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76…バザー③抗う

ガッ


 リリーは怖くなって一瞬目を閉じた……何も感じない。


 あれ? 痛くない……



「間に、合ったっ!! よっしゃ!!!!」


 息を切らしたタイムがアキラの剣を受け止めている。


「……はぁ、アキラさんの、変な気配がしたから、来てみたら。何、してんすか」


 タイムは深呼吸して息を整えた。


「リリー、とりあえず後に下がってくれると有難い」


 タイムは剣をいなして、アキラと向き合った。



「アキラさん! 本気でいかないと俺やられかねないんで、本気でいきますよ」



 アキラはタイムの言葉も聞かず、目線を全く違う所に合わせている。溜息をついて、イライラしているのか舌打ちをした。

 まるで、折角リリーを刺せるところだったのに、と言っているかの様に。



「タイム、どけ」


 アキラは躊躇すること無くタイムに向かっていく。



「どかないすよ! 退くわけないだろ!!」


 タイムは魔剣持ちのアキラと互角にやり合っている。


 2人の戦いが凄まじく、他の人が来たら危険だ。

 誰も来られないように、リリーはこの辺り一帯を防御魔法で囲おうとしたら……


パンッ


 何かに弾かれたような、無効化されたようになった。

こんな事は初めてで、リリーは驚いて自分の手を確認している。


「リリ、魔剣があるから無駄だ。止めとけ」


 タイムと打ち合いながら、アキラが冷たく言い放った。


 今まで見たことのないアキラに、リリーはどう反応して良いか分からず、ただ立ち尽くしている。



 どちらも押されることなく、時間だけが過ぎていく。

 不思議と、手の内を知っている者同士が手合わせをしている様だと、リリーは思った。


 そして、どうやら少し押しているタイムはアキラを斬ろうとしていない様で、リリーは安心してしまった。


 剣舞の様なそれは、アキラの体力の限界と共に終わりが見えてきた。

 タイムは体力には自信があり、こればかりはアキラに確実に勝てる事だったので、単純に"とにかく尽きるまでやり合う"が作戦だった。


 タイムが押し勝ってアキラが倒れたが、タイムも息切れが激しい。



「アキラさん……このために、俺等と、やり合ってたん、すね」


ーー違う


 息切れをしながら、魔剣を地面に刺してアキラがゆっくり立ち上がった。


ーー斬って欲しかったんだ


 タイムはリリーが近くに居たのに気付き、隣へ移動してリリーを片腕で庇い剣を構えた。


ーー俺が動けなくなるように


 しかし、アキラは2人の方を見ようとしない。苦しそうにしている。




 あ、アキラがまた行ってしまう。


 リリーはそう感じた。



「アキラ!!!!」



 リリーの声にアキラが少し反応してリリーに振返った。


 アキラが消えそうになる前に、リリーは必死にポケットに入れていた物を取り出して、急いで結んで投げ付けた。


 アキラはとっさに手で掴んだ。



「私、頑張ったの!!!!」



 その言葉が終わるか終わらないかの時に、アキラは行ってしまった。


 苦しそうに、それを強く強く握り締めて。



 アキラは危険だから下手に動けなかったし、アキラが消えてしまうと渡せない。

 だからリリーは投げるしかなかった。


 アキラの名前をリリーが刺繍したハンカチを。


 早く渡したくて、いつかアキラに偶然会えた時のために、常時リリーが持っていたから少し皺が入っていた。

 リリーが結んでしまったし、アキラも掴んだのでもうシワシワだ。



「頑張ったから、もらって、欲しくて」



 受け取り手のいないリリーの言葉が寂しく響いて、涙がリリーの頬をポロポロ落ちていく。


 タイムは、そんなリリーも涙も綺麗だと思わずにはいられなかった。



 息を切らしたタイムが深呼吸して呼吸を整えて、無言でリリーを抱きかかえて馬車に向かった。

 リリーはタイムの首元に抱きついて泣き続けている。


 はぁこれはキツイな……


 しっかりしているから忘れそうになるけれど、タイムは先日13才になったばかりだ。


 どうやったらリリーは笑顔になってくれるかな。


 リリーがアキラのために泣いているのが、タイムは悔しいような悲しいような。何だか切ない気持ちになった。

 リリーの涙を止めたいと、そればかり考えている。




 翌日、リリーがバザーで売上のトップだったと発表された。



 リリーはバザーで、トロフィーと素敵な刺繍製品をゲットして、ユウとアキラに刺繍入のハンカチを渡すことが出来た。



 残りのトロフィーは、あと1つ。



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