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閑話休題8〜ずっと

 空を見上げると、無数の星がキラキラ煌めいている。空と自分達を遮るものは何も無い。


 ここは、皇城のてっぺん。

 僅かな平らな場所で、3人の子ども達が仰向けになって手を繋いで空を眺めている。


「星座の授業を受けたけど……何がどれかさっぱりだわ。星が多過ぎるもの」


「ははっ! 確かに。他の星を消すことも出来ないし。人が勝手に名前付けて呼んでるだけだしな」


「星がきれいなのは、わかる」


 夏の暑さも和らいできて、風が涼しくなってきた秋の入口。

 リリー、アキラ、ユウと順番に並んで寝転んでいる。

 星座を探しに来たけれど、リリーとユウは何が何やら分からないらしい。


「自分で、これ! っていうのだけ決めて、それだけ覚えてるだけでも違うぞ。それを目印にするんだ。指標ってやつだな」


 アキラが星を指差して、両隣の2人に教えている。



「私の、アキラみたいな感じね」



「俺も、兄上だ」



 アキラは目を丸くした後、嬉しそうな顔をした。


「なら、俺はずっと2人を守るよ。3人でずっと一緒だ」



 3人ともニコニコして繋いだ手を万歳して、気持ち良い風を楽しんだ。

 純粋でキラキラした3人の目が、満天の星空を眺めている。

 皆でいつまでも一緒にいることを、誰一人疑うこと無く、ただ未来を楽しみにしている。





「兄上、今日はいつ見つかるかなぁ?」


「さぁなー、まぁ流石に夜ここに来るとは思ってないんじゃないか?」


「んふふっ。この前の怒ってたお父様、目が飛び出るんじゃないかって思っちゃった!」


「あははは! 確かに、落っこちそうだったよな!」


「落ちたら拾わないとな!」


 子ども達は大笑いして楽しんでいる。



 オウカ公爵は、こんな所で子ども達に散々の言われようであるとは露知らず。今はきっと夢の中だ。


 皇帝が、オウカ公爵にバレる前に子ども達を見つけてしまおうと鋭意対応中なのだ。

 明日の仕事のためにも、何事もなかったかのようにしたいと……


 今日はリリーが皇城にお泊りの日なので、それが出来るはずだと、皇帝のみならず皇城にいる誰もがそれを望んでいる。



「……何処にもいない、だと?!」


 皇帝は真っ青になって頭を抱えている。

 どの部屋にもいない。以前逃げ込まれていた地下にもいない。

 探知魔法を使っても、出てこない。


 もしや、皇城から連れ去られたか?!

 いや、いざとなったら魔力オバケのリリーがいるから、抵抗で魔法を使えば直ぐわかるはずだ。

 自ら出ていった形跡もないから、3人はきっと皇城内にいる。


 その通りなのだが……




 アキラは、皇城のてっぺんに着いた時、リリーに防音と防魔、探知妨害の3つの魔法をお願いしていた。

 今回は誰にも見つからず、大成功だった。


 どれだけ騒いでもリリーの魔法が効く何時間かは見つからないと、アキラは高を括っていた。


 しかし、目が覚めて朝になっていた途端、アキラはやってしまったと焦って青ざめた。

 大人でも数時間がやっとなのに、リリーの魔法がまだ効いている。


 リリーとユウを起こして、直ぐ戻ったら……




 憔悴しきった皇帝と、皇妃達、皇城内の従者という従者が集まっていた。

 徹夜をしたのであろう、大事になっている。

 そして、その奥に、どう表現したら良いかわからない、今まで見たことのない般若のようなオウカ公爵が仁王立ちで待ち構えていた。




「良いかい? 君達に理解できるかどうか分からないけれど、僕の言いたい事を言うだけの自己満足のお説教を聞きなさい。これが今回の罰だ」


 オウカ公爵は子どもに対して会話する時に自分を僕と呼んだりしない。

 そんな事どうでも良いと思っているくらい怒っているらしい事が、流石に子ども達にも伝わっている。

 今まで見たことのない淡々とした抑揚のない話し方が、逆に子ども達を怖がらせて、静かにさせている。



「僕達は大人で、君達はまだ子どもなんだ。大人は勝手なもので、子どもには早く色んな事を自分で出来るようになって欲しい望むのに、目の届かない所に行かずに、見える所に居てほしいとも思うんだよ」



 下の2人はキョトンとしているが、アキラはじっと真っ直ぐオウカ公爵の目を見ている。



「まだ体も小さい、経験も少ない、だから考え方も甘い。もっともっと経験を積まないと危険な事に簡単に巻き込まれたりする。君達の周りは今は良い大人ばかりだけど、世の中はそうでない人達の方が多いくらいだ。特に君達は、色々なことに巻込まれやすい立場にある」



 オウカ公爵は一旦自分を落ち着かせるように溜息をついた。



「……つまりは、僕達は君達のことがとても心配なんだよ」



 心配という言葉にリリーは反応して、次から次へとポロポロ落ちて来る涙を手で拭いている。


「お父様、ごめんなさい……」


 オウカ公爵はやれやれといった顔をしたが、まだ言い足りなかったようで続けた。


「……隠れんぼはやるなとは言わないよ。あれ程面白いものはないと僕も知っているからね。ただ、大人が見つけられそうにない場合は、きちんと、その日のうちに、出てきなさい」



「わかりました。申し訳ありません」


 アキラがきちっと頭を下げた。それを真似してユウもペコリとお辞儀した。


「ごめんなさい」



 アキラが8才、リリー6才、ユウ5才の時だった。

 ずっと3人でいられると信じて疑わない、子どもの頃のお話。




 流石の悪戯っ子3人組も、いつもより長い期間良い子にしていた。




 しかし後日……


 オウカ公爵は、"その日のうち出て来れば良い"と勘違いをさせてしまった事を、知ることになる。



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