98…名乗り出て、
タツァックの昔訪れた湖は、周りにも湖が3つあり、秘密裏にしているのもあって思った以上に捜査に時間がかかっている。
どれも平地にあり、近くに洞窟の様なものが全く見当たらず、それも難航を手伝っているようだ。
「あの、俺を連れて行って下さい。今は確実に、この中でも俺が1番感知能力高いはずなんで。用があって帰省とかで学園は休めば良いす」
魔神が最も感知に優れていると思われていたが、まさかのタイムの発言に沈黙が流れた。
今は桜花宮で毎日行っている夜の報告会を前に、皇城の会議で遅くなっているオウカ公爵とパクツを除いた面々、アキラとユウとタイム、聖神、魔神で話をしているところだ。
「魔神さん、執務室からオウカ公爵と俺の父のウィステリア侯爵がここに向かおうとしてるの、分かります?」
『範囲内にいねーな』
「前までもそれなりに分かってたんすけど、ここ2〜3日で急に結構な範囲ではっきりと分かるようになってます」
『どのくらいかしら?』
聖神は興味深そうにしている。
「俺の知っている人なら、妨害とかされてても、その人の意識が何に向いてるとか、感情の起伏とか、そういうのがどの辺りで起こってるか分かるんすよ。広さはこの皇城くらいなら」
タイムが他者に感知能力を詳しく教えるのは実は初めてで、少し緊張している。
『範囲も感度も俺より上だな』
魔神は素直に驚きながら言った。
『感知能力のある人間なんて、私は今まで会ったことなんて無い……こと、も……ないわ』
突然、聖神は何かを思い出し、驚愕の顔で魔神に振返った。
『そーかもしれねーよな』
『親子で感知能力だから……そうとしか思えないわ』
ぶつぶつと聖神が呟きながら何やら考え事をしている。
「何の話すか?」
タイムが首を傾げながら聞いてくるのを、聖神はじっと見た。
『……何でもないわよ?』
聖神はにっこりと笑ってから、タイムの額に強めにデコピンをした。
タイムがかなり痛がって「何なんすか?!」と抗議している姿を見て、聖神は満足そうにしている。
『てめーなぁ』
呆れている魔神に、聖神は指を差して睨んだ。
『何よ、確実ではないからタツァックにはデコピンしちゃダメよ!』
『んな事しねーわ』
そんなやり取りをしていると、扉がノックされてオウカ公爵とウィステリア侯爵のパクツが入ってきた。
タイムと魔神以外が驚いて注目してくるので、オウカ公爵とパクツは不思議そうに首を傾げた。
「お2人が執務室から出るあたりから、来ることを俺が当てたんで」
パクツは驚くこともなく「へぇ」と聞いている。
「俺と魔神さんで行けば、見付けられないすかね? 場所が分かれば、すぐ皆さんを呼べば良いと思うんすけど」
デコピンされた場所を触りながら、タイムは自分が行くことを提案した。
『私はそれで良いと思うわよ。何かある前に魔神がタイムを戻すことできるし』
パクツはタイムの頭をワシワシしながら、タイムがリリーを諦めきれないと言ってきたのを、思い出していた。
"諦めて適当に結婚して、も考えたんだけど、どうしても無理でした"
「お前には、行くの一択しか無いんだろ?」
タイムは真剣に頷いた。
「必ず危険は回避しろ。見つけるだけだ。見つけたら即帰って来い。それを守れるなら行って良い」
もう一度、タイムは真剣に頷いてから、魔神に向かった。
「も」
タイムが「もう今から行きましょう」と話始める前に、魔神はタイムを連れて消えていった。
『も? タイムは何言おうとしたのかしら?』
あいつはいつも最後まで喋らせてもらえねぇな……
パクツは吹き出しそうになったのを手で押さえて何とか堪え、咳払いをした。
皇子2人が全く喋らず、ハイかイイエの返事しかしなくなって、そろそろ1ヶ月だ。
リリーが連れ去られて、1ヶ月が経とうとしている。
参考→58…剣術大会②道連れと決意と、閑話休題12〜ユウは拗ねている




