44…聖剣の推し
「リリ、お前は魔力温存をしなさい」
謁見の間までの階段を相手方が占領しているため、リリーたちは進めないでいる。
ここを制圧しなければ、ユウや魔剣を持ったマリルの居る謁見の間へ行くことができない。
魔剣には聖剣しか敵わないため、仮の所有者であるリリーが行かなければならない。
『まぁそうよね。魔剣がどういう状態かわからないし、温存しとくに越したことはないわ』
「……わかりました」
リリーは頷き、壁側へ一旦引き、魔法で防御壁を作るだけにした。
リリーが一先ず安全になったのを確認して、パクツはとりあえず周りを一掃して必要な間合いを作った。
「何か策は?!」
パクツが大声で話始めたことに、オウカ公爵は一瞬驚いて怯んだが、すぐ2人にしか解らないように応えた。
「イチ、ヨン、ゴはない……ニかサンでいく」
パクツが人前で話するのは前代未聞だ。
もしかしたら、小声で話をする余裕のない状況だと判断したのかもしれない。
「ヨンは無しか?」
「リリの方へ行く輩が出るかもしれない。大丈夫だろうけど、今は休ませておきたい」
「よっしゃ……下がってろよ」
パクツは剣を構えて殺気立ち始めた。
「危なくなったら言って」
オウカ公爵はパクツの邪魔にならないように後退しながら伝えた。
「……大丈夫だろ」
「任せたよ」
パクツの返事が一瞬間が空いたのは初めてだった。
それだけの数と、それなりに腕のある者達なのかもしれない。
オウカ公爵は、見回せる場所を探し、明りを灯すために設置されている階段を2〜3段上がった。
何かを確認して、パクツの方へ向いた。
「パクツ!サンは無い、ニでいく!」
「了解っ」
パクツが次から次へと順調に倒していく。
剣筋に無駄がなく、戦っている様が美しいという言葉がこんなにも似合うのはパクツくらいだ。
『あら、なかなかやるじゃない……1人でいけてるわ。それに、戦力にならないようにしているだけで、誰一人殺めてないわ。んー、彼が正式な所有者なら良いのに』
「パクツ叔父様は素敵でしょう??」
『公爵にお願いしてみたら?』
「……?? 何を?」
『婚約を結び直せば? あのタヌキなら出来るわよ』
聖剣の提案に、リリーは驚いて心臓が止まりそうになった。
「……へ?! そそ、そういうのじゃなくて! 叔父様は憧れと言うか、手の届かない存在なのよ! ご迷惑をおかけするだけだわ。それに、お父様はタヌキじゃないわよ」
早口でどんどん喋るリリーに対して、聖剣はのんびりとまるで欠伸でもしているかのように呆れながら答える。
『ふぅーん……双方喜んで、まとまりそうだけどね』
「ダメよ! 叔父様の奥様はミンティア国のお姫様なんだから!!」
『ああ……大人の事情ってやつねぇ。めんどくさっ。私は彼が良いわ』
パクツの戦っている様を見ているリリーは険しい顔になった。
「……数が多すぎるわ」
順調かと思われていたその時、パクツは何かに足を取られて滑ってしまった。
血溜まりだ。
『あら、形勢逆転かしら』
リリーは両手で祈るようにして見ている。
パクツは苛つきながら、膝を着いた状態で相手を捌いていく。
立ち上がって前からくる者を一人切り、右からの者も剣で受けた。左からの者も受けようとした時、下からしがみついてくる者がいた。
蹴ろうにも、泥濘んでいて、また滑ってしまいそうで出来ない。
階段上に、遠距離の弓を構えている者がいる。
「パクツ! 後、弓!」
オウカ公爵が知らせる。
「チッ」
舌打ちをしながら、どうにかしがみついている者を蹴り飛ばしたが、まだ前から来る。
周囲にしか対応できず、弓に対応しきれない。
そんな中、
無情にも矢が放たれた




