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閑話休題4〜腐れ縁

「キョウヤ様、私から教えられることは全て教えさせていただきました。来週から、私の師が参ります」


「わかりました。先生、毎週の授業をありがとうございました」


 このやり取りは何度目だろう。どんどん、先生の先生が来てくれるようになる。授業が面白くなるのは良いんだけど……自分にとって師だという人が、出来ない。

 キョウヤ・カノ・オウカが12才の時だった。


「学園に入学するまで、あと1年もあるんだよね…」


 キョウヤは幼い頃から学園に興味があって、早く通いたかった。

 どんな所で、どんな人たちがいて、どんな学びが出来るのだろうかと。


 幼い頃から両親と侍従たちの目を盗んで、度々城下をふらついて、数年かけてやっと良い拾い物をしたところだった。

 世の中は広く、まだまだ知らないことが多いと実感してしまい、この好奇心を抑えることが出来ずにいた。



 今日は折角両親共に不在なのに、その拾い物は剣術の先生に皇城の騎士団まで連れて行かれてしまった。その上、午前中で先生の授業が終わってしまった。

 つまりは、1人で暇なのだ。


「今日は簡単に撒けるな…」


 キョウヤは窓を覗き、見張りや侍従たちの動きを見て、脱走した。部屋に居るように見せかける仕掛けも抜かり無くやっている。


 魔力量は一生涯増減しない。

 キョウヤは周りには隠しているが魔力量は規格外なので、年齢的には学園までは距離があるがオウカ公爵家にある魔法陣を使えば移転魔法でサッと行ける。



「ここが学園かぁ……」


 セキュリティはトップレベルらしいけれど、家紋を見せて見学だと言ったらスルーで入れた。

 こんなことだから権力を好きになる人間が多いのかもしれない。


 学園を歩いていると、かなり年上そうな体格の良い男の人が走ってきた。

 避けようとしたら、相手がキョウヤを認識してなかったようで、見事にぶつかってキョウヤがすっ飛んでしまった。


「あー! すまない!! 見えてなかった……」


「いえ、僕もちゃんと避けなかったから」


 その先輩は尻餅を着いたキョウヤに手を差し伸べて、軽々と起こしながら謝った。キョウヤよりだいぶ背も高く、見上げなければ顔を見れなかった。


 キョウヤが学園に見学に来たことを説明すると、その先輩が案内してくれると言う。

 半ば強引だったが、面白そうな人だったので付いて行くことにした。


「俺はタイイチ。お前は?」


 タイイチ?!

 会ったことはないけれど知っている名前だ。しかし肖像画で見た容姿とは全く違うので……別人だろう。


「僕はキョウヤだよ」


「キョウヤか……そうか」


 「お前が」とタイイチが最後に呟いたが、キョウヤには聞こえなかったようだ。


 タイイチの案内はとても面白く、過去のエピソードや歴史を交えての話があった。

 歴史は家庭教師の先生に教えてもらったり歴史書を読んでいたので、キョウヤはワクワクしながら聞いている。


 あの政策はこの部分が良かった、悪かった、あの部分が例えばこうだと良かった、いやまずかった……

 2人で国政の批評までし始めて、尽きることがなかった。

 キョウヤがここまで一生懸命に熱中して話が出来たのは、初めてだったかもしれない。




「お前は年下だけれど、その辺の大人より賢いな!」


「そうかな?きっと、君の周りの大人が大したことないんだよ」


 タイイチは呆気にとられて目を大きくして、豪快に笑った。


「はははっ! そうだな! 全く、そうだ。ああ、お前は良いな……いつか、大したことない大人は一掃してやらないとな」


 何だか不穏なことを言っているけれど、キョウヤはタイイチに興味が出てきた。

 学園に通う時にいると良いのに、と。


「ねえタイイチ、君は何回生なの?」


「俺は6回生、今年で卒業だ。キョウヤは?」


「なぁんだ……僕は来年入学だよ」


 折角、学園は楽しそうだと思っていたところなのに。面白そうな人が卒業だなんて、ツイてないな。


 キョウヤはつまらなさそうな顔をしている。


「残念だな。お前なら生徒会に入っただろうに。よし、ならネタバレだ」


 魔法で姿を変えていたらしい彼は、本来の姿を見せた。

 それを見たキョウヤは、それはそれは激しく嫌そうな顔をしている。



「げっっ」



 やっぱりキョウヤの知っている"タイイチ"だった。

 タイイチ・ユス・フィズガ。


「おい! この姿にそんなこと言ったの、お前が初めてだぞ」





「皇太子殿下にご挨拶に上がりました」


 新しいオウカ公爵がとても若い護衛騎士を連れて皇城で挨拶回りをしている。


「ああ! ついに来たか! もう爵位を継いだんだな。よろしく頼む、オウカ公爵」


「……チッ、はい」


 新しいオウカ公爵は皇太子にだけ聞こえるように舌打ちをして、返事をした。


「おい」


 皇太子は侍従たちを下がらせて、2人で会話をし始めた。


「僕の6年前の入学式、君の卒業式での姿変えの魔法解呪の話で持ち切りだったよ」


「はははっ! あれで不要なのは何人か切れたからな! なかなか良かった。ああ、お前の3年連続で生徒会長断固拒否した話は皇城まで届いていたぞ」


 若いオウカ公爵はげんなりした顔をした。



「キョウヤ、貴族の当主達を見ただろう。どう思う?」


「最っ低だね。しっかりしてるのも何人かいるけど、何なのあのキラキラクソ集団。見るからに脱税しまくってるでしょ。陛下は何してんの。タイイチどうするの、あれ」


 皇太子は大爆笑しはじめた。

 こんな風に話が出来る人間を得られたことが、その上未来の側近ということが、本当に運が良いとしか言えない。何よりも、稀に見る賢さを持っている。

 今まで気が重くてやりたくなかった国政が、今から楽しみで仕方がない。


「お前はどうしたい?」


「とりあえず、皇帝になるまで勉強しまくってね。隙を作らないで! 僕より劣ってたら許さないよ。君が皇帝になってから、掃除するしかないよね。それまでは……僕は領地内の腐った貴族を綺麗にしておくから」







 数年後、タイイチは父親から皇帝の座を奪い取って、オウカ公爵と国政の改革を行った。





 二人はそれはそれは古くからの腐れ縁。



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