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83…本②記憶があるという事

「私、きっと、前世の記憶があるのよ」


 今はカノの朝食時間で、それを魔神と聖神が横で見ながら寛いでいるところだ。

 カノの突然の話に、聖神と魔神は開いた口が塞がらない。

 魔神は『あー』とか言いながら目を逸らそうとしている。


「ちょっと?! 2人共何言ってるんだって顔してるわよ。ちょっとくらい聞いてくれても良いでしょ?! 神がそういう不思議な話を信じないでどうするの!」


 カノは聖神の言葉遣いを真似ているらしく、とりあえず13才の女の子らしく育っていた。

 スープを一口飲んで、カノはまた話始めた。


「神とか存在が不思議なくせに、私の話は信じねーとかどーなの?!」


『カノ、また魔神が出てるわよぉ』


 聖神がカノの頭をよしよしと撫でながら頬にキスしている。


 時々言葉に失敗しているカノだが、今はどうやら前世の記憶を持っていると主張しているところだ。



「夢で見るんだけど、夢でないの。何人分も。名前もあってリアルで、起きたらどれが私か分からなくなるの。凄く怖いの」


 カノは魔神の膝の上に乗って、魔神の腕にしがみついた。


「魔神と聖神を見てやっと、私はカノなんだって実感できるの」



 聖神と魔神は思い当たる節があった。物心がついた頃から、カノは起きてすぐ必ず自分たちを探すのだ。


 どちらも不在で見つからなかったとき、カノが泣きじゃくって魔力が暴走して大変なことになった時もあった。


 それに、カノの持っている異様な魔力の核。これはきっと今に始まった事ではないのかもしれない。

 カノの様々な事に関して、聖神も魔神も腑に落ちた。


『お前はお前だ。堂々と生きろ。それに他の人生背負い込む程余裕はねーだろ』


 記憶持ちには聖神も魔神も思うところはあるのだが、カノを余計に不安にさせたくない。


 何故カノが……


 少しの動揺も悟られないように、聖神はカノにふわりと笑った。


『そんなに怖いなら、一緒に寝てあげるわよ? 起きたらすぐそこに居るから安心でしょ?』


「本当?! あ、有難いけど……でも私寝相に自信が無いけど、大丈夫??」


 時々ベッドが壊れてるなんて言えない……とカノはただ気不味そうにしている。


『大丈夫よぉ』


 そんな事は露知らずの聖神は気楽に返事をしている。


「じゃあ、川の字で寝る??」


 カノはキラキラした目で聖神と魔神を交互に見たが『絶対に嫌だ』と2人して言うので、1日交代で一緒に寝ることになった。


「あれ? 神って寝るの?」


『んー、それなりに? それこそ1日おきで良いくらいだから、丁度良いわね』





『いっってぇわぁ!!』


 珍しく聖神の言葉が乱れている。

 聖神は今の今まで気持ちよく寝ていたのに、カノに頭突きをくらって、飛び起きたところだ。


『こんなに寝相悪いとか……カノ、お前起きてんじゃないの?!』


 カノは気持ち良さそうに爆睡中のようだ。


『何なの、この子……魔力込めて頭突きしてんじゃないわよ』


 聖神はカノを後から腕の中に納め、動きを封じて寝ることにした。

 添い寝と言う名の抱き枕作戦だ。


 カノは聖神に抱きしめられて、腕にしがみついて幸せそうに眠っている。


『くそっ、可愛いわね……』




"私達はそれなりに仲良く暮らしていたの。あの時までは。"





『やあ、久しぶり』


 市井での買出しも終わって帰路を歩いていると、カノは挨拶をされたようだったので振り返った。


 カノは目を大きく開いてしまった。


 会ったことのないこの男を、カノは確かに知っている。


 有り得ないわ……


 カノの記憶の中にいた男と身形が全く同じなのだ。



 恐怖で動けなくなっているカノを見て、その男は嬉しそうにニタリと笑った。



 逃げなきゃ。



 2人のもとへ戻らなきゃ。



 カノはありったけの魔力で防御や防魔を自分に施す。

 誰かに気付かれても良い、無事に帰って2人に会いたいとカノは心から思った。


 後退りして、走ろうとした瞬間……



ガッ



 速過ぎるっ!!


「は、離して!!」


 カノは男に腕を掴まれてしまった。


『今回は僕の所へ来る気になったかい?』


 男はカノを掴んでいる手に段々と力を入れてくる。


『まぁ来たとしても最期は僕が手を下すんだけど』


「痛っ……」



 今回はここで、25才で終わってしまうのかとカノが諦めかけた時、聖神と魔神がカノを奪い返した。 




"あの時助けてくれて本当に嬉しかった。でも、その所為で、2人は姿を保てなくなってしまった。私の所為なの。"



"何故あの時、どちら様ですかと言えなかったのか。後悔しかない。"





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