61…リリーと学園の四大大会
台座の凹みはあと3つある……
トロフィーがぴったり。
剣術大会は学園の四大イベントは残り3つ……
数が合うわ。
「聖剣、これはどういうこと?!」
『お察しの通りよ。こうやって…………あら、これも言えないみたいね。まぁ、何かを、隠した人間がいるってこと。だから逆に、こうやることで隠した何かを見付けられるの』
聖剣が諦めた様に、でもリリーとユウにヒントを与えてくれた。
「何が見つかるかは知っているのか?」
『予想はついてるけど〜どうかしらねぇ。私も知らないのよ。リリにしか扱えない物かもしれないわ』
「私が、トロフィーを取りにいくしかないわね」
リリーは台座においている手に力を込めた。
『あらぁ、自信あり?! 何が残ってるの?』
「文化祭、バザー、ダンスパーティーの、3つ、ね。トロフィーは次の大会には戻さなきゃいけないから……」
リリーが聖剣に指折り説明しているが、どんどん覇気がなくなっていた。
「全ては、厳しくないか?! 俺はどれも出られないし」
皇族が出てしまっては周りが気を使うので、出ないことにしている。
ユウが心配そうに見ている。というか、ダンスパーティーを誰か他の男と出るなんて、阻止したいに決まっているだろうと、脳内でユウは焦っている。
「とてもマズいわ。文化祭の経営もだけど、バザーの刺繍も非常にマズいわ……」
リリーは剣術のトロフィーの横に並ぶ凹みを触りながら、独り言のように話続けている。
それを見た聖剣は2人に聞こえないように呟いた。
『リリ"も"刺繍が出来ないのね……』
リリーはお金に関しては全く関わったことがない、えげつない金持ちのご令嬢だ。
金銭感覚というものを持ち合わせていない。そのことを自分でもよく理解している。
でも、だからこそ勉強すればどうにかなるかもしれない。
ただ、リリーは剣術は好きだけれど針は小さ過ぎて細過ぎて、その上座り続けなければならないので少し苦手な分野だ。
授業では何とかするけれど、性に合わないのでプライベートですることは皆無だ。
だから、はっきり言って得意ではない。
ユウもリリーが刺繍をしているのを見たことがない。
実は皇城での勉強はこっそり皇妃教育も含まれているのだが、リリーの苦手な裁縫をさせないようにオウカ公爵が手を回しているのは、この2人は知らない。
「大丈夫だ、リリ、落ち着け」
「ダメよ、ユウ。落ち着けないわ。折角聖剣のお陰で、どうしたら良いか分かってきたのに」
リリーが珍しく沈んで変な汗をかき始めた。
「毎年、生徒会から優勝者が出ている。優秀な人材を選んでいるから、当たり前と言えば当たり前なんだが。だから……」
「協力してもらえるかしら?!」
顔を上げて、リリーは目をキラキラさせた。
「ああ、きっと。それを借りて、ここに置いたら良いだろ?」
リリーは勢いよく首を振った。
「ダメよ。任せっぱなしは良くないわ。だって私が使いたいんだもの……剣術以外はチーム戦よね。だから、私も入れてもらって、頑張るわ」
「え……」
リリーの頑張りは時々斜めへいく。
男の多い生徒会メンバーとチームになるのか?!
ユウは止めたい。
がしかし、自分の苦手分野まで頑張ろうとするリリーを尊敬してしまい、その姿を見てみたいと望んでしまう自分もいることを、ユウはよく分かっている。
アキラならきっと上手く止めてしまうけど、ユウはリリーが自由に楽しそうにしている姿もキラキラしていて好きで、ついつい許してしまう。
つまりは、ユウはリリーに弱いのだ。
次の生徒会の日、リリーは早速その事を打診してみた。
「文化祭なら、ジュンが4年生ながら有力だとか。ご祖父の経営を手伝っていると、そう聞きましたが」
件の騒動で当主交代となりスモス子爵になったセイチが、そう切り出した。
セイチの早期告発のお陰で騒動が大きくなり過ぎなかった事が減刑事由となり、スモス前子爵夫妻は生涯軟禁とされたが、セイチ本人は当面監視付きの当主となることで済んだ。
突然話を振られたジュンが目を大きくして、一瞬フリーズした。
「いやいやいや、1人じゃ無理です。誰かサポートしてくれる方がいないと……チームは3人ですよね、リリー様はサポートを少ししてもらうとして、他はそれなりに経営か執務に既に詳しい方がいると安心です」
「それなら、カヨが良いんじゃないか?」
シンが、生徒会を2年一緒にやっている6年生同士のカヨに話を振った。
カヨも目を大きくして驚いた様子だったが、リリーとジュンを見て照れながら返事をした。
「……私で良ければ。お力になれるかしら? 一応領地の収支を見たりの経営は少し手伝っているわ」
リリーは啞然としてしまった。
自分と同じ年頃の人達が、経営についてもう手伝っていたりするという現実を目の前にしてしまったのだ。
今まで周りの過保護な男達に囲まれていたため、リリーは同世代のことを知らなさ過ぎたのかもしれない。
衝撃を受けているリリーを、ユウは黙って見守るしかなかった。




