107…ユウと。
「ユウもそろそろ来るんじゃないか?」
アキラがやっとリリーから離れ、まだ膝に乗せたまま話をしている時、扉が開いた。
ユウが入って来て、早速アキラを見据えた。
目で、リリーを下ろせと訴えているが、アキラは気付かないふりをして話し始めた。
「本当に危ない奴だったらしいぞ」
先程リリーから聞いた監禁の話を、アキラがし始めてしまった。
リリーが気不味そうに、アキラの膝に座ったまま小さくなっている。
ユウは青褪めなら、リリーのあちこちを確認するように触りながら見回した。
「本当に、何もなくて、良かった、本当に」
ユウはアキラとリリーの隣に座り、リリーの膝に項垂れたので、リリーは恐る恐るユウの頭を撫でた。
「あと、リリが祝福を受けたらしい」
「祝福??」
初めて聞く言葉に、ユウは顔を上げると首を傾げた。
結局のところ、どんな物なのかリリーも聞いていないのでわからないが、名前からして悪い物ではなさそうだし、様子見でいこうということになった。
アキラやユウが聞いたところで、聖神が教えてくれるかどうかもわからない。
「マーキングって何なんだ。これは綺麗でリリに合ってるけど、彼奴等のだと思うと気に入らないな」
ユウが苛つきながら、リリーの額を触った。
「綺麗なんだけど……目立つかしら?」
ユウは穏やかに首を振って、リリーを見ている。
「で、聖神と魔神に、挨拶といってキスされたというね。あと、タイムもだ」
リリーが言い難いなと思っていた件の報告を、アキラが軽くさっさと済ましてくれたようだ。
「は?!」
突然の報告にユウが驚いている間に、アキラはそっとリリーをソファに座らせ、そっと立ち上がった。
「もう、キスは許してくれ。じゃあな!」
アキラはそう言うだけ言って、サッと消えていった。
「てことは、アキラもしたんだな……」
リリーが目覚めた事をご機嫌な聖神から聞いたので、急いで来たユウ。
着いたらアキラがリリーを膝に乗せて座っているし、アキラは言う事言ってさっさと消えるし、内容が内容だし……。
ユウは溜息をついた。
だから聖神機嫌が良かったのか。
去り際の聖神の笑顔が浮かんできて、ユウは何だか非常に悔しくなってきた。
舌打ちを我慢して深呼吸をした後に、ユウはリリーの方を改めて向いた。
「改めて……リリ、遅くなってごめん。目が覚めて良かった」
ユウはリリーの手を握った。
「体調は?」
「ありがとう。少しゆっくりしか動けないけど、大丈夫よ。ユウも元気そうで良かった。蹴られた所は?」
「ああ、もう何とも」
ユウがそう言った後に、リリーがしょんぼりし始め、ユウの服を掴んだ。
「私は、ユウが他の人にキスされたら本当に嫌だわ」
「それは大丈夫だ。背が高いお陰でその心配も無ければ、そもそもリリ以外の女性と会話をしない」
噂では聞いたことがあったけれど、初めてユウ本人から聞き、リリーはなかなかの衝撃を受けている。
「そ、それはそれで心配だけれど……」
でも、リリーは内心少し喜んでいる自分に気付いてしまった。
「あ、お父様に相談し」
「っダメだ!! それは本当にダメなやつだ。広大な土地が焦土になる」
絶対にオウカ公爵に相談しないようにと、ユウはリリーに念押しした。
「俺がリリと四六時中一緒に居るわけにもいかないし、彼奴等を完全に止めることは、残念ながら困難だ」
溜息をつきながらユウはそう言うと、少し考えた後、リリーに跪いた。
「リリ、毎日、いや、できる限りで良いんだ、その日最初に会った時に、好きだと言ってキスしてくれないか?」
「……それで良いの?」
跪いてくれているユウを、リリーは不思議そうに見ている。
「リリからのキスは、俺だけの物にしたい」
リリーは胸が高鳴るのを感じて、照れくさそうに頷いた。
「だからこれからも、他の人にはリリーからはしないで、ほしい」
我儘を言いながら恥ずかしくなって、ユウは俯きがちになった。
そんなユウが可愛く見えて、愛おしくて、リリーはユウを抱きしめた。
「ユウ、大好きよ」
リリーは嬉しそうに笑った後、ユウの唇にそっと自分の唇を重ねた。




