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73…新年度が始まった

「ユウ、今年度もよろしくね」


 久しぶりに制服を着たリリーは、ユウの手を取った。


「こちらこそ、よろしく頼む」


 ユウは馬車から降りてきたリリーの頬にキスをした。リリーも普通の事として受け入れている。

 これくらいのやり取りなら、ユウは流れるように出来るようになった。

 ユウはそれがたまらなく嬉しくてご機嫌だ。


 それを後からトウマが生暖かい目で見ている。

 今日も皇太子殿下は幸せそうで何よりだ、と。



 寒い冬も終わり、春がやって来た。


 リリーは6回生、ユウは5回生になった。




 アキラはまだ帰って来ない。




「去年は生徒会室に行ったらアキラがいて驚いたのよね。引継ぎで居ただけだったし、今年は居ないわよね」


 リリーはアキラが居た去年の事を思い出してしまった。新学期で明るく始めたいところだけれど、どうしてもしんみりしてしまう。


 今日学園に来たのは、入学式内にある生徒会メンバーの紹介に出るためだ。今リリーとユウと後方のトウマは生徒会室へ向かっているところだ。


「そうだったな。開けたら普通に居てくれたら良いのにな」


 リリーとユウは2人で寂しそうに笑って、生徒会室の扉を開けた。


 メンバーはほぼ去年と変わらない。カヨとシンが卒業してしまって不在の役職に新メンバーが入った。

 2人共ユウと同じ5回生の男子学生だ。


 去年はなかなか濃い1年だったので色々と思い出してしまうけれど、気持ち新たに、入学式へ行かなければならない。


 タイムが新入生として、まさに今、入学式に出席しているところだ。


 生徒会にタイムが入りたがっていたが、成績の出ていない1回生は入れないことになっているため、残念ながら入れることは出来なかった。


「さぁ、行こう」


 ユウの会長姿も様になってきた。




「何で1回生はダメなんすか?!」


 入学式後、生徒会室にタイムが文句を言いにやって来た。

 ユウは溜息をついて、話題を変えることにした。


「そういえば、お前はどうやって通うんだ?」


「聞いてないんすか? リリーと一緒に住んでます」


 タイムはドヤ顔で答えた。


「は?!」


 ユウは激しい勢いでリリーを見た。

 リリーはキョトンとして首を傾げている。


「あら? 言ったかと。言ってなかったかしら??」


「とりあえず、以後よろしくお願い致します」


 タイムは格好良くお辞儀をした。


「今日一緒に帰るんで、送りは要らないすよ」



 最近かなり平穏に過ごせていたので忘れていたが、リリーをめぐる争いが終わったわけではなかった事をユウは思い出した。



「オウカ公爵が受け入れるとはな」


「まぁ、可愛い弟の頼みは断れないみたいすから。ただ、公爵邸ではおとなしくする事が父から俺への条件になりましたけど」


 ユウは初めてウィステリア候爵に感謝した。


 帰りの馬車で、タイムがリリーと手を繋いだ方の手を振ってきて、パクツそっくりのドヤ顔で去っていくのを見るまでは。



「そういえば、タイムは代表挨拶をしたのよね?」


 馬車の中で、リリーはタイムに入学式の事を聞いている。


「ああ、今年は皇族も公爵家もいなくて、俺が。挨拶あれテンプレあるんだな」


「そうなの。アキラもユウも読んだのよ」


「へぇ……」


 アキラの話題が出たので、タイムは少し緊張した。


 アキラは公務に出ているから対外的には今まで通りだが、皇城に住んでいないしリリーにも会っていない。

 それを知っているのはごく僅かで、タイムもその内の1人とリリーに認識されているとタイムも分かっている。



 ただ、アキラがウィステリア候爵邸に住みついていることは更に最重要機密事項で、リリーは知らない。

 その間にアキラと話した内容なんて勿論言えないので、タイムは細心の注意を払い、口を滑らさないようにしなければならない。


 最近のタイムにとって、アキラがいる日常が普通だったから。



「アキラは、テンプレを言った後に少し自分で話をするの。アキラらしくて凄く良かったの」


 こうやって意識していつも話題に出すことでアキラを忘れないようにしているのかと、そんなリリーの姿を見てタイムは切なくなった。


 タイムはリリーの手を取ってキスをした。


「リリー、あと少しで背を抜くから、そしたら市井の街へお忍びで一緒に遊びに行こう。オウカの街を見てみたくて」


「ええ! 勿論よ」


 リリーは本当に嬉しそうに笑った。


 それを見て、タイムは少し胸が苦しくなった。


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