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13…マリルという義妹

 昨年、外で落葉樹が寒そうに立ち始めた冬の初め頃、義妹のマリルがオウカ公爵家にやって来た。


 それをリリーが聞かされたのは、シリイからだった。


「リリー様とお年が同じであられる、義妹になるマリル様という方が、今まで平民として暮らしていたようですが、この度オウカ公爵邸で生活されることが決まったようです」


 ただ、それだけだった。


 両親からの説明もなかった。ただ、時期が来たら説明する、迎え入れてやってほしい、とだけ。



 オウカ公爵家の侍従達には激震が走った。

 オウカ公爵は愛妻家で有名で、まさか婚外子がいたなんて誰も夢にも思わなかった。


 いつもは家族のみならず、従者たちにも丁寧に説明をしてくれる人が、今回は何も説明もなく、事の重さを物語っているようだった。




 オウカ公爵夫妻は無言のまま、マリルを迎え入れた。




 アキラとユウも非常に心配して、毎日のように時間を作っては会いに来た。

 リリーが肩身の狭い思いはしていないか、侍従たちは割れたりしていないか、来る度に無言でチェックだけはしていた。


 ただ、二人の心配を他所に、リリーはこう言ってのけた。



「マリルはなかなか愉快な性格なのよ」



 来た日から我が物顔で侍女を顎で使い、

 リリーの宝石を自分の物として持ち去ろうとし、

 自分でドレスの裾を踏んでひっくり返ったのにリリーが足を掛けたと泣き、

 サイズが違うのにリリーのドレスを着ようとする……



「それは、賊か何かか?」



 思わずユウが真顔でそう突っ込んでしまうくらい、なかなか不思議な事をし続けている。


 マリルは言い挙げたらキリがないくらいの粗暴な行為をしていて、アキラもユウも聞くだけで呆れ果てていた。



 される側のリリーはやっぱり気持ちいいものではないはずだと、毎日どちらか時間を作れる方がオウカ公爵邸へ訪れようとアキラとユウが話合って決めたらしい。

 今日は一体何をされたのかを聞くのが、会ってからのルーティンになった。


 最初は言い淀んでいたリリーだったが、段々まるでマリル観察記をつけているのではないかと思わせるくらい詳しく、生き生きとしながらアキラとユウに報告するようになった。



 古くからの侍従は誰一人としてリリーに対して態度を変えることはなかった。


 それ以外の特に新参者は、こんな時期に招き入れるとは相当な想い入れがある娘なのかもしれないと画策して、マリルに取り入ろうとする者も少しはいたが。


 結局リリーが上手く受流し、小公爵も相手にしておらず、特に夫婦間にヒビが入っているようにも見えない。

 その様を見て、器の大きさの違いを目の当たりにした多くの者は、義妹の登場は大した事では無いらしいと判断したのだ。



 最近は、公爵家の貴族のマナー教育を受けてもマリルは言葉使いがほぼ変わらず、ルールを覚えようともしないという。

 出来ないことを指摘されるとマリルは決まって癇癪を起こし、教育係もついに頭を抱え始めたとか。






 その日はマリルのダンスレッスンの日だった。

 先生は、良いお見本を見て真似するように踊るのが上達の近道だと説いた。


「なら、リリーお姉様のダンスがみたいわ!お姉様、私を嫌って避けてるようだから。仲良くなりたくて」


 無い事無い事を言うマリルの提案で、その場は凍りついた。しかし、コレでも公爵令嬢である……誰も拒否は出来ない。



 部屋でアキラとお茶をして一休みしているリリーに、マリルの侍女が申し訳なさそうに予定を聞きに来た。


「リリー様のご予定を前もって伺っていただかなければ。対応いたしかねます」


 ピシャリとシリイが言ったが、アキラが椅子に座ったまま手を上げて声をかけた。



「シリイ待て。……リリ、俺と踊ろうか?」



 「実は噂のご令嬢を見てみたかったんだよね」と小声で付け加えて、アキラはニヤリと笑った。

 何だか悪戯をする前の子どもの様な顔をしている。


 そんなアキラが可愛く見えて、リリーはふふっと笑って了承した。



 直ぐに二人は軽く用意をして、今マリルがレッスンをしているダンスホールへ向かった。


 リリーの手がいつもより冷たく緊張している事に、アキラは気付いた。

 気丈に振る舞っていても、やはりリリーは嫌な思いはしているんだろうと心配しながら、アキラは着飾って更に綺麗になっているリリーを見る。


「リリ、今日も特別綺麗だ」


 アキラがリリーの頬にキスをすると、リリーの強張った顔が崩れて可愛く笑った。



 正式なダンスは手袋をするのだが、今日は練習ということもあって親しい2人は無しで来た。

 そのお陰でアキラはリリーの心境に気付けたので、付けないという判断をしたシリイに改めて感心した。


「俺がいるから大丈夫」


 気付けていなかったら、アキラがこうしてリリーに声を掛けることもできなかったから。




 後日、臨時ボーナスとしてシリイには身に覚えのない報奨金が出ることになる。

 差出人が第一皇子殿下なので、シリイは喜んで受け取った。


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