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7.お爺様とお婆様

馬車を降りると、ラベンロッド伯爵家の使用人たちが全員一列に並んでモリリナ達を迎えてくれる。


その真ん中で満面の笑みで4人を迎えるのは、先代ラベンロッド伯爵夫妻、ダグラスとミシェルだ。


「良く帰ってきたな! ミシェル見ろ! 孫娘達がまた大きくなったぞ!」


大柄なダグラスはあっという間にアマリリスとモリリナを片手で抱き上げ自分の肩にのせてしまう。


「ほんと、少し会わないだけであっという間に大きくなるわねぇ」


ダグラスの肩にのせられバランスが取れず、怯えて顔が引きつるアマリリス。

モリリナは慣れた様子でダグラスの頭に遠慮なく掴まって楽しそうにしていた。


「あら、アマリリスは去年まではお祖父様の肩に乗るのが大好きだったのに」


怯えるアマリリスに気付き、祖母ミシェルがアマリリスに手を差し出す。


「あなた。もうこの子達も来年は8歳になるわ。肩にのせるのも終わりにした方がいいみたいよ。さ、お祖母様の所においでアマリリス」


アマリリスは必死の形相でミシェルの腕に抱きとられる。


「おや。そうか。寂しいのぅ」


しょんぼりするダグラスの禿げ頭をヨシヨシと撫でるモリリナだった。


「さぁ、城に入りましょう!」


祖父母と孫娘達の再会を見ていたランスロッド伯爵が声をかけた。


「おお、そうだな! 疲れたろう? 部屋で少し休むか?」


ダグラスは肩にのせたモリリナにニコニコと話しかけながら城の中に入る。


アマリリスはミシェルから下ろしてもらい、城を物珍し気にキョロキョロ眺めながら、


「まったく。爺さん、ゴリラかっつうの。怖いに決まってんだろ。てか、城。本物の城だわ。すごいんだけどー!」


とブツブツ言ってた。




その日は疲れているだろうからと、各自が部屋で軽く夕食を取ることになった。

モリリナはマリアにお風呂に入れてもらった後は部屋着のまま部屋でゴロゴロしていた。


マリアも疲れているだろうから、夕食は城のメイドが運んでくれるし、食べて寝るだけなのでもういいと下がらせたので部屋に1人だ。

外はまだ明るくて、食事が来るのにもまだ早い。


ちょっとだけ愛馬フライの様子を見に馬房に行こうかなと思い立つ。


部屋着で歩き回ると確実に怒られるので、人目を盗んで見つからないように移動する。

特にダグラスは孫を見つける野生の勘のようなものがあるので要注意なのだ。

人の気配を感じたら隠れることを繰り返し、秘密の抜け道にたどり着く。


城の中には家族しか知らない秘密の抜け道が沢山ある。戦争とか大事な時にはそこから逃げるのだ。


秘密の抜け道は色々な所に繋がっていて、モリリナも全部は把握できていないのだが、馬房の近くの森の木の根元の小さな穴に繋がる道は、こっそりフライに会いに行くときに時々使っていた。


抜け道を抜けて木の根元の穴から顔を出す。


王都に行っていた半年で成長したようで、狭くて通るのにギリギリになっていた穴を無理やり抜けた。


土まみれになってしまった白い部屋着をまじまじと見る。これはこれ以上大きくなったら通れなくなるのではないだろうか。


パタパタと手で払ったら土汚れがますます汚くなってしまった。戻ったら着替えて隠さないとまずいだろう。


「クククク」


「だれっ!」


いきなり後ろから笑い声が聞こえて慌てて振り向く。

物語に出てくる魔法使いのような、黒いローブ身にまとった男がモリリナを見て笑っていた。


父よりかなり上にみえるから40歳くらいだろうか。

ガリガリに痩せていて黒髪に黒目の、背の高い男だった。


「これは失礼。驚かせてしまったか。君はラベンロッドの双子かな?」


「......誰?」


「はじめまして。ジェイコブ=フランだ。ダグラスの友人でね。城の西にある物見の塔に半年ほど前から住まわせてもらっている」


「お祖父様の友達?」


「ああ。古い友だな」


「そうなんだ。わたしはモリリナ。ラベンロッドの双子の妹の方よ」


「モリリナか。ここへは何しに?森の奥から戻ってきたら木の根元からキノコのように女の子が生えてきたから驚いたよ」


「キノコ......わたしの馬に会いに来たの。あの、絶対に内緒にしてほしいの。ここに抜け穴があるのをフランさんに知られた事がお祖父様とお父様にバレたら大変なことになると思うから」


「ああ。城の抜け道か......そうだな。私が知らないほうがいいことだ......よかろう。決して口外しないことをジェイコブ=フランは誓う」


ジェイコブ=フランがそう言うと、彼の胸の所が少し光った。


「もしかして誓約魔法?」


「良く知っているな。そうだ。これで絶対に私からこの秘密が漏れることはない」


「フランさんは魔法使いなの?」


「いや。違う。ただのジェイコブ=フランだ。馬房まで行くのだろう? 途中まで一緒に行こう」



二人で歩きながら話す。


ジェイコブ=フランは世界中をフラフラしながら、友達の家を渡り歩いて生きているのだそうだ。

生まれつき魔力が多くて魔法を使えるので問題ないらしい。


「そうなんだ。......旅をしてるのね。とても素敵な生き方ね。わたしも大きくなったら色々なところに行けるかな」


「どうかな。君は貴族令嬢だ。結婚して家や国を守るのが決められた生き方だ」


「......そうね」


「まぁ、全てを捨てて望めば叶うかもしれないがね」


「うーん。難しいわ。家族が好きだから。フランさんは全てを捨てて旅に出たの?」


「いや。最初から何も持っていなかった」


「えっ! そうなんだ。ごめんなさい」


「ククク。謝らなくていい。欲しいと思ったことが無いので問題ない」


「ふぅん。そっか。じゃあいいのか」


「ああ。問題ない」


馬房が見える所まで来ると、塔に戻るというジェイコブ=フランと別れた。


別れる時に、自分と会ったことは内緒にするようにと言われた。


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