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21…15年前のお話⑥ココアナ王女とパクツ騎士

 そこからはトントン拍子で進んでいった。

 ココアナ王女がパクツ騎士を気に入って連日お茶に誘い、渋々連行されるパクツ騎士をオウカ公爵は笑顔で見送った。

 最終日の朝に二人は国王に呼び出され、ココアナ王女とパクツ騎士の婚約を打診された。

 ミンティア国で貴族の身分を与えて、住むところも用意しても良いとも。


 パクツ騎士は驚きで言葉も出ないようすだったが、オウカ公爵は待っていたかのように話始めた。


「有難いお話ですね! こちらとしては婚約は前向きにお願いしたいと思います。ご心配なのはパクツ騎士の身分かと。フィズガ帝国のウィステリア候爵への養子入りのお誘いがあるので、それを受ければ大丈夫かと思われます」


 というか、もうオウカ公爵は受けている状態なのだが、パクツに何を言われるかわからないので、そこは隠した。


「はぁ? 候爵??」


 パクツ騎士が珍しく間の抜けた声を出して驚いている。


「ウィステリア候爵領はミンティア国王のすぐ北の国境沿いに位置します。ここから片道1日で十分です。ミンティア国とオウカ公爵領との間に位置します」


「それは! 何と良い条件だろう!! 素晴らしい。それならウィステリア候爵領へ嫁がせても構わないな」







 全てオウカ公爵の狙い通りにいった。


 オウカ公爵は以前からパクツ騎士にしっかりとした身分を与えたかった。

 それは、後継者のいない権力者であるウィステリア候爵に養子入りさせることで叶う。



 しかし問題は婚約者だった。



 パクツ騎士が敬語を使うのを必要とせず、且つ強力な後ろ盾がある人物でなければならない。


 他の貴族たちがおいそれと話しかけられるような相手では、貴族たちと話をしたくないパクツ騎士にとっては都合が悪い。

 フィズガ帝国には条件に見合ったご令嬢は見当たらず、オウカ公爵は行き詰まっていた。



 そこで今回出てきたココアナ王女が条件にドンピシャだった。


 同年代からの敬語を嫌うココアナ王女はパクツ騎士にもってこいの相手で、しかも超強力な後ろ盾がある。


 養子にとほぼ内定のウィステリア候爵領は、オウカ領の隣でありミンティア国との国境もあるので、どちらとも交友は難なく続けられる。



 パクツ騎士がココアナ王女を助けたあたりから、ココアナ王女の同年代からの敬語嫌いを思い出し、この計画がオウカ公爵の頭の中で立てられた。




 我ながら上手く事が運んだなと、オウカ公爵は滞在先のソファで一人で満足していた。



「おい、いつから考えてやがった」



 パクツ騎士がオウカ公爵の横に音を立てずに背後に立っていた。



「ちょちょちょっちょっと?!?! 心臓が止まるかと思ったよ!!普通に近付いてくれないかな?!」


 オウカ公爵は目を白黒させている。


「いや、首絞めてやろうかなと思って」


 パクツ騎士の目が据わっているのに気付いて、オウカ公爵は冷や汗をかき始めた。


「護衛が?! 護衛対象を?!」


 オウカ公爵は自分の首を手で守った。


「やってないから良いだろ。で? 計画通りかよ」


 ドカッと向かいのソファに座りながら、パクツ騎士はオウカ公爵を見た。


「……うん」



 暫く沈黙が続いたが、パクツ騎士が項垂れて話始めた。



「何でここまでしてくれんだよ」



 オウカ公爵は困ったように笑った。顔を上げず、パクツ騎士は続けた。



「今のままでも十分だったんだ。それを……どうやってこんな恩を返せば良いんだ。……ただの浮浪孤児だった俺に、何で」


 パクツ騎士は涙が溢れてきそうなのを必死に我慢しながら話している。


「ココアナ王女と同じだよ。君が初めて僕と対等に向き合ってくれたから。あんな暮らしをしていたのに真っ直ぐだったのは、君が腐ってなかったからだよ」


 懐かしそうにしながらオウカ公爵は話続けた。


「それで、うちに来てくれた時からずっと、兄弟のいない僕にとって弟の様だったんだよ。僕が家族を持ってからは、同じ様に幸せになって欲しいなと思ったんだよね。ほら、貴族の主は子どもや兄弟の結婚を組むのは当たり前だし」


「お前んとこは、異常だけどな」


 パクツ騎士はすかさず突っ込んでしまった。あんなに愛に溢れた家族は、貴族では珍しい。


「ははっ。まぁ重過ぎるかもしれないけど、兄から大切な弟へのプレゼントを受け取っておくれよ。ミンティア国への婿入りは、僕が寂しくて受入れられなかったんだよね」



「重過ぎて怖えよ」



 パクツ騎士は俯いたまま、そう返すのに精一杯だった。


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