106…アキラと、
オウカ公爵達が去ったあと、リリーが自室で引き続きゆっくり過ごしていたら、扉が開く音がした。
「リリ?」
アキラが扉から寝台を見たらリリーが居ないので、焦っている。
「アキラ!」
リリはソファから立ち上がって、ゆっくりアキラの方へ向かった。
「もう起き上がって良いのか?」
アキラは駆け寄って、リリーを抱きかかえてソファに向かった。
そして、リリーを抱きかかえたままソファに座った。
「アキラ、腕はもう大丈夫?」
聖神が治したと聞いていたが、どう治したのか知らないので、リリーはずっと心配していたのだ。
「見てみる?綺麗に何にもないんだ」
アキラは腕まくりして、斬られたはずの場所を見せた。
「え、どこ??」
全く傷が無いので、リリーは驚いてアキラの腕をペタペタ触っている。
「リリ、あまり触られると……」
アキラは腕を仕舞って、目を閉じて深呼吸した。
「リリが無事で良かった」
アキラはリリーを抱きしめた。
「本当に、リリが目の前から居なくなった時は気が狂いそうだった」
アキラの腕に包まれて、リリーは寄り掛かりながら目を閉じて聞いている。
昔からくっつくことが多かったアキラは、いつになってもリリーの落ち着く場所のままだ。
「リリーに何かあったら本当に自分を許せなかった」
リリーがアキラの腕から顔を出して、ふんわり笑った。
「皆のお陰で、何もなかったわ。無事でしょう? 手も足もあるわ」
「は?!」
リリーはしまったという顔をして目を逸らしたが、もう遅い。
アキラに問い詰められるがままに、竜神に監禁されて逆鱗に触れたらどうなったかをリリーは説明した。
「本当に、何もなくて、良かっ、た」
アキラは顔面蒼白で長い溜息をつきながら、リリーを強く抱きしめた。
「そんな奴、何で逃がしたんだ」
リリーは申し訳なさそうに、苦笑いするしかない。
「……キスは? されなかったか?」
「へ?! そ、そそそれは、された、わね」
リリーが動揺しながら答えるのを、アキラは面白くなさそうに聞いている。
「それ以上は?」
「それ以上って、何??」
リリーは本当に分からないのか、首を傾げて聞いている。その反応だけで無かったことは分かったのだが。
「え、いやいや、何でもない」
「何??」
アキラは誤魔化すように、リリーに噛み付くようにキスをした。
「ねえアキラ、何故キスをするの?」
リリーがずっと聞きたかったことを、ついにアキラに言えた。
不意打ちのリリーの発言に、アキラは軽くパニックだ。
この流れで気持ちを伝える心の準備なんて1ミリもできていない。
「え?! いや、竜神にされたって聞いたし、リリが拒否しないからつい」
「つい、するものなの?」
「へ?! 何か今日はなかなか食い付いてくるけど、どうした?!」
こんなにリリーがグイグイ聞いてくるのは珍しいので、アキラはあたふたしている。
「さっきから、皆にキスされて。どうしてなのかしらって。無事だったから喜んでくれているのかと思ったんだけど。それでするものなのかしら、と不思議に思って」
アキラがものすごい顔をしている。
「誰がしたか聞いても?」
「え、聖神でしょ、魔神に、タイム、ね」
アキラの目が据わっていくので、リリーは躊躇いながら答えた。
そして祝福についても説明をした。
「リリ、淑女はどうした」
それは本当にリリーも思っていることなのだが……
「皆すごいの。気付いたらされてるの。差し支えない拒否の仕方もわからないし、本当に私はどうしたら良いかしら」
リリーはアキラに真剣に聞いている。
きっと差し支えない拒否のやり方を聞いているのだろうけれど。
アキラは昔から距離感バグで接していたことを少し後悔した。
しかし、警戒され過ぎて自分もできなくなってしまうのも困るし、拒否されたら立ち直れないしと考えてしまうアキラもアキラだ。
「差し支えない拒否の仕方……リリに拒否されたら、俺は悲し過ぎる」
アキラがそう言ったので、リリーは困った顔して申し訳なさそうにした。
「確かに、リリが無事に帰ってきて皆気持ちが昂っているんだろうけど……」
後で釘を差しておかないとと、アキラは自分のことを棚に上げて考えながら、自分の腕の中のリリーを見た。
「申し訳ないけど、できれば、させて欲しい」
アキラはそう言って寂しそうに笑って、もう一度リリーにキスをした。
結婚はとりあえずは諦めてやろうと頑張って思っているんだから、これくらいは許してほしい。
ユウにそう思いながら。
アキラはリリーからなかなか離れられなかった。




