第118話 建国記念パーティー
今日も短めです。
学園対抗戦が終わった数日後、今日は以前レイルから聞いていた建国記念パーティーの日だ。
今日は普通に休みの日でもあるので俺たちは朝から「神界」に集まってゆっくりしていた。
「俺、パーティー出たことないな」
「「「「「!?」」」」」
俺はふと独り言をつぶやいた。
俺は前世を含めてパーティーに出たことがない。
一般人ならばパーティーに出たことがないというのは基本的にないだろう。
勿論、今回のようにたくさんの人が来るパーティーに行ったことがないというのはおかしなことではないが、普通は誕生日やクリスマスに家族や友達と1回はパーティーをしたことあるのが普通だろう。
そしてこのメンバーは勿論あるだろう。
このメンバーで俺とミコ以外は全員普通の元貴族令嬢叉は王女なので勿論パーティーに出席した経験もある。
ミコも幽閉されていたにしても1回くらいはパーティーに出たこともあっただろう。
そう考えると、この中でパーティーの経験がないのは俺だけということになるな。
「なぁ、セーラ。パーティーの時ってどんな服装だったらいいんだ?」
俺はふと思った疑問をセーラに聞く。
「そうね。シンは今一貴族家の当主だし派手な服が一般的ね。まぁ武闘派の貴族だったらパーティーでの不足の事態を想定して戦える格好で来る人も多いけど」
「あ、私男物のパーティー用の服持ってるわよ」
「何故持ってるの?」
「昔の知り合いの服を持ってるだけよ」
昔の知り合いって間違いなくミコがあの人って呼んでいる人の事だろう。
「まぁ貸してもらえるのなら貸してもらおう。いいか?」
「勿論」
そう言ってミコは「ストレージ」から黒い服を取り出した。
その服は黒いながらとても細かい模様があってあきらかに良いものだと分かる。
俺はミコからその服を受け取る。
材質もかなり良いものだ。
触り心地も良い。
そしてこの服、とても優秀だ。
俺は「ドレスチェンジ」という服を着替える無属性中級魔法を発動する。
これはホテルで着替えが面倒だと感じたときに創り出した魔法だ。
始めての使用だったが便利な魔法だな。
俺の服はミコから受け取った黒い服となっていた。
ちなみに元々来ていた服は「無限収納」の中に自動で入れられるようになっている。
「「「「「「おぉー」」」」」
みんなが俺の方を見る。
「どうだ?」
「とっても似合ってるわよ」
「さすがね」
「カッコいい」
「寧ろそっちの方が正しいという感じすらするわね」
「違和感がないならいい」
「それなら私も着替えましょうか」
そう言ってミコは「ドレスチェンジ」で着替える。
それは俺と同じようなデザインの黒いドレスだ。
ミコにとても似合っている。
俺たちはあまりの綺麗さに絶句してしまった。
「どう?」
ミコが俺たちに感想を求める。
「とてもきれいだ」
「めっちゃ似合ってるわよ」
「ミコの良さが最大限引き出されている」
「なんでシンもミコもこんなに違和感ないの?」
「私たちが来てもここまで似合わない」
「ふふ。ありがとう」
ミコは褒められて嬉しそうだ。
あぁ、懐かしい姿だ。
ミコは基本的にずっとこの服ばかりだったからな。
、、、、俺は何を考えているんだ?
俺がミコのこの服を見たのは初めてのはずだ。
俺には「完全記憶」があるから間違いない。
だが俺はミコのこの姿に既視感を覚える。
どういうことだ?
「うっ」
俺がそのことについて考えると頭痛がする。
「シン、どうしたの?」
「いや、何でもない。少し頭痛がしただけだ」
ミコにはそう誤魔化したがこの頭痛、かなり痛い。
これは前に総合個人の終了後に感じた頭痛と同じものだ。
「すまない、少し用事を思い出した」
そうして俺はセーラ達から離れた場所に「テレポート」で転移した。
すると転移した瞬間、以前同様何かの情景が流れ込んでくる。
「ーーーだ。ーーーーはーーーーてー」
「ーーーた」
「ーーーだ」
以前も見た男が何かの会話をして以前見た女の頭を撫でている。
そうして少し経つと頭痛が収まった。
「シン。大丈夫?」
聞き覚えのありすぎる声がした。
俺は声がした方に振り向いた。
「なんでここにいるんだ?」
「しんどそうだったから様子を見に来たのよ」
そう言いながらミコは「神界」の機能で家を創り出して俺を寝室のベッドに乗せてくれた。
「またまえと同じ頭痛がしてな」
「そう。じゃあまた何か見たの?」
「あぁ。今度は男が女の頭を撫でていた」
「そう。奇妙なものね。まぁ収まったようで良かったわ。せっかくだし少しここで二人の時間を過ごしましょ」
「それもいいかもな」
そうして俺とミコは1時間程二人でゆっくり過ごしたのだった。
「そろそろ戻るか」
「そうね」
そうして俺たちはセーラ達の元に「テレポート」で戻ったのだった。
「あら、シン、ミコ。お帰りなさい」
「ただいま。用事は終わったぞ」
「何の用事だったの?ミコもその手助けをするってどこかにいちゃったけど」
「実は元々出来たらいいなと考えていた魔法があってな。それを創ってたんだ」
「なるほどね」
「どんな魔法なの?」
「実際に使って見せた方が速いな」
「そうね」
俺たちは事前に考えておいた嘘をつく。
あの頭痛に関しては謎が多いからな。
あまりセーラ達に心配をかけたくないしな。
そうして俺たちはセーラ達にはまだ見せていない少し前に創っておいた魔法を使う。
「「トランスフォーム」」
俺たちがその魔法を使った瞬間、俺の見た目はミコに。
ミコの見た目は俺に変わる。
俺とミコが使った魔法は無属性最上級魔法「トランスフォーム」対象の姿と声を変える魔法だ。
「ええと、対象との距離を逆転させる魔法かしら?」
「いいや違うぞ」
「この魔法は、対象の見た目と声を思った通りにする魔法よ」
ミコの声で俺の言葉が、俺の声でミコの言葉が聞こえる。
「じゃあ、こっちがシンで、こっちがミコってこと?」
「そういうことだな」「そういうことね」
「凄い魔法だけど、どうしてそんな魔法を創ったの?」
「シンプルに色々便利だし、戦いでも使えるからな」
「戦いでも?」
「例えば剣で戦っていて急に相手の体格が大きくなったら戦いにくいでしょ」
「なるほど」
「まぁ実際にそう使うことはないだろうがな。相手より自分の方が戦いにくくなる」
「それもそうか」
「にしても声と口調と見た目があってないから違和感が凄いわね」
「ならこれでどうかしら?」
俺はミコの口調を真似る。
「こんな感じか?」
ミコも俺の口調を真似た。
「あ、すごい。そうなったら見分けがつかないわ」
俺たちはそんな感じで少し口調を変えて雑談したあと魔法を解除した。
「ふぅ、やっぱりこっちの方が慣れてるな」
「そうね。私もやっぱり自分の元の姿が一番落ち着くわね」
「あと何によってかは言わないが、普段よりも肩がこったな」
「あら?何によってかしら?」
「からかうな」
「ふふ、多分その原因で肩がこるのはここにいるメンバー全員じゃないかしら?」
俺たちのメンバーの女子は全員何がとは言わないが大きいからな。
「さてと、そろそろ「神界」を出るか」
「そうね」
「帰ったらパーティーの用意しないと」
「あ、私たちもしないとだね。ユア」
「面倒くさい」
「ドレスチェンジ」を使えばすぐだぞ」
「はっ、確かに」
「便利な魔法ね。そういえばユイ。ドレスはある?」
「あっ、あの人たちから持たされてない」
「あいつら、いつか殺す。とりあえず私のおさがりでよければそれを貸すけど」
「いいの?」
ユイは目を輝かせる。
「勿論よ」
「やったー」
ユイのドレスも大丈夫そうだな。
「それじゃあ戻るぞ」
そう言って俺たちは魔力の供給をなくし、「神界」を解除するのだった。
それから数時間後、俺たちは王城のセーラの部屋に集まっていた。
勿論全員パーティーに出れる格好だ。
「シンとミコは「神界」の中でも見たけどとっても似合っているわ」
「ありがとう。セーラも似合ってるぞ」
「ありがとう。お父様がはりきちゃって」
「容易に想像できるわね」
そこからゼミル、ユア、ユイも「テレポート」で集まってきた。
全員とても似合っていて綺麗だ。
まぁここにいる女性は全員美少女なので大抵の服はに合わないことがないんだが。
それでもとても綺麗だ。
「そろそろ時間だし移動しましょうか」
そしてセーラがパーティーの時間を知らせる。
俺たちはパーティーの会場となるホール移動する。
建国記念パーティーが始まる。
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