第129話 会議
今日も短めです。
新作はもう少しお待ちください。
王子を気絶させた俺は「エリアテレポート」で会議室に戻ってきていた。
「ただいま」
「「「「「お帰りなさい」」」」」
俺が挨拶をすると、ミコ達が返してくれた。
他の人間はレイルとミリー以外は驚愕と畏怖と恐怖に溢れていた。
こういう視線には前世、前々世共によくさらされたので慣れている。
「レイルさん。とりあえずそこの王子が率いていた軍は壊滅させました。ただ、王子と一緒にいた兵士の数は100000でした。この王子の言葉が本当ならば別に軍がいると思われます」
「そうか。いや、よくやってくれた。敵兵100000をたった1人で壊滅させてくれるとは、さすがだね」
「別にあの程度なら問題ありません。あの程度なら俺だけじゃなく、ミコでも、セーラでも、ゼミルでも、ユアでも、ユイでもできます」
「ははは、本当に君たちを敵にまわしてはいけないと再確認したよ」
「そうね。そしてうちの娘はドンドン化け物じみた強さになっているわね」
レイルとミリーは笑っているが、家臣たちはものすごい速度で首を縦に振っていた。
よほど俺が怖いのだろう。
「何にせよよくやってくれた。シン君にはまた褒賞をしないとね」
「では楽しみにしておきますよ」
「そうしてくれ。今日はもう帰っていいよ。もしまたジテイ国が攻めてきたら頼ってもいいかい?」
「構いませんよ。それでは」
俺はミコに目配せをする。
ミコは俺の望みを察して「エリアテレポート」で俺、ミコ、セーラ、ゼミル、ユア、ユイが俺たちの寮の部屋に転移した。
レイル視点
シン君達が会議室から転移していった。
僕達は全員、肩の力を抜く。
今の皆は敵軍よりもシン君達の方が怖いだろう。
いっそのこと幻だと思えればどれだけよかっただろうか。
だが、先程のシン君の力は現実のものだ。
なにせ、そこにシン君がとらえたジテイ国の王子が黒い鎖に縛られた状態で気絶しているのだ。
ジテイ国とは別に仲が良いわけでもなかったが敵国というわけでもなかった。
なのでそれなりに交流があった。
数年に一度、パーティーに呼ばれるくらいには交流があった。
そこで僕はジテイ国の王子を見たことがあった。
なのでそこで気絶しているのがジテイ国の王子だと嫌でもわかってしまう。
「陛下。あの少年と少女は殺すべきです」
家臣の一人が僕にシン君とミコちゃんの殺害を提案する。
残酷な話だが、シン君とミコちゃんが普通に優秀な少年少女ならば国としてもその判断も考慮した。
だが、
「却下だね」
僕は即座に却下した。
「理由をお聞きしても?」
「却下と言ったが、言い方を変えよう。不可能だ。君だって見ただろう。あの圧倒的な力を」
「しかし、寝ているところを暗殺者等に奇襲させれば」
「不可能だね。シン君が暗殺者程度に遅れをとるとは思えないし、シン君達はレベルが高すぎて攻撃が通らない。勿論毒や呪いも効かない。殺すことは不可能だと思う」
「ならどうするのだ」
会議の内容はジテイ国の宣戦布告からシン達の扱いに変わっていったのだった。
「いっそのこと、ソードロード閣下をセーラ殿下、マジクロード閣下とセイル殿下と婚約させれば、ソードロード閣下やマジクロード閣下が我が国に不利益をもたらす可能性はなくるのではないでしょうか?ソードロード閣下とマジクロード閣下も王族の末席に加わることが出来るのならば文句を言わないでしょう」
「却下だね」
僕はすぐに却下する。
「陛下、セーラ殿下がどこの馬の骨とも知れぬ平民の男に婚約させるのが嫌なのは分かりますが、これも国のためなのです」
「いや、僕はセーラとシン君の婚約には賛成だよ。なにせ、セーラ自身がシン君に惚れているからね」
「なんと。ではなぜ反対なのですか?国の安寧とセーラ殿下の願いの両方を叶えられる良い案であると思うのですが?」
「シン君とセーラの婚約自体は賛成だけど、セイルとミコちゃんの婚約は提案した時点で国が滅ぶ」
「それはどういうことなのですか?セイル殿下の性格はあまり良いとは言えないものですが、顔は良いですし時期国王でもあります。平民の女が時期王妃になれるのですから断る理由なんてないでしょう」
家臣たちはセイルの方が次期国王だと思っているようだ。
まぁ普通はそうだろう。
セーラはシン君とミコちゃんによってありえなく強くなったけど、王座には興味ないのだから、普通は次期国王は残りのセイルで確定だと思うのも無理はないだろう。
「まず、ミコちゃんは王妃に興味がない。そしてセイルはミコちゃんに嫌われている。そしてミコちゃんはシン君のことが好きだからだ」
「何故マジクロード閣下は王妃に興味がないのですか?普通は誰もが憧れると思うのですが」
「ミコちゃんからして王族や貴族というのは大した存在じゃなんだよ」
「しかし、平民は貴族なしでは生きていけない。マジクロード閣下の育った領は一体どこなのです?もしやそこの貴族が原因で嫌われているとか?」
「第一にミコちゃんの生まれは我が国内であるけど誰も管理していない土地だ」
「誰も管理していない土地?」
「魔境だよ」
「そんな馬鹿な。あそこは人が住めるような環境ではありません」
「そんな環境で生活していたからこそミコちゃんとシン君は強いんだろうね。だからミコちゃんは貴族や王族に頼ったことはない。シン君やミコちゃんが僕のお願いを聞いてくれるのはあくまでセーラの護衛騎士としての立場があるからだからね。シン君とミコちゃんはセーラを弟子として溺愛してるからね」
「なるほど。ならマジクロード閣下に王妃となるメリットを説明すれば」
「無意味だね。ねぇ、この世で最も強い力とは何だい?」
「やはり権力でしょう」
「財力ではないでしょうか」
家臣たちが思い思いに答える。
「答えは暴力だ。ミコちゃんからすれば貴族や王族なんていつでも殺せるような雑魚に過ぎないんだよ。シン君とミコちゃんからすれば王族であろうと、貴族であろうと、平民であろうと関係ないんだよ。不都合なら殺すだけ」
「ソードロード閣下とマジクロード閣下はいくら強くてもそのような残酷なことはできないでしょう」
「君はさっきの戦争に様子を見ていなかったのかい?」
「あ」
「なるほど、マジクロード閣下とセイル殿下の婚約が不可能なことは理解できました。しかし国が滅ぶというのは言い過ぎではないでしょうか?マジクロード閣下の様子を見る限り婚約を持ち替えただけで国を滅ぼすとは思えません」
「あぁ、滅ぼすのはミコちゃんじゃないよ」
「それでは一体誰なのですか?」
「シン君だよ。シン君はミコちゃんのことが好きだからね」
「なるほど。理解はできました。ならソードロード閣下とセーラ殿下の婚約もすぐには出来ませんね。マジクロード閣下が国を滅ぼす可能性がありますから」
「そうなんだよねぇ」
「でも、今のところシン君達が敵対する可能性は低いから急いで何かをする必要はないわ。ただ、シン君達の怒りを買わないように注意しないといけないけど」
ミリーが家臣たちに意見を言う。
「例えばどんなものでしょう」
「とりあえず、シン君とミコちゃんは両思いだからその仲を引き裂くようなことは駄目ね。それ以外ならある程度は大丈夫だと思うわ。ただ、シン君達に命令はしないほうがいいわね。公爵であろうともシン君達からすれば殺してはいけない理由にならないし私たちがシン君達を捕まえたり処刑したりも不可能だから」
「とりあえず、ソードロード閣下とマジクロード閣下の対応に関する決まりをまとめましょう。誰が対応しても怒りを買わないように」
「それがいいね」
ということでこの日は宣戦布告について会議だったはずが、シン君とミコちゃんと話す時に気を付けることをまとめて終わった。
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