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66…文化祭②オウカ公爵と小公爵

「また学園に来ることになるなんて……」


 オウカ公爵は不本意ながら、今年2度目の学園訪問をしている。今回はパクツは領地の仕事があるからと断られてしまい、息子のタツァックだけを連れてやって来た。


 可愛い可愛いリリーから「是非来てくださいね! 四大大会を制覇するんです!!」なんて言われたら、2人の選択は来るの一択しかない。



「わぁ……懐かしい。私も最近まで通ってたはずなんですが、学生が輝いて見えます」


「タツ、年寄りみたいなことを言うね」



 タツァックはあまり表に出ないので目立たないが、リリー同様端正な容姿で、表向きの振舞いも穏やかで実は人気がある。

 こんな場所に来たら囲まれて大変だ。


 ただ、今日はオウカ公爵と小公爵の揃い踏みなので、誰それ近寄ってこれないため、安心して自由に過ごせている。

 今はのんびり出店を見ながら散策中だ。



「文化祭は完売したら優勝なのかな?」


 オウカ公爵の発言に呆気に取られたタツァックが溜息をつく。


「父上……本当にここに通ってたんですか。文化祭はポイント戦ですよ」



「いやーもう何十年も前だし、勝手に仲間にチームに入れられて、ちゃっとやって指示して後は任せてたから、よく分からないんだよね」


 詳しく説明しろということらしいので、タツァックはささっと話し始めた。


「貴族の用意した物を、この辺りに並んでいる様な全く同じ出店で平民のチームが売っていくんです。その売上金額と、完売ポイント、来場者の加算ポイントという来場者が出店へ入れるポイントがあって、全てを合わせて最終的な総合ポイントになるんです」


「ああ! そういえば平民チームと貴族チームはどこと組むのか当日の朝まで知らされないんだよね。あれが1番苦労した気がする」



 当日の朝に何を売るのかを知らされるので、そこからディスプレイや飾付けをして、店舗を整えて来場者を迎える。



「父上のチームはどうでした?」


「確か毎年優勝してたよ。皆上手く売ってくれたんだろうね」


 クソチートめ……


 喉まで出かかった言葉を、タツァックは必死で飲み込んだ。

 オウカ公爵はああ言っているが、彼の先見と計画が上手かった事が勝因だったのは間違いないだろうとタツァックは分っている。


 その上、それを自分の手柄にしないのが、格好良すぎて余計に悔しくなる。






「あ、お父様! お兄様!」


 リリーが2人を見つけて手を振りながら近付いて来ている。


 ああ、今日も娘が妹が可愛くて可愛過ぎると、父兄でリリーがこちらに来る様子を愛でていたら、後にユウの姿を確認してしまった。


 途端、2人共スンと無表情になった。



「お前達、相変わらずあからさま過ぎるぞ」


 そんな態度に慣れっ子のユウは、呆れて突っ込むしかない。



「皇太子殿下にご挨拶申し上げます」


 そんな言葉は聞かなかったことにしたのであろうオウカ公爵が挨拶して、2人で綺麗に礼をする。

 その仕草は流石公爵家だと感心するしかないくらい整っている。



「だって殿下はうちの可愛いリリを奪おうとする敵ですからね」


 タツァックはしっかりと明言しておいた。


 幼い頃はリリーと一緒によちよち歩く姿が可愛くて、タツァックはよく2人を世話していたのだが……

 今は自分よりも少しだけれど背が高くなり、綺麗に整った顔立のユウが本当に小憎たらしくてしょうが無い。


 リリーの隣に立つと大抵の男は霞むのに、ユウならお似合いなところも、気に入らないのだ。



「お兄様! そんな事言わないで。久しぶりの学園はいかがですか?? ユウはこれから用事があるみたいで……良かったら一緒に回りましょう!」


 父子は目を輝かせた。


「だから、送りに来たんだ」


 リリーが他の輩に誘われないために連れて来たのにと、不貞腐れながら言っているユウを見て、その様が昔から変わらないなぁとタツァックは笑ってしまった。





 オウカ公爵家が3人も揃って歩けば、皆が避けるため道ができる。

 リリーはタツァックの腕を持って出店を覗いていて、時折リリーがオウカ公爵に振返って説明している。

 それを聞いて、あの(仕事に関して)鬼のオウカ公爵が笑顔で頷いている。


 それだけで周りがザワつく要因にはなるのだが、貴族にはなかなかみられない、家族仲睦まじい光景にも、皆驚いて振返っていく。




「あ、カヨだわ。ジュンもいるわ。お父様、お兄様、お話したでしょう? 2人が一緒にチームになって色々教えてくれた人たちよ」


 リリーはカヨとジュンに手を振った。

 2人はリリーに気付いて大きく手を振っていた。


 が、リリーの後方の揃い踏みに気付いて手が止まった。

 2人共驚き過ぎて、ついでに心臓も止まりそうだ。



「お、オウカ公爵様と、しょ、小公爵様に、ご挨拶、も、申し上げます」


 カヨもジュンも、出会う可能性が限りなくゼロに近いはずのオウカ公爵と小公爵を前に、緊張でガチガチの挨拶しか出来ない。

 タツァックは挨拶を受けながら気の毒になってきた。


 周りの来場者は、どの学生がオウカ公爵家に挨拶をしているのか、気になって遠目で様子を窺っている。



「ああ、リリから話はよく聞いているよ。娘がお世話になっているね」


「おおお世話になっているのはこちらです」


 息継ぎせず勢いで発言しているカヨの隣で、ジュンはお辞儀している。


「そういえば、例の商品を考えたのは君かな?」


 ジュンが、言葉を発したら一緒に心臓が口から出るんじゃないかと思いながら口を開けた。

 隣でカヨが1人でホッとしている。


「は、はい私です」


 声は上ずったが、ジュンは何とか口から何も出さず返事が出来た。


「アレは良いね! 今日買うよ。お祖父様のキャメリ商会で扱ってくれたら良いのに。特注で造ってもらいたいくらいでね。今度の交渉の時に君も連れて来るようにお願いするから、是非おいで。私が引退したら息子が引継ぐから、タツァックも同席させよう。末永くよろしくね」


「「えっ?!」」


 タツァックとジュンが同時に返事をした。

 ジュンはそれにも驚いてフリーズしてしまった。


「父上俺はまだまだ引継げませんミスだってしてますから」


 早口で機械の様に喋るタツァックを、オウカ公爵は聞こえないふりをしてジュンの方へ向いた。


「商才のある孫がいるとは聞いていたけど、その通りだね。君と繋がっているとオウカも先々安心だろう」


「……ありがとうございます!!」


 ジュンは泣きそうなくらい嬉しい言葉をかけてもらえて、お礼を言うだけで精一杯だ。


「君は4回生か……まだ先は長い。今は学園で勉学に励みなさい。きっと将来の役に立つよ」


 言っている当の本人は、面白い事を探しに登校していただけだったはずだったが……





 その後、そこに居合わせた来場者達の噂のお陰で、オウカ公爵にそこまで言わせた学生だと、ジュンは一気に有名になった。



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