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101…苦戦の裏側で

 竜神は興味なさそうに攻撃をしながら話かける。


『君は、フィズガの脳になる子だよね』


 タイムが斬られた後はアキラが的になっていて、全く眼中に無い態度に、アキラは苛つきながらも攻撃を受けるだけで精一杯だ。


「そんな高評価を受けたことは無いですねっ。人違いでは?」


 アキラは軽く反応した後、竜神はニヤリと笑って言った。



『オウカ公爵が言ってたからね』



「……?!」



 一瞬アキラが止まってしまった。その隙を逃さず、竜神はやはり笑ってアキラの左腕を斬りつけた。


『本当だよ、そう言ってた』



 竜神は、もう用は無いと言わんばかりに手をひらひら振って即座にユウの方へと向かっていく。



 そんな光景を、魔神は平然とリリーをしっかり抱きしめて離さず見ている。



『君は、一番目障りだったんだ。リリーの婚約者なんだろう?』


 ユウは睨むばかりで返事をしない。剣を握る手が緊張で定まらない。

 それを素知らぬ顔で、剣のような物を片手で触りながら竜神は話を続けていく。


『他国のお姫様とか、色々と縁談はきてるじゃないか。そっちと婚約する方が国としてかなり利益になって良いと思うけど』



「お前には関係ないだろ」


『大アリだよ。皇太子として、君は我儘過ぎないか? リリーは私と結婚して良い事だらけだと思うんだけど』



 竜神は今日一番の力で剣を振った。


ガンッ


 ユウは辛うじて受けたが、後方へ飛ばされてしまった。

 竜神はユウを弄ぶかの様に攻撃をしかけるが、辛うじて受けている。




『良い〜? お前は特に力があるというわけではないの、ひ弱なのよ』


 学園の練習場で、聖神が腕組みしながら楽しそうに話しているのを、ユウは不貞腐れながら聞いている。


「言い直さなくても良いだろ」


『これから毎日筋トレは当たり前、そしてそれを補うために防御魔法を剣に施しながら戦いなさい。そうすれば力負けしたとしても、そう簡単に剣は折れないわよ』


 聖神に言われた通り、ユウはまず短剣に防御魔法を試してみる。


「こんな小さくて細い物にかけるのは……難しいな」


 いきなり難易度の高い短剣から、ユウは練習させられている。

 少しずつ難易度を高くしていくような優しさを、聖神は持ち合わせていない。


『そうでしょう? 繊細な魔力制御が必要よ。お前はクソ真面目できちっとしてるから、きっと向いているわ』


「全く褒められている気がしない」


 真顔でユウが抗議すると、聖神は嬉しそうに笑っている。


『褒めてないもの』


 習得したらいつか斬ってやると心で思いながら、ユウは真面目に集中し始めた。




 釣書を見て以来、聖神はユウを対竜神用に鍛えてきた。

 聖神が考える竜神の性格上、ユウ以外は命は取られず済むはずで、それはどうにかなる。


 狙われているリリーは勿論だが、その相手であるユウは排除対象になるはずで、最も危険だ。




 聖神の思惑どおりユウはそれなりにやり合えている。ただ、防戦一方だけれど。


『瞬殺よりましね。時間稼ぎにはなるかしら』


 聖神はタイムの側でユウの対竜神を眺めている。

 タイムの血溜まりが広範囲に広がっていて危険な状態の様子を、聖神が慌てることなく眺めてタイムの背に手を当てた。


『ちょっと危なかったわねぇ。ま、あとは自然治癒で治しなさい。私は優しくないの。特にお前は……大丈夫でしょ』


 タイムの血が止まって呼吸しているのを確認すると、聖神はアキラの方へ向った。




「タイムは……?」


 苦痛に歪む表情でアキラがタイムの心配をしていると、聖神は呆れたような感心したような溜息をついた。


『へぇ、意識があるのね。左腕がほとんど繋がってない人間がどうして人の心配してんのよ』


 座っているアキラの隣に座り込み、聖神は繋がっているのかどうかわからない左腕に手で触れた。


『ちょーっと痛いわよ。歯食い縛んなさい。意識飛んでなくて残念だったわねぇ』


 その瞬間、アキラに経験したことのない激痛が走った。


「いーーーっ!!!! 何、をっ!!!!」


 アキラがひっくり返りのたうち回るのを、聖剣が愉快そうに笑いながら見ている。

 アキラは息も絶え絶え涙目になりながら聖神を睨むと、聖神がフンッとアキラの左腕を指差してくるので視線を移した。


「えっ?? 傷口が、無い……動く」


『貸しよ。いつか返してもらうからね』


 アキラは畏まってお辞儀をした。


「助かった。ありがとう……ぐっ痛っ」


 傷口のあった場所の奥深くがズキズキ痛むので、アキラは左手を庇った。


『あ、でも完全に治してないから痛むと思うわよ。あとは自然治癒で頑張りなさぁい』


 聖神はにこりとも笑わず、手を振った。


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