104…危機も様々で
『あら! 起きたみたいよ?』
リリーの寝台に聖神が腰掛けており、その横から魔神が覗いた。
「私……あ!」
自分がまた倒れてしまった事を思い出して、リリーは起き上がってから聖神と魔神にまとめて抱きついた。
「ありがとう。2人が無事で本当に良かったわ」
聖神も魔神もリリーを抱きしめた。
リリーの背中で、手で小競り合いをしながら。
『これで、記憶持ちの繰返しの危機はなくなったはずよ。竜神はしばらく神になれないわ』
『リリ、よくやったな』
頭をワシワシしながら魔神が褒めてくれたので、リリーはパクツを思い出しながら何だか嬉しくなった。
『最後こいつ本当に使えなかったわよねぇ』
聖神が指差しながら小馬鹿にしてくるので、魔神は聖神の指を払いながら睨んでいる。
『俺が移動させたからこそ、だろーがよ』
聖神と魔神のやりとりを、リリーは幸せそうににこにこ聞いている。
そんなリリーに視線を移すと、聖神は目を大きくして、リリーの額に手を当て、全開にして食い入るように見た。
『やだっ!リリってば、祝福を受けてるわ』
聖神の叫びのような指摘を受け、リリーは分からず首を傾げた。
リリーの額の中央に何やらキラキラした小さな粒が付いている。
魔神がゴシゴシ取ろうとしているが、取れない。
舌打ちをしながら、祝福と呼ばれるそれを見ている。
『取れるわけないでしょ』と突っ込む聖神を睨みながら、魔神はリリーの額にキスをした。
『あークソッ。祝福なんて忘れてたな。アイツに先を越されたのが許せねーな』
すると、リリーの額にキラキラした粒が1つ増えた。
それを確認して、魔神はしてやったり顔で聖神を見た。
勿論、聖神は酷い顔で怒り始めた。
『何やってんのよ?!私が次にしたかったのに!!』
聖神も同じ様にリリーの額にキスをして、粒は3つになった。
『あのクソガキ、最後の笑みはこういう事だったのね。最後の最後に残った神力でやりやがったわ』
ぶつぶつと呟きながら、聖神はイライラしている。
「祝福って、何かしら??」
先程から聖神と魔神に額にキスをされて、よく分からないといった顔をしているリリーの額を、聖神は指で優しく突いた。
『早い話が、神同士のマーキングよ。それ、取れないわよ』
「ま、マーキング……」
リリーは額を触りながら呟いた。
小さな綺麗な粒が、仲良く小さな三角を作って輝いている。
『まぁ、あれだ、神が悠久の時の中でできる唯一だ。もう俺等はできねーな』
「そんな、大切な物を?! 大丈夫かしら??」
聖神と魔神を見て心配をした後、最後に見た嬉しそうに笑っていた幼子の竜神の顔が、リリーの脳裏に現れた。
『ねえ、リリ。今あいつを思い出してるでしょう?私達が目の前にいるのに』
聖神は面白くなさそうにリリーに詰め寄った。
「え、ええ。忘れられなくなってしまったわ、と思って」
すると、聖神が魔神を押し退けて、突然リリーの唇を舐めるようにキスをした。
目を見開いて驚くリリーを余所に、聖神は満足そうに唇を離し、真顔で方便を言う。
『神のマーキング相手への挨拶よ。そうよねえ? リリは知らないの?』
あまりにも真顔で言うので、リリーはどうしたら良いかわからない。
「えっ、そうなの? そんな事、聞いたことが、ないから、知らない、もの」
本当かどうか確かめるように、リリーは魔神を見た。
『あー、1つ賢くなれたな』
魔神は目を逸らして答え、笑いを堪えながら聖神を押し退けた。そして寝台に座り込みリリーに烈しくキスをし始めた。
驚いたリリーが手で魔神の肩をバンバン叩いているのに、魔神はリリーが逃げられないようにリリーの後に手を回して、なかなか止めようとしない。
見かねた聖神が魔神を引き離し、次はリリーの頬にキスをした。
『これからも、よろしくねぇ』
乱れた呼吸を整えながら、とんでもない事になったのかもしれないと、リリーは呆然としていた。




