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85…リリーは挑み、

「リリ、持ってきたぞ」


 ユウがなかなか疲れた顔つきで聖剣と魔剣を持ってオウカ公爵邸に現れた。


 きっとユウが聖剣にあれこれ言われたのだろうなと、リリーはふふっと笑い、聖剣と魔剣を大切そうに受け取った。


「兄上に取り次いでもらうのも大変だったし、会ってくれないから上手く説明できないし」


 ユウに感謝と謝罪を伝えながら、リリーは苦笑いするしかなかった。


 リリーとユウは、公爵邸の裏にある練習場といっても広すぎる広大な草原に向かった。

 オウカ公爵は仕事、公爵夫人はお茶会へ出席、両親共に不在で、悪巧みをするなら今日がベストだ。



『リリ、どうしたの? 何でこいつと一緒に連れてこられたのかしら? あ、アレに渡さないでよ! リリが運びなさい』


 聖剣が忙しそうにリリーに話掛けている。

 ユウは溜息をついて、リリーの腰に手を回して歩いた。


『……』


 リリーは魔剣のだんまりに肩を竦めながら、話掛けてみた。


「私、以前アキラと会った時、魔剣の声を聞いた気がするの。バザーの日ね」


『は? マジか……どっちも聞こえるとかあんのか?』


 魔剣は驚き過ぎたのか、黒い剣が少し震えた。


「やっぱり、聞こえるわ。どっちも聞こえるみたい」


 リリーは自分に確かめるように頷いた。ユウを見てみたが、首を横に振るので魔剣の声は聞こえないらしい。



『お前は……』


『カノの物も出していたし、もしかしたらと思うでしょ? 私もなの。奇遇ねぇ』


『カノの?!』



 2つの剣の会話を少し聞きながら歩き、リリーは愛おしそうに笑った。


「仲が良いのね」


『『はぁぁ?!』』


 ほら、シンクロしてる。


『リリ、ちょっと待ちなさい。このやり取りを見てどこが仲良くみえるのかしら?!』



"もし、あなたが私と同じオウカの人間なら、少し変わった魔力を持っているかしら?きっとそれは神力。それを返せば戻れるかもしれない。私は出来なくなってしまっていたけど。"



 聖剣に気圧されながらも、リリーは本題に入ることにした。目的地に到着したのだ。


「ええっと……カノ様の本に載っていたの。2人を戻せるかもしれないわ。私がやってみても良いかしら?」


『ぶはっ。カノ様……ふふっ』


 聖剣に何かウケたらしいし、魔剣も何となくずっと笑いを堪えているような雰囲気だ。



『……お前が危険にならねーんなら』


『はぁ?! あんた態度が変わり過ぎじゃない?! 本当に嫌な奴ね。リリ、無理はしたらダメよ?』


 聖剣と魔剣に心配されて、リリーは何だか嬉しそうにしている。



「きっとね、大丈夫な気がするの。カノ様の本を得てから、正確には魔力を枯渇するまで出した後、祭壇部分から何かが私に入ってきたの」


 手のひらをグーパーしながら、リリーは説明した。


「魔力の質が変わった気がするの。魔力が磨かれて、研ぎ澄まされた感じ」


 リリーは聖剣と魔剣と今までずっと過ごしてきたかのように話している。

 ユウはそれを不思議そうに、ずっと黙ってリリー達の様子を見ている。


『まぁ、カノは魔力制御に長けていたから……プレゼントかしらね』




「では、さっそく始めるわ」


 ユウに頷いてから、リリーは距離をとった。


「きっと今回は吹き飛ばずに済むわ。ふふっ」



 聖剣と魔剣を、リリーは其々左右の手に持って器用に大きく振り回し、下向きに持ち直して、ガッと地面に突き刺した。



『え、同時なの??』


『おいマジか……』


 集中しているリリーには聞こえていない。


 きっと本には同時にという文言は無かったはずだが、リリーは聖剣と魔剣を二個一でしか捉えられないので、こうなるらしい。




 爆風ではなく、リリー達の周りを光輝く風が渦を巻いている。

 その光景がとても美しくて、ユウは驚きながら見入ってしまっている。


 それでもやはり辺は砂嵐の様になり、眩い光で目を開けていられない。


 辺り一面、何も見えなくなった。




 やっと風と光が静まり、周りの人影が確認できるようになってきた。




"できるなら、私がやりたかった。もう1度抱きしめたかった。"




 会いたい




 リリーは、会ったことのないカノの声が、聞こえた気がした。



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