第162話 教師代理
今日も短めですみません。
来週は更に多忙になる予定なのでまた抜けるかもしれません。
ご了承ください。
俺は今、わけあって「トランスフォーム」でユアに変身して学園でユアとして教鞭を振るっている。
「つまり、この毒草は加熱さえすれば高品質な薬の材料になるってわけ」
キーンコーンカーンコーン
「今日の授業は終わりよ。それじゃあ気をつけて帰りなさい」
俺はそう言って教室を出た。
そして職員室で不機嫌にしながらさっさと雑務を終わらせる。
ここで不機嫌にしておくことで他の教職員に話しかけられてボロが出る可能性を減らすことが出来るのだ。
そして仕事が終わった俺は「テレポート」で魔王城に帰宅した。
「おかえり」
「ただいま」
俺が魔王城に帰ってくると、ミコが出迎えてくれた。
俺は「トランスフォーム」を解除する。
すると普段の俺の姿と声に戻った。
「意外とやれば出来るものだな」
それはここ数日毎日思っていることだ。
俺はある事情から前世ではこういった人の動きをトレースするようなことを何度か行う機会があった。
これは魔王時代には出来なかった、草葉蓮として出来るようになった能力だ。
多分だがユアの動きをトレースした俺を見分けることが出来るのはユイくらいだろう。
あいつは冗談抜きで常にユアのことを見ているからな。
あとは無意識の仕草とかでミコやセーラにはバレるかもしれないな。
まぁ一応魔力も偽装はしているが、さすがに完璧とはいかないからな。
ミコ達に魔力を見られれば一瞬でバレるだろう。
「普通は出来ないと思うわよ」
ミコが呆れたといった様子で俺にそう言った。
「まぁいいじゃないか。にしてもやっぱり凡人にものを教えるのは大変だな」
「まぁ私達が何かを教えていた相手って大体天才だなものね」
俺が今まで教えてきた者と言えば、ミコ、セーラ、ゼミル、ユア、ユイ、ライシュだ。
そして全員がもれなく天才だ。
全員理解力が高かったし、座学とかは「メモリートレース」を使うことが出来たからほぼなしで良かった。
やっぱり優秀な教え子の方が教える側も楽だな。
「っていうか意外だな。ミコやセーラは普通に俺を見に来るかと思ったんだが」
普段のミコやセーラは普段俺がしないようなことをすると必ずじっくり時間の限り観察するからな。
「それは、その、あの」
「どうしたんだ?」
普段からは考えられないほどに歯切れが悪いミコに俺は問う。
「そのー、外見がユアとはいえ中身はシンだと思ったら頭がこんがらがちゃって、私達がボロだして周りにバレる可能性の方が高いから」
「そんなもんか?」
「じゃあ立場が逆だったとして、シンは私がユアの姿をして同級生に物を教えている様子を見て何も感じないの?」
「、、、、なるほど。それは確かに何かくるものがあるな」
「さてと、それじゃあシン」
「何だ?」
「血を吸わせて」
「了解」
その後俺はいつも通り、ミコに体の血の9割を吸われた。
「私も混ぜてー」
俺が吸われて動けなくなっているところにセーラが乱入してきた。
その後は三人でイチャイチャしたのだった。
翌日
今日も今日とて俺は「トランスフォーム」でユアに変身して学園に来ていた。
そして授業を始める。
今日は一日実技をやる日だ。
というのも今年から新しく決まったカリキュラムを始めてやる日なのだ。
そんな大事な日の教師が俺でいいのかという疑問もないわけではないが。
ユアはきっとこんなことをしているよりユイとイチャイチャする方が大事だろう。
そしてそのカリキュラムというのは一日かけてそのクラスの教師が生徒一人一人で摸擬戦を行うというものだ。
普段はこういう時ユアは「蘇生結界」を発動する。
だが生憎と「蘇生結界」はユアのアーツだ。
なので俺は使えない。
別に俺が同じアーツを創ればいいのだが、今回は代用できる魔法があるのでそれを使う。
俺は無詠唱で光属性伝説級魔法「リザレクションフィールド」と無属性災害級魔法「オートテレポート」、見た目をユアの「蘇生結界」そっくりに偽装した「絶対防御結界」を発動した。
「リザレクションフィールド」は指定の範囲内で死んだ存在を蘇生する魔法だ。
「オートテレポート」は事前に指定した条件が成り立った場合のみその対象を指定の位置に転移させる魔法だ。
これらの魔法とスキルを同時に発動することで疑似的な「蘇生結界」を創り出せるわけだ。
まぁ圧倒的に「蘇生結界」よりもコスパが悪いんだが。
まぁ生徒達を相手にするのだから問題ないだろう。
俺は大量のデバフ魔法を己に付与する。
これで多少はマシになっただろう。
恐らく俺がデバフ魔法を使用したことに気づいたのはミーゼくらいだろう。
そしてミーゼだが、恐らく俺だということに既に気づいている。
明らかに視線がおかしい。
教師に向ける視線じゃない。
あれは崇拝している神に向ける狂信的なものだ。
そしてミーゼがそんな思いを向けるのは俺だけだ。
つまりそういうことだろう。
なぜ気づかれたんだろう。
(魔王様、魔王様)
俺がそんなことを考えているとミーゼから「念話」が届いた。
(どうしたんだ?)
(これって私本気出したほうがいいのでしょうか?)
あ、これ間違いなく気づいているな。
(本気で来て大丈夫だが、何故気づいたんだ?)
(敬愛する主が分からない臣家など無能です。そして私は無能ではありません)
(それは嬉しく思うが、どこで気づいたのか聞きたい)
(魔力等はパッと見ただけでは分からないほど偽装されていました。ただ、やはりオーラが違います)
(オーラ?)
(はい、強者特有のオーラです)
恐らくここでミーゼが言っているオーラというのはようするに威圧感的なものだろう。
なるほど、確かに魔力や表情、動きは偽装したりまねたり出来てもそういう抽象的なものを真似ようとは思わなかった。
(なるほどな。参考になる)
(あと、魔王様の珍しい姿だと観察していたのですが、明らかにユア先生では考えられない点がありました)
俺は部下に女に変装している姿を観察されていたのか。
俺は少し、いやそこそこ大きなダメージを受けたのだった。
(それはなんだ?)
(それはユイがいないのに、ちょっと不機嫌程度で済んでいるという点です)
(なるほど)
確かにユアが教師になってから、ユイは授業は免除されているにも関わらず毎日学校に来ていた。
それは一重にユアと少しでも一緒にいるためだ。
だがそれは逆もしかりだ。
ユアだってユイと一緒にいるという幸福感が他のストレスやらなんやらを減らしているということは難しい想像ではない。
ならそのユイがいなくなったら?
ユアの機嫌は過去最悪になるだろう。
それに比べて俺は周りから話しかけられないように不機嫌を演じてはいたが、確かに考えればそんなのでは生ぬるかったのか。
(参考になった。礼を言う)
(いえいえ、お役に立てて光栄です。魔王様)
(今度、お前の願いを叶えてやろう)
(お願いですよ)
そして俺たちは「念話」を切った。
さて、授業を始めるとするか。
「それじゃあ授業を始めるわ」
俺は生徒達にそう告げたのだった。
俺と戦う順番は実力順だ。
この実力順は事前に行った摸擬戦の結果だ。
ちなみにだがその時の摸擬戦の結果は1番は俺、2番はミコ、3番はセーラ、4番はゼミル、5番はユイ、6番はライシュ、7番はミーゼ、8番が勇者だ。
ちなみにだが、俺達は周りの被害や周りに見られるとまずい技もあるのである程度手加減していたりする。
ミーゼは聖女であるため猶更実力を隠さなければなならなかった。
恐らく今のミーゼなら簡単ではないだろうが、セーラにすら勝てるくらいの実力は持っているだろうからな。
そして授業は始まった。
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