102…奏功する
『私の本来の能力は変わっていて。起こすには少し条件があるんだけど』
防戦一方だが、なかなかユウに竜神の攻撃が届かない。
それに痺れを切らしたのか、竜神はユウから距離を置いてイライラしながら話始めた。
『100年以上経たないと使えない、つまらない能力なんだけどね。もう使えるんだよ』
『そしてほら、あそこ、今にも底が抜けそうだろ?すべての土地を意のままに出来る』
竜神が指し示す方に、ユウが視線だけ移して青褪めた。
リリーと魔神の周りにヒビが入っているのが見えたのだ。
『神力の少なくなったお前なんて、一緒に落としてやるよ』
竜神は愉快そうに魔神に話かけている。
そして、ユウの方をゆっくり向いて笑った。
『剣を捨てろ。そうすれば何も起こらない。国も、リリーも無事だ。捨てなければすぐ皆に逝ってもらおう。私はまた待てば良い』
ユウに剣を向けながら、竜神は楽しそうだ。
『詰んだな? どうする?』
イラッとしながらユウは鼻で笑った。
「見くびるな。悩む事でもないだろ、答えは決まっている……アキラ! 来るなよ」
ユウは迷いなく聖剣を投げ捨てた。
「ユウ!! ……?!」
アキラが聖神の方へ振り向いた。移動出来ないように、聖神が阻害をしているのだ。
『行ったらダメ。機会を待ちなさい。今は死に損よ』
聖神は竜神を睨みながら、遠目に様子を見ている。
『ははっ! 少しでも迷ったら全てを終わらせてやろうと思ったのに。嫉妬するくらい美しい愛だね。でも、それもここで終わりだ』
竜神はこれ以上ないくらい嬉しそうに笑いながら、ユウを強く蹴り倒した。
『リリーに見せられないのが残念だけど、君が死んだと聞いてどう反応するかな』
咳込み苦しそうにしながら睨むユウに、竜神が力を込めて剣を振り下ろす。
ガンッ
ぶつかる金属音と共に、シャランと何かの綺麗な音が聞こえた。
ユウが目を開けると、そこに突然現れたリリーの後姿が目に入った。
竜神の攻撃を神杖で受け止めている。
◇
「ありがとう。助けてくれて」
魔神は目を見開いた。
ぐったりしたリリーを抱きしめて座り込んだ直後に、リリーに話し掛けられたのだ。
「返事はしないで。そのまま動かず聞いて。もう、私は大丈夫よ」
リリーはそっと魔神に囁いた。
「元気だと、竜神に気力を奪われてしまうでしよう? 最後は少し取られちゃって危ないところだったけど、少しずつ弱っているように見せたくて、もしかしたらと思って神杖に移してみたの」
最初はなかなか回復しないことを不思議に思っていたリリーだが、竜神の気力を吸収する能力を思い出し、魔力と同じ様に神杖に移せるかを試してみたら上手くいったのだ。
今は神杖から取り戻し、リリーはかなり回復できた。
「魔神と聖神のお陰で、助かったわ。本当に本当にありがとう」
魔神は切ない顔をして、視線を落とさずリリーをギュッと抱きしめた。
そしてリリーは「お願いがあるの」と続けた。
「きっと、ユウに執拗に向かうはずだわ。それは、私にユウが逝く瞬間を見せたいはずだから」
うんざりした顔をして魔神は溜息をついた。
『クソ悪趣味だな』
「だから、その瞬間まで、私を我慢させて欲しいの。きっと助けに出て行きたくなるから」
リリーは神杖を握りなおした。
『わかった。その時になったら、そこへ移動させたら良いんだな。まぁ他の奴等はあいつがどうにかするだろ』
「聖神が? なら大丈夫ね……じゃあ、お願いしても良いかしら?」
魔神はリリーの口にそっと2度目のキスをした。
『これを対価でやってやる』
「あ、ありが、とう……?」
魔神はリリーを隠すように抱きしめ、対竜神を見始めたのだ。
「ユウ!! 平気?!」
リリーは神杖で何とか竜神を防いでいるけれど、力で押し負けそうなのを何とか踏ん張っている。
「助かった。何とか」
咳き込みながら、ユウは答えた。
『ほら、行きなさいっ』
聖神はアキラをリリーとユウの側へ移動するよう促した。
呆気に取られながらもアキラはその場から消え、リリーとアキラの側に現れた。
『ユウ!! 何ぼやっとしてんの?! 剣を拾いなさい!!』
聖神に初めて名前で呼ばれたユウは目を見開き、戸惑う間もなく急いで剣を取った。
そして、それを確認した魔神が叫ぶ。
『神杖に同時に打ち込め!!!!』
アキラとユウは見合わせて、竜神に向かって同時に神杖に打ち込んだ。
ガンッ
シャラン
神杖の飾りが美しく鳴り……




