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96…糸を辿る様に

ガンッ


 アキラに即呼び出された魔神が、リリーの防御魔法だけでなく竜神の結界付きの扉を怒り任せに壊し開けた。


 もう部屋はもぬけの殻だった。



『……居ないわ』



 珍しく口数が少なくなった聖神を尻目に、魔神がその辺の椅子を蹴り上げて、机にも備品にも当たり散らし大惨事になっている。



 パクツとタイムも走ってやって来たが、何がどうなっているのか聞ける状況でもない。


 リリーと他国の皇太子が見当たらない事から、最悪な状況だろう事を把握した。


「嘘だろ……」


 青褪めたタイムの横で、パクツは気丈に振舞いオウカ公爵がそろそろ来ることを皆に伝えた。



 すぐオウカ公爵がやって来た。

 一連の過程を聞いた途端、青褪めながらも、こうなる事も予想していたかのように落ち着いて対応をし始めた。


「すまないが、パクツは残って。他はすぐに妻のもとへ行って事情を説明して下さい。何か役に立つはずだ。私はここに残って諸々の始末をします。早く! さあ!!」


 促されるまま、魔神の合図で5人で消えていった。



「最悪なシナリオか?」


「いや、剣術大会終わってリリの命があるから、最悪ではない。最悪に近いけどね」




「!!!!!!」


 驚いたオウカ公爵夫人は、持っていたカップを落として目を大きくしている。

 初めましてもいるけれど、全員知っている顔だ。


 オウカ公爵から、もしもの時について聞かされていたので、その事態が起こってしまったのだと理解してしまい、青褪めた。



 侍女たちが片付けているのを「後で良いわ」と部屋から退去させ、オウカ公爵夫人は立ち上がり、突然の来訪者達にリリーの件の詳細を聞いた後、震える手を握りしめながら少し考えて話はじめた。



「きっとリリがすぐ何かされることは無いはずです」



 オウカ公爵夫人はキッパリと言い切った。


『お前は一体……何故わかるのかしら?』


 聖神がそう言うのを聞き、オウカ公爵夫人はカーテシーをして挨拶をした。


「はじめまして。わたくしはリリー・カノ・オウカの母です。リリがお腹の中に居た時だけですが、記憶を拝見致しました。はじめましてですが、一方的にお二人を存じ上げております」


 その場に居合わせた全員が、驚いて何も言えなくなった。


 その様子を見て、オウカ公爵夫人は呼吸を整えて、目を伏せがちに早口で説明を始めた。


「10代の娘は子どもっぽい部分がまだあります。その年代の娘の話し方や情事における反応、とりわけ命のやり取りの際のそれに、竜神は面白味を感じないようです……そのため、毎回必ず20代になるまで待っています」



 聖神も魔神も信じられないという顔をして聞いている。しかし、確かに竜神がカノに最初に接触しに来たのは25才だった。


『……最低ね、本当吐き気がするわ』


「なので、猶予があるとしたら2年足らずです」


 オウカ公爵夫人は言いながら、鳥肌が立ち始めたのを感じた。そんな時間をまともに待つ自信なんてない。


 今までの娘たちの前例からも、リリーがまともでいられる保証もない。しかし、それはどうしても言葉にできなかった。


 それでも、オウカ公爵夫人は今は話をしなければと、自分よりもリリーの助けになってくれるであろう面々に情報を共有しなければと、その為に自分を律して動いている。


「気に入ったら10代で連れ去り、いつも決まった場所で、でも見つけ難い場所で……監禁します」


 聞いている者の全員の顔色が悪くなった。


「よく連れ去った時に潜伏していたのは、どこかの湖の近くの洞窟の様な何かでしたが、何処なのか……私には、全く、見当がつきません」


 オウカ公爵夫人は涙声になりながら、最後まで話し終わることが出来た。

 本当はもう気が狂いそうで、居ても立っても居られない。


 沈黙がその場を包んだ。




「……湖!! 兄上、タツァックを今すぐ呼んできてくれ」


 先日の話を思い出したユウは、タツァック召喚をお願いした。



「はっ?! え……っと?」


 何も言われず一瞬で連れてこられたタツァックは動揺したが、瞬時に周りを見始めた。

 母親の青褪めた様子や集っているメンバーの表情、何よりも大切な妹のリリーが見当たらない……

 タツァックは事が最悪な方へと進んでしまったんだと理解した。


「何を話せば良い?!」


 これだけの面子で何故リリーがと、怒りにも焦りにも似た感情を抑えながら、タツァックは周りに聞いた。

 自分が呼ばれたという事は、何か答えなければならない事があるのだろうと。


 それとほぼ同時に、ユウが冷静に質問をした。


「リリと幼い頃に行った湖は何処だ?」


 きっと、そこに在るだろう何かにリリーがいる。



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