46…リリーが見たものは
リリーは聖剣と急いで謁見の間へ向かい、扉を開けようとした。
魔剣の魔法だろうか、開かなくなっている。
『これは力技でいくのよ。同等かそれ以上の魔力を当ててやりなさい。普通は無理だけど、リリーの魔力量なら余裕でいけるわ』
リリーは取手に手を当てて、言われた通り魔力を当てた。
バンッ
扉が開いたので、リリーは直ぐ中を確認するために入った。目の前に謁見の間が広がる。
「!!! ユウ!!」
玉座から謁見の広間までの階段の途中にある、挨拶のために使用される踊場で、ユウと数名の騎士達をリリーは確認できた。
玉座の前に立つマリルと、向かい合っている。
仮の所有者だが魔剣に操られているため、マリルが剣術に明るくなくても関係ない。
全ては魔剣の意のままだ。
その辺の騎士だと太刀打ちできない。もう命は尽きていただろう。
マリルの剣を構える素人ではない立姿を見て、ユウの近くに居たのが皇城の騎士で良かったと、リリーは思わざるを得なかった。
防魔が出来るように処理してある強固な魔法石が部屋の数ヶ所に置いてあり、普段は防魔してあるのだが、魔剣に打ち消されてしまったのだろう、全て破壊されてある。
ユウは、皇城の騎士達に守られてはいるが、魔剣の攻撃は凄まじく、どう見ても劣勢だ。
攻撃は今も続いている。
「アタシ、オネエさマノ、モチもノ、スベてモラウ……オマえモ、あキラモ」
「アキラ……?!」
アキラが居るのかと、リリーは目を見開いて探した。
どこ?!どこに居るの?!
玉座のマリルの近くに、アキラが倒れている。
それが見えて、リリーは息が出来ず動けなくなった。
「アキ、ラ……」
そんなリリーに気が付いて、ユウはマリルを気にしながら大声を上げる。
「リリ! 大丈夫だ、兄上はまだ目が覚めてないだけだ!! コガヤ公爵邸から、そのまま連れて来られたらしい!」
リリーは安心して、目に涙をためながらユウに相槌をうった。
涙がポロポロ零れた。
「ワタしノ、ホシいモノ、バかリヲもッテル」
マリルが魔剣を持って構えた。
「ズルいワ!!!!」
その言葉と同時に一振りし、ユウも騎士達も一気に薙ぎ払われた。
皆階段の途中まで転げ落ちてきている。
「マリル、お願いやめて!!」
マリルはリリーの言葉に全く反応しない。
「ユウ! 怪我は?!」
「っ大丈夫だ、リリ、離れてろ」
「オネエさマガ、イナケれバ、ゼんブワタしノモノ」
リリーはこの言葉を聞いて、矛先を自分に変えることは容易いだろうと直ぐ理解した。
ユウ達から引き離して、自分の方へ来させたい。
「私があちらに行っても良いのだけど、魔力を使うから周りに被害が出ないとも限らないのよね……」
『そうね、魔力量が半端ないから、ちょっと危ういかもしれないわね』
リリーは、自分の方にマリルを呼ぶ方法を考えている。
広間の方が、戦うには広さも高さも十分なので、出来ればこちらが良い。
「聖剣、私に使用の許可をいただけるかしら」
『ええ、勿論よ。もう、許可なんていらないわよ。いつでも使いなさい……まだアレは意識が少しあるみたいだから、大声で呼べば、注意をこちらに向けられるかもしれないわね』
リリーは頷いて、大きく深呼吸し、お腹に力を込めた。最近あまりきちんと出来なかったけれど、日々の鍛錬のおかげで、淑女らしからぬ大声を出すのには自信がある。
「マリル!! こっちを見なさい!!!!」
リリーは聖剣を鞘から出し、正面を向いて立った。
聖剣も確かに美しく、剣としてのシルエットもこの上ない。
ただ、リリーが剣を抜いて構えるという、それだけの仕草が美し過ぎて、こんな時なのにも関わらず、絵にしたいくらいだとユウは見惚れてしまった。
リリーの声に気付いたのか、聖剣の存在に気付いたのか、マリルがゆっくり顔だけリリーへ向けた。
もう人間のそれではなくなってきている。




