第150話 魔力衝動
今日も短いです。
本日で転生したら平和に暮らそうと思っていたのに最強の能力を手に入れてしまった!の150話目を無事迎えることが出来ました。
お楽しみください。
俺とミコは今、久しぶりに摸擬戦をしていた。
「ブラッドスピア」
ミコが血の槍を放ってくる。
その数は1000を超えている。
「ワンハンドレットスラッシュ」
俺はすぐさま1000の斬撃で対処を試みる。
が、圧倒的にミコの魔法の方が数が多いため対処しきれない。
それにミコは俺の斬撃で魔法が相殺されるたびに新しい魔法を発動しているのだ。
そう、簡単に言おう。
ミコは数でごり押しているのだ。
「エリアキル」
俺は死属性中級魔法を発動した。
この魔法は「キル」の進化版で事前に設定した範囲に入った瞬間に自動的に死ぬという魔法だ、勿論格上には効かない。
が、これはある意味「アンチマジックエリア」の上位互換ともいえる。
なにせ相手の魔法攻撃は自動的に死に消滅するのに俺や俺が認めた人間は範囲内でも好きなに魔法を使えるからな。
「まったく便利な魔法だ余所見をしている暇があるのかしら?」
するとミコが吸魔を構えて、「神速」を発動し俺に接近する。
俺は咄嗟に二本の剣で何とか防いだ。
「そろそろ終わりよ。私からのプレゼント」
そう言ってミコは俺の体内に莫大な量の魔力を流しこんだ。
これはミコが狙ったのかどうか、、俺も快楽にやられて意識をが暗転する。
やば、い。
俺はそう思考するのを最後に意識を手放した。
ミコ視点
「これが、一昨日のシンの気持ち」
私は一昨日、シンがしてくれたように今度は私の寝室にのベッドに寝かせる。
シンは気持ちよさそうに寝ている。
大好きな人の看病と言うのは意外と悪くない。
結局私はシンの顔をシンが寝ている間ずっと見ていた。
「う、うううん」
するとシンが目を覚ました。
「おはよう」
私はシンに挨拶をする。
「あぁ、おはよう」
シンは起きたばかりでまだ意識がはっきとしていないようだ。
「摸擬戦は私の勝利よ」
私はシンに摸擬戦の勝利を宣言する。
「摸擬戦?そうだ、俺はミコと摸擬戦を強い快楽を感じて、そうか負けたのか」
「そうよ、私の勝利よ。血による強化はかなり恩恵があったわ」
私とシンの身体能力はほぼ互角だった。
だけれど私はシンの血を飲んで強くなった。
そのおかげで私の身体能力はシンよりも高くなった。
なのでシンに大量の魔力を流すという今までできなかったような大胆なことが出来たのだ。
「なるほどな」
シンはどうやら納得したようだ。
「ねぇ、シン」
私は摸擬戦中にずっと疑問に思っていたことを聞くことにした。
「どうしたんだ?」
「ねぇ、どこか悪いの?」
「いや、別に悪くないが?」
シンは当たり前と言った様子でそう答える。
私はシンのことを深く観察する。
私はよく嘘が下手だと言われる。
実際そうなのだろう。
私は嘘をついてもシンにはすぐバレてしまう。
吸血衝動の時もそうだった。
でもシンは私と違って嘘が得意だ。
まぁシンが私に嘘をつくことなんてほとんどないけれど、シンが誰かについた嘘を私は見抜けない。
私に向けた嘘なんてまったく見抜けない。
だけど、今だけは分かる。
シンは嘘をついている。
なぜならばシンの魔力があきらかに揺らいでいるからだ。
普段のシンは周りに影響を与えないように魔力を抑えて生活している。
だけれど、今のシンは魔力を全くと言っていいほど抑えることが出来ていない。
寝ぼけているから。
意識を失っていたから。
というわけではないはずだ。
シンがその程度で魔力を抑えるのをやめてしまうとは思わない。
第一シンが気絶すること自体は珍しいことじゃない。
戦闘による影響でシンが気絶するはめったにないけれど、私と魔力循環や魂交換をすればすぐに快楽で気絶する。
勿論、それは私も同じだが。
シンは魔力循環などで気絶をしても魔力を抑えるのをやめることはない。
ならば今回だけ抑えられていないのは可笑しいだろう。
それにシンは自分が魔力を抑えられていることに気づいていないようだ。
普段のシンならあり得ないことだ。
私はまずそこに違和感を覚えてシンに聴いたのだ。
勿論他にもシンに違和感を持ったところはある。
明かシンの瞳が私を捉えていないのだ。
いや私のいる方向を見てはいるのだ。
だけれど明らかにシンの瞳は焦点が合っていないのだ。
そして明らかに普段よりも魔力が少ない。
シンはまったく魔力を抑えていないというのに、シンから感じる魔力圧は弱い。
いや、常人があびれば間違いなく死ぬ程度の魔力圧ではある。
だが、逆にいえばそこそこの実力者ならば気絶程度で済む程度の魔力圧だ。
普段のシンが魔力を抑えなければ周囲には圧倒的な強さの魔力圧が発生し大抵のものは一瞬で死んでしまう。
これらが私がシンがどこか悪いのかと考えた理由だ。
そして今のシンの魔力は揺らいでいる。
魔力が揺らぐという現象は普通は起きることはない。
基本的には意識しないと魔力がそのような動きをするということはありえないのだ。
だが魔力が揺らぐ原因として考えられることはもう一つある。
それはその魔力の持ち主が動揺した時だ。
そしてシンが私の問いに答えたとき、シンの魔力はほんのわずかに揺らいだ。
常人では全く気付かないであろうほんのわずかな揺らぎを私は見逃さなかったのだ。
魔法神の加護を持つ私は魔力についてはかなり敏感なのである。
ということで私はシンのことを睨む。
「どうしたんだ?そんなに睨んで」
シンに問いかけられるが無視して私はシンのことを睨みつける。
「はぁ、ミコ相手ならバレないと思ったんだがな」
どうやらシンは白状する気になったようだ。
「シン、どこが悪いのかしら?どこであろうともすぐに治すわ。私とミーゼが強力すればどんな怪我だろうが呪いだろうが治すことが出来るわ。昔よりも強くなった私たちならゼロが死んでしまう原因とな
ったあの呪いだって治すことが出来るわ」
私はシンに問いかける。
もう二度とシンを失いたくない。
せっかくあともう少しで手に入りそうなのだ。
私はシンを逃がすつもりはない。
それになにより、もうあんな孤独は感じたくない。
ゼロが死んだ当初は私は何の気力もなくなった。
三大欲求が機能しなくなりすべてがどうでも良くなった。
とりあえず魔王が死んだからと調子に乗って攻めてきた国々を滅ぼした。
だが私の気は晴れずに結局ゼロがこの世界に戻ってくるまで眠るという選択肢をとった。
だから再びゼロがこの世界に戻ってきたと分かった日、私はもう二度と失わないようにすると誓った。
だから私はシンに何かあるならばたとえ世界を滅ぼしてでも治す。
「別にどこが悪いってだけじゃないんだ。ただ」
「ただ?」
「言わないと駄目か?」
「言わないと駄目」
普段のシンの様子からは考えられないほど弱弱しい声だった。
やはり何かあるのだろう。
「お前が悪いんだぞ」
そう言ってシンは私をベッドに引き入れて私にキスをする。
舌を入れるわけでもないただただ唇を合わせるだけのキス。
ここまでなら普段舌を入れたりしている分物足りなさを感じる。
だがシンは普段しないことをしてきた。
「うむっ」
私の唇から魔力が抜かれていく。
そしてシンは私を抱きしめる。
そして体中から魔力を抜き取られていく。
私に快楽と脱力感が同時に押し寄せてくる。
シンが弱っている原因がようやくわかった。
よく考えたら分かることだったのだ。
私の吸血衝動が限界になっているのならば、シンだって同じようなことになっていても不思議じゃない。
というかむしろ自然だろう。
シンは人間だが、ゼロは人間ではない。
ゼロは半人半魔、つまり人と魔族のハーフだ。
私が前世の力を取り戻して人間であるにもかかわらず吸血姫の力が使えて吸血衝動がおこるのだからシンが半人半魔としての何かがあっても可笑しくない。
人間には吸血衝動のようなものはない。
強いて近いものをあげるとすれば三大欲求くらいだ。
だがゼロは人間と魔族のハーフだ。
ゼロは魔族としての特性も持ち合わせている。
魔族には吸血鬼の吸血衝動と近い衝動がある。
その名も魔力衝動。
自分以外の魔力が欲しくてほしくて仕方が無くなるという衝動だ。
恐らく今のシンは魔力衝動なのだろう。
シンは私の魔力を吸っていたから。
だが私はシンが魔力衝動を起こしていると分かっていてもどうすることもできない。
私はひたすらにシンから魔力を吸われていくのだった。
改めてとなりますが、普段は大抵のことは数週間で飽きる作者がWEB小説に関してはもうすぐで5ケ月となります。
こんな風に出来るのも応援してくださる読者の方々のおかげです。
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