第147話 吸血衝動
本日二話同時投稿。
この話は一話目です。
短めです。
俺は吸血衝動によって暴走したミコを落ち着かせた。
今、俺とミコは俺の寝室にいる。
俺が気絶したミコを「エリアテレポート」で転移させたのだ。
俺はミコを俺のベッドに寝かせる。
俺はミコの頬を触る。
やわらかくて気持ちが良い。
実は俺はたまにではあるが、ミコよりも早く起きたときにこうやってミコの頬を触っていたりする。
最初はちょっと魔が差しただけだったのだ。
目の前に綺麗な頬があってちょっと触ってみただけだったのだ。
だが一度触ると、ミコはもちもちぷにぷにすべすべの肌の持ち主だということが分かった。
ミコは昔からそうなのだ。
そして俺はその肌の虜になり、こうしてたまに触っているのだ。
っていうか4000年前にもたまにこうしてミコの肌を触ったりしたことはあるが、4000年前よりも更にもちもちぷにぷにすべすべになった気がする。
俺は満足してミコの頬を触るのを辞める。
するとミコの頬にはべったりと俺の血がついていた。
「あ、しまった。怪我治すの忘れてた」
俺は神魔で斬り落とした左肩から先を「リジェネレーション」を発動した。
斬り下ろした腕が再生された。
ただミコによって与えられた回復阻害の傷は治らなかった。
「無視」
俺は「無視」を発動した。
回復阻害の効果を無視したのだ。
俺は「ハイヒール」を発動する。
俺の傷は治った。
「う、うん、うみゃ」
すると、横で大規模な魔法を発動したことを感知したのかミコが目を覚ます。
「おはよう」
「うみゅ、おはよう。シン、あれ?私何でシンの部屋にいるの?」
ミコはどうやら起きたばかりで頭が混乱しているようだ。
俺はミコに何があったのかを説明した。
「そうだ、私。突然吸血衝動が来て、血を飲むことしか考えられなくなって」
俺はほぼ確信していたがやはりミコの暴走は吸血衝動だったようだな。
「吸血衝動。今までも我慢してたのか?してたならいつから我慢してたんだ?」
俺はミコに吸血衝動について聞く。
「いや、今日が初めて。なんか急に血を飲むことしか考えられなくなったの」
ミコは俺を見ながらそう言った。
「嘘をつくな」
「え?」
ミコは今、嘘をついた。
ミコは4000年前から嘘をついた後にする癖がある。
ミコは嘘をついたあとに必ずと言っていいほど嘘をついた相手の胸を見るのだ。
普段ミコは俺と話す時、俺の目を見て話す。
ただ、ミコは嘘をついたあとはしばらくは相手の胸を見るのだ。
さっきミコは俺の方を見てはいたが、俺と目が合わず少し下の方を見ていた。
だから俺はミコのさっきの発言を嘘だと判断したのだ。
と言ってもそれを知っているのは俺とミコと仲が良かった「勇者」くらいだし、嘘をついた後に必ずしもするわけではない、ただミコが会話の途中で相手の胸を見ているときは大抵嘘をついた後だというだけだ。
ただ他にも似たような動作はあったりする。
「はぁ、シンに嘘をついても無駄ね。正直に話すわ」
「そうしてくれ」
そうしてミコは話してくれた。
「吸血衝動自体は災禍の魔女としての力を取り戻してから割とすぐ出てきてたの。私って実は吸血衝動の周期が短いのよね」
「そういえば、ミコは昔結構頻繁に俺の血を飲んでいたもんな。具体的にどれくらいなんだ?」
「一週間に一回」
「確か俺の記憶には高位の吸血鬼であればあるほど、吸血衝動の周期は長かったと記憶しているんだが?」
「一般的にはそうね。多分一週間に一回って一般的な吸血鬼の周期と同じくらいね」
「ミコは一般的ではないだろ」
「勿論。でもちゃんと理由があるのよ」
「理由?」
「そ、理由。一般的な吸血鬼の吸血衝動が平均で一週間に一度くらいなのは一般的な吸血鬼は最低でもそれくらいの頻度で吸血しないと死んじゃうからね。でも高位の吸血鬼はそこまで血を吸わなくても生きていくことは出来るから周期が長いのよ」
そりゃ吸血鬼からすれば吸血は食事なのだから、一週間も食事をしなければ死ぬこともあり得るだろう。
ただ高位の吸血鬼だと自然魔力をある程度自分の中に取り込めるものが多いため栄養を取る必要がなく、吸血衝動の周期も長いのだろう。
「それならミコは何で吸血衝動の周期が短いんだ?ミコは血を飲まなくても生活できるだろ」
「私の場合は強すぎるからね」
「強すぎるから?」
「そ、吸血鬼って実は血をたくさん飲めば飲むほど強くなるのよ」
「そうなのか?それは初耳だな」
「そしてその血の質が良ければその効率がとってもいいのよ」
「吸血鬼にとって血を飲むことが栄養補給だけではないことは理解したが、それはミコの吸血衝動の周期が短い理由にはならないと思うが」
「いえ、ちゃんと繋がっているの。私の魂ってとっても強大な力を宿してるじゃない?」
「そうだな」
ミコは魔法神の加護やらなんやらと強力な力を魂に宿している。
「それに耐えられる体になる必要があるの」
「なるほど、ある程度理解は出来た」
つまり、ミコの魂が強すぎるのだ。
ミコのレベルは高いので、ミコの体もかなり優秀かつ頑丈だ。
だが、そんな体でも恐らくミコの魂に宿す力にはある程度しか耐えられないのだ。
だからミコの体は魂の強大な力に耐えられるように体を強くするために吸血衝動の周期が短くなっているのだろう。
「それで、吸血衝動の様子はどうだ?」
俺はミコに聞く。
「今は大丈夫。結構収まっているわ。ただ、もう結構まずいかも」
「何故ミコは吸血を我慢するんだ?」
俺はミコにずっと思っていた疑問を訪ねる。
何故ミコは吸血衝動に耐えているんだ?
耐える必要なんてどこにもないだろうに。
「我慢するのかって、今回みたいに誰かに迷惑をかけないように」
「俺が言いたいことはそういうことじゃない。何故ミコは吸血衝動に従い、血を飲まないのだ?」
「飲まないじゃなくて飲めないのよ。飲ましてくれる相手なんていないし、一般人の血なんて不味くて飲めたものじゃないわ」
「そう言えば吸血鬼は血の味があるだったな。俺からすれば血の何が違うのか分からないが」
「そうなの。一度極上の味を知った私の舌はそこらへんにいる一般人の血なんて不味くて飲めないわ」
「はぁ、もっとわかりやすく言おう。なんでお前は俺の血を飲まないんだ?」
俺は珍しく俺の言いたいことに関して察しが悪いミコがじれったくて答えを言う。
「だって、シンの迷惑になりたくなかったんだもの」
「何を今更、4000年前は飲んでいたじゃないか」
4000年前、ミコはよく俺の血を飲んでいた。
俺もその吸血が気持ちが良かった記憶がある。
確か4000年前も今日みたいな感じで突如としてミコが吸血衝動になり、俺を襲って無理矢理俺の血を吸ったのだ。
「4000年前も最初は無理矢理だったじゃない。あの頃の私は貴方に甘えすぎていたと思うわ」
「構わないさ。それにあの頃の俺達の関係は義兄妹だ。妹が兄に甘えて何が悪い?」
「、、、、、」
俺の問いにミコは黙りこくってしまった。
「はぁ」
俺はミコに抱き着く。
「ちょ、シン。何を?」
ミコはどうやら混乱しているようだ。
「俺だって甘えられたいな」
俺はつい本音をこぼしてしまった。
「え?」
「俺だってミコに甘えられたい」
俺は再度言い直した。
「そ、それって」
ミコの発言に俺は首筋をさらけ出すように服をずらす。
4000年前から吸血をするときは大体首筋からなのだ。
まぁたまに腕やら足から吸血することもあるが、基本的には首筋から吸血されることばかりだ。
ミコって割とテンプレート通りに動くの好きなんだな。
「吸血だけよ。私は吸血にはかなりこだわりがあるの」
俺たちは同じでベッドに座り話した。
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