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53.モリリナのお祖母様

「モリリナ!」


アマリリスはサロンのドアを開け、モリリナに向かって一直線に駆け寄ってきた。


セシルがサッと立ち上がり、モリリナを守るようにアマリリスの前に立つ。


「ちょ!! あ? あ......」


アマリリスは本当にモリリナしか見えていなかったようで、いきなり目の前に立ち塞がったセシルに、ぶつかりかけて慌てて止まった。


「あ、セ、セシル様ぁ?」


セシルは答えない。

たぶんだが、嫌いなので普通に無視してるんだろうなとモリリナは思った。


どうしよう。

チラッと父と祖父を見ると、ビックリして固まっていた父が動きだし、慌ててアマリリスをいさめた。


「アマリリス離れなさい。名前を許可なく、そんな風に馴れ馴れしく呼ぶのは失礼だと前にも言っただろう?」


アドリレナ王国は貴族の作法や礼儀など、他国に比べるとだいぶ緩い。


それは王の側近たちが、平民や他種族など身分の低い人間のことも多いからだった。

彼らは貴族の礼儀など知らない。

この国の王は付け焼き刃な礼儀作法よりも、忠誠と敬意、そして高い能力を重んじたのだ。


そのため多少のことなら咎められないが、無礼な態度が許されるわけではない。


アマリリスはあまりにも馴れ馴れしいとモリリナも思う。

今も良く知る友達のようにセシルに話しかけ、上目使いでパチパチと盛んに瞬きをしている。


「アマリリス?」

アマリリスから返事がないので父がもう一度名前を呼んだ。


「セシル様、私に会いに来てくれたんですか? うふ!」


アマリリスは父親を完全に無視してセシルに甘えている。

父と何があったのだろうか。


ふぅ。


父がため息をついて、悲しそうに目を閉じた。

痩せた訳がわかった気がした。



ノックの音がした。


ドアを開けた執事のポアロが、祖母の訪れを告げる。


「お祖母様」


ニコニコして部屋に入ってきたのは祖母ミシェルだ。


「元気そうね」

ミシェルはモリリナを抱き締める。


「セシル・ジマーマン様、ようこそいらっしゃいました」

背筋のピンと伸びた祖母のカーテシーは美しい。


「ああ。ミシェル夫人。お久しぶりです」


「領地ではあまりお話も出来なかったので、また会えるのを楽しみにしてましたの。ゆっくりしていってくださいね」


「ええ。ありがとうございます」


セシルも祖母には丁寧に話している。

アマリリスも気が削がれたのか、大人しくモリリナの隣のソファに座った。


父と祖父母、モリリナとセシルの5人でお茶を飲みながら、ジマーマンでのモリリナの事やルイの立太子の話をする。


父と祖父母がセシルと話をしている横で、アマリリスがモリリナの耳元にコソッと話しかけてきた。


「ねえ。相談があるんだけど2人になれる?」


「セシルと一緒ならいいよ」

モリリナも小さな声で答える。


「はぁ? なんでよ?」


「2人きりじゃなきゃいけない話なの?」


アマリリスが、チッ。と舌打ちする。

たまたまそれがセシル達の話が途切れた瞬間だったので、音は話をしていた4人にも届いた。


4人がモリリナとアマリリスを見た。


「アマリリス? どうしたの?」

祖母がアマリリスに優しく尋ねる。


「お祖母様ぁ。私、モリリナに相談したいことがあって。2人になりたいってお願いしてたの」


「相談? なんの相談かな?」


父がアマリリスに尋ねたが無視されていて、モリリナはいたたまれない気持ちになった。


「ね! モリリナぁ。いいよね? お願ぁい!」


「アマリリス、いつも言ってるだろう。無視はいかんぞ」


「お祖母様ぁ。2人で話したいからモリリナを連れていっていいでしょう?」


なんと祖父も無視されていた。


「こら! アマリリス!」


「ふぇ~ん。お祖父様が怒鳴るぅ。怖ぁい!」


「あなた。大きな声を出してはだめよ」


「む......」


モリリナはなんとなく、このやり取りをいつもしているんだろうなという気がした。


「ほんとバカバカしいな」

セシルがボソッと呟くと、モリリナの手を指を絡ませて握った。


「アマリリス嬢、僕はほんの少しでもモリリナと離れたくないんだ。用があるならここで言って。もし内緒にしなければいけないようなことなら、モリリナを関わらせたくないので却下だ」


セシルはそう言うと、モリリナを見つめニコッとした。モリリナもニコッとする。


「は? なにそれ」

アマリリスがセシルをバカにしたように薄ら笑う。


「アマリリス、わたしもセシルと同じ気持ちよ。話はここでして」


「あ゛ぁ?」

ギロッと睨まれる。


「アマリリス? どうしたの? そんな顔をして」

キョトンとして不思議そうな顔でアマリリスを見ている祖母。


そういえば、こんな人だったなぁとモリリナは思い出す。


ちょっぴり変わっているのだ。

たがモリリナはこの祖母ミシェルに似ていると言われるので複雑である。


「あ~もう。 はぁ。まぁいいわ。ウィル様に会いたいのだけど、忙しいみたいで中々会えないの。それでね、会いに行ったらきっとビックリするだろなぁって! ふふふ。きっとすごく喜ぶと思うんだよぉ。だからモリリナにお城に連れていってほしいの!」






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