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閑話休題11〜ウィステリア候爵家のとある日

「あ、タイムも今起きたのか? おはよう」


 アキラが廊下を歩いて朝食に向かっていたら、タイムも部屋から出てきた。

 アキラがウィステリア候爵邸に滞在し始めて数ヶ月が経った、ある日の朝。


「おはようございます……何か良い事ありました?」


「へ? と、特に何も」


 アキラの声が裏返った。

 タイムは「へー」とだけ言って、アキラの隣を歩いている。全く納得はしていなさそうだ。




 朝食をとりながら、2人で雑談するのも朝のお決まりになってきた。


「アキラさん、昨夜何処かに出掛けてたんすか?」


「へ?! いや?! そんなことは……」


 こんな分かりやすい人だったのか……

 タイムは呆れながら、向かい側に座っているアキラを覗き込むようにした。


「俺が感知能力高いの知ってますよね? 屋敷から居なくなったのわかってます。きっと父上も」


「あぁ、いやいや……」


 アキラはもう目を逸らすしかない。


「はぁ、またリリーのとこすか?! 俺は行かせてもらえなくて自分は行くとか、本当何なんすか。斬りますよ」


 朝食に使っているナイフをアキラに向けて、悪態をつきながらタイムは食事をしている。

 皇城でなくてもアウトな作法だ。タイムも分かってやっているけれど。


「ナイフは人に向けない。マナー知ってるか? そうは言っても、ほぼ互角だからな」


 アキラも同様にタイムにナイフを向けて喋った。


 少し砕けたマナーや喋り方が心地良くて、アキラはウィステリア候爵邸で過ごすことが楽しくてしょうがない。

 アキラはここ最近気が緩みっぱなしだ。


「俺は成長期なんすよ。これから伸びるんで。そしたら確実に俺が越すでしょ。アキラさん分かりやすいし押しに弱いし、余裕す」


「お前ね……」


 弟のユウは後から付いて来るタイプで可愛かったけれど、ここまで噛みついてくる弟も可愛いもんだなと、最近アキラはタイムを構いたくて仕方がない。

 可愛い弟に全く会えていないから尚更だ。


 タイムも上に兄弟がいないので、兄のようなアキラに大変懐いている。


「でもリリーは寝てたんすよね? 変な事してませんよね?!」


「するわけないだろ!! 寧ろ逆だ! 俺は、生きた心地がしなかった」


 件のリリーの寝相についてアキラが話をすると、案の定タイムは「へたれ」とか言いながら爆笑し始めた。



「よし、じゃー本日もやるか」


 朝食が終わった2人は口を拭きながら同時に席を立った……これも皇城ではアウトだ。

 たとえ無事戻れたとしても、皇城に住む自信が無くなってきている自分に、最近アキラは気付いた。


「うっす! 父上も呼んできますね。先に練習場に行ってて良いすよ」


「ああ、頼んだ」


 魔剣の正式な所有者であると自覚した頃から、アキラが望み続けていたことがある。


 魔剣のことも、アキラの戦い方の癖も知っていて、そして自分より強い人が周りに居れば良いのに、と。


 暴走してしまった時に、自分を確実に止めてくれる人が必要だと。



 ウィステリア候爵父子はうってつけだ。



 パクツはアキラよりも確実に強いし、タイムはほぼ互角だ。

 本人が言うように、きっと直ぐにアキラを抜いてくれるだろう。


 その上タイムはもう少しで学園に入学する。

 過度にリリーに近付かない事をオウカ公爵から条件にされていたが、タイムはオウカ公爵邸に滞在予定だ。

 それでもアキラとしては不本意だが、そうなれば、自分からリリーを守ってもらえる確率が上がる。


 2人には言っていないが、そのような理由で、アキラは毎日のようにパクツとタイムと剣を交えるようにしている。



「あ、候爵、おはようございます」


 眠そうにパクツが現れ、手を上げてアキラに挨拶した。


「……お前ら早起き過ぎんだろ」


 今はまだ午前6時。あと少しで日の出だ。小鳥が囀っている。


「俺達もう済ましたんすけど、父上先に朝食にしますか?」


「いや、ここまで連れて来といてか? お前らの相手は言葉通り朝飯前だ。後で良い」


 パクツは悪戯っ子の様に笑いながら、練習用の剣をアキラとタイムに投げた。

 いつも手合わせは、1人対2人でした後、アキラ対タイムをパクツが見ながら指導という名の容赦無いしごきが入る。


「ぜってー倒しますから」


 タイムは気が済むまで剣を振り回した後に構えた。


「右に同じ」


 アキラは少しだけ振って、綺麗にお辞儀して構えた。


「まぁ半世紀後だな。楽しみにしといてやる」


 パクツも剣を振って、剣の癖を確かめている。


「え……父上生きてます?」


「隙あり!!」



 アキラは2人との時間がたまらなく楽しい。

 ユウとリリーだと自分が一番上なので、アキラはそれなりに気を張っていたが、パクツがいるお陰で気を緩められる。

 お陰で魔剣にも引きずられ難いような気がする。




 あっては欲しくないその時のために。



 どうか、俺と魔剣の癖を知って。



 俺はリリを傷付けたくない。




 だから、その時はどうか、


 俺を斬って止めて欲しい。




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