。いいわね「災禍」私達は七魔公。魔王軍の幹部よ。魔王様を求めて決闘だなんてとっても魔王軍らしいじゃない。やりましょうか」
そう言って「聖女」も愛用武器である十字架を「ストレージ」から取り出した。
そしてどちらともともなく魔法を発動する。
「ライトランスレイン」
「レジスト」
「聖女」は光の槍の雨を降らせるが、私は「レジスト」ですぐに無効化する。
「「ホーリーフルエンチャント」「パーフェクトパワーアップ」「パーフェクトスピードアップ」「パーフェクトディフェンスアップ」「ホーリーフルバッドエンチャント」「パーフェクトパワーダウン」「パーフェクトスピードダウン」「パーフェクトディフェンスダウン」」
「聖女」は大量のバフ魔法で己を強化し、大量のデバフ魔法で私を弱体化させる。
「レジスト」
だが、この程度のデバフ魔法ならば「レジスト」一つで無効化できる。
すると私が「レジスト」した直後、十字架を持った聖女が私の懐に入り込んでいた。
「ブラッドランス」
私は咄嗟に「聖女」に向かって血の槍を放つ。
「チェンジクロス:ソード」
その瞬間、「聖女」の十字架が細くなり、先がとがったりと剣のような形になった。
それで「聖女」は私の血の槍を斬った。
「聖女」が使っている十字架の名前は「再生の十字架」という名前で、シンが魔王時代に創った神器の一つだ。
だが、こんな剣に変わるような力はなかったはずだ。
私は咄嗟に「ショートテレポート」を発動してすぐ後ろへ転移する。
そして私は吸魔で十字架を抑えた。
「「再生の十字架」。いつの間にそんな力を」
「ふふ、実は最近魔王様に新しい力をいくつか追加されたのよ。その一つが「クロスチェンジ」十字架の形をある程度変更することが出来るわ。それに魔王様が「創造」の力を得たことで全体的な能力も非価格的に上昇しているの。今のこの十字架の名前は「聖十字架再魔」よ」
「なるほど」
シンがやったのならば納得だ。
「貴女がここまで強くなっているとは予想外だったわ「超強化」」
私も「超強化」を発動して、身体能力を上昇させる。
そして私達は互いに剣で斬り結ぶ。
「神速」
私は「神速」を発動して「聖女」の右腕を斬り落とした。
だが、
「その程度じゃ、すぐに再生出来てしまうわよ」
次の瞬間には、斬ったはずの「聖女」の右腕を再生された。
「貴女って人間だったわよね。実は吸血鬼だったりしない?」
あれほどの再生速度をもつの種族は吸血鬼くらいだ。
「普通の人間よ」
「じゃあその再生速度は何なのかしら?」
「ミコ、私の加護って何?」
「なるほど。納得したわ」
「聖女」の加護は再生神の加護だ。
再生神の加護を持っているのだから、再生系のスキルだってたくさん潜っているだろう。
「今、私は「無限再生」というスキルを発動したの。このスキルは自分が怪我したと認識した瞬間に傷が再生するというスキルよ」
「なるほど」
私がそんなことを考えていると私の首を斬裂こうと、「聖女」は剣のような形をした十字架を振るう。
私はそれを「神速」を使って何とか避ける。
だがうまく避けきれず左腕が斬り落とされてしまった。
そして私は流れるように「聖女」にカウンターを仕掛ける。
吸魔が「聖女」の心臓に突きっ刺さった。
私の左腕は既に元通りだ。
吸血鬼の再生能力を舐めちゃいけない。
そして私は流れるように吸魔を「聖女」の首に突きつける。
「私の勝ちよ」
私はそう「聖女」に言った。
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