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9…新学年、開始

「リリー様! お久しぶりです」


 新学期初日、学園に着いて馬車から降りると、友人たちが待っていてくれた。


 学園には制服が有る。

 平民は購入する余裕など無いので、新年度前に学園から支給される。

 上着は貴族と平民クラスは同じで紺のジャケットを羽織る。男性はネクタイを付けて、同色のズボン、となっている。


 女性はワンピースで、平民クラスは膝が隠れるくらいの丈が支給されている。

 貴族クラスは、淑女は足を淫らに出せないことが理由でロング丈だ。

 スカートを自分の好みにすることが出来るので、リリーのはマーメイド型にした。


「リリー様のスカート素敵ですわ!!」

「リリー様は今年から生徒会にご入会されるのですよね?応援しています!」


 そう言われて、リリーは照れくさそうに笑顔になった。


「ありがとう、少しでも皇太子殿下を補佐出来るように勤めるわ」



「ああ、期待してる……リリ、おはよう」


 リリーの後からユウが声を掛け、腰に手を回して横に来た。


「ユウ! あっ、おはようごさいます、皇太子殿下」


 腰を持たれているので、両手を胸に挨拶をした。周りもリリーに続く。リリーの余所余所しさにユウはムッとして、もっと顔を近付けた。


「固いのは無しで良い」


「わ、わかったわ」


 内密とはいえ、婚約したことが照れくさくて、近付かれるとリリーはドキドキしてしまう。

 そんなリリーに気付くことなく、ユウは他の者たちの方へ向いた。


「皆も、学園では皆平等だ。変わらず頼む」


 周りの学生達は笑顔で応えた。アキラが社交的過ぎてユウは少し距離があるように見えるが、感じが良いのには変わりない。


 第一皇子殿下と同様、皇太子殿下もリリーとの距離が近いと噂にはなっていたが、やはり本当だったのだと、女子たちがキラキラした眼差しで見ている。

 ショックを隠せない男子たちも少なくない。


 リリーは5回生、ユウは4回生で、今年から2人とも生徒会に入会する。

 生徒会は国政の練習の場なので、皇族が代々会長を務めている。アキラが卒業して皇族が居なくなったため、次代のユウが会長に就任したのだ。

 他のメンバーは成績と教師の推薦で入ることが出来る。リリーの他にも5名おり、総勢7名で運営する。



 今まで、選択科目が同じ時だけ一緒の空間にいられたが、リリーは友人に囲まれているし、自分は護衛がいて全然近寄ることができなかった。

 今年から生徒会室に頻繁にいることになるから、ユウは嬉しくて仕方がないし、ホッとしている。


 リリーを囲んでいるのは女のみならず、男もいるから油断ならない。

 去年までは、どうやっていたかは知られていないが、アキラが蹴散らしていたらしい。とりあえずしっかりやれと、アキラに何度も言われたということは、かなりの数居るということだ。

 朝一に声をかけたのもどこぞやの子爵の縁の男だった。


 そんなことを考えているユウを、悩んでいるように見えたのかリリーが呼ぶ。


「どうしたの? 大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ」


 そう言って、皇城に居る時の様にユウはリリーの手にキスをした。


 周りは騒然とした。

 あの、エスコートですらしたがらない皇太子殿下が、オウカ公爵令嬢の手にキスをした、と。

 このことがどれだけ生徒達を激震させたか、ユウとリリーにはわからなかった。


 以前から、第一皇子だけでなく皇太子にとってもリリーは特別な存在なのではないかと巷ではまことしやかに言われており、そういった類の小説や雑誌は大人気だ。


 ということもあって、このユウのリリーへの行動が噂で広まるのには時間がかからなかった。

 あっという間に、本人達の知らぬ所で広がっていく。


 どの世界でも、ゴシップネタが大好物な人は多いのだ。


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