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19.幼馴染3人 ①

セシルのモリリナに対する態度が気持ち悪いと、爆笑する二人の王子。

それを睨みつけているセシルに、オロオロするモリリナ。


セシルがモリリナの様子に気付いて、慌てて王子達の目を塞ごうとした。


「モリリナ! 可愛いことしちゃ駄目だ!」


「へ?」


「痛っ! セシルやめろっ!」


乱暴に目を塞ごうとするセシルに暴れて抵抗するルイ王子。


最初はセシルの行動に驚いていたウィル王子が、楽しそうに笑ってルイ王子の後ろに回り込んで彼を羽交い絞めにした。よくわからないが弟が嫌がっているのが面白いようだ。


「兄上までなにを! 悪ふざけはよせ! 放せっ!」


首を激しく振り、セシルの手を避けようとし、手足をジタバタ動かすルイ王子。


暴れて振り回していたルイ王子の後頭部が、後ろで彼を羽交い絞めにして笑っていたウィル王子の鼻を強打し、ジタバタしていた足がセシルの脛に強く当たった。


三人とも悲鳴を上げてうずくまる。


モリリナは何が何だかわからなくて、ぽかんとしていたのだけれど、

床に蹲って苦しんでいる三人を見ていたら笑いそうになってしまった。


王子様達を笑うなんていけない。と、自分の口を押える。

手を離したら吹き出してしまいそうで、唇を噛んで耐えるが、

ふぅーふぅーと鼻から息が漏れる。


その時、後頭部を押さえてうずくまっていたルイ王子が顔を上げ、モリリナと目が合った。


「モリリナが口を隠して笑ってるぞ!」


「ルイ! モリリナを見るなっ!」


裾をまくり、蹴られて赤くなった脛を調べていたセシルがまたルイ王子に掴みかかった。


「こいつ! 兄上! なにか縛るものを!」


「ちょっと待って!」



年上の2人の王子に比べると体の小さいセシルはあっという間に拘束されて床に転がった。


「モリリナ......ごめん。君を守れず......こんな情けない僕を許してほしい。どうか嫌いにならないで!」


部屋にセシルの悲痛な叫びが響く。


「......セシルってこんな変な奴だったっけ?」


呆れたように呟くウィル王子。


「兄上、セシルを刺激するな。まずモリリナは向こうのソファに座って。悪いが、俺達は少し話し合いをするから待っててくれ」


ルイ王子が天井から下がっている紐を引くと、すぐに侍女が来てお茶の支度をしてくれた。

さすが王城の侍女で、縛られて床に転がるセシルにも気づいただろうが何の反応もしなかった。


モリリナは王宮の美味しいお菓子と、香りの良いとても美味しいお茶で癒され、少し落ち着く。


離れているので何を話してるのか聞こえなかったが、話し合いはしばらくかかった。

やっと終わって三人がこちらに戻って来た時、王子達はとても疲れているように見えた。


「モリリナ、待たせてごめんね。疲れたでしょう? 帰ろう」


モリリナの手を取り、連れて帰ろうとするセシルに待ったがかかる。


「待て。話し合っただろう? 俺達がモリリナに友情以外の気持ちを持つ事は無いんだ。だからいちいち過剰な反応をするな」


「そうだよ。友達の婚約者に手を出すわけないだろう」


「……わかってるよ。わかってるけど。モリリナにルイが笑いかけただろ? その後モリリナが可愛くモジモジしてたから......カッとなって。父上にはそのうち少しは落ち着くって言われてるけど」


「しょうがない奴だな。それに笑いかけたんじゃなく、笑ったんだ。そこから間違ってるからな」


「ほんとだよ。それにモリリナは別に可愛くモジモジしてなかったよ」


「......悪かったよ」


「はぁ。まずちょっと我慢して黙ってろ。俺が話すから。えーと。今更だが改めましてモリリナ嬢、俺が第二王子ルイドリフ・アドリレナだ。わかっているだろうがギアデロに共に行くのは俺だ。よろしく頼む。これからはルイと呼ぶことを許す」


「は、はい! ルイ殿下よろしくお願いします!」


「僕は第一王子のウィルドリフ・アドリレナ。ウィルでいいよ」


「ウィル殿下よろしくお願いします!」


「セシル、睨むな」


「……」


モリリナがどちらかと話すと、セシルがその相手をいちいち睨むので何となく気まずい。


「取りあえずセシルは無視しよう。モリリナ、今回の旅は遊びではない。俺にとっては一生をかけた大切なことだ。そして、身分を伏せての旅になる。貴族令嬢としての生活は出来ないがそれはわかっているか?」


「はい。理解しています。自分のことは自分でしたいと思っています。殿下やセシルの足を引っ張らないように頑張ります! よろしくお願いします!」


「うん。それと、セシルからモリリナに侍女を1人付けたいと言われてるんだが、俺達は馬で行くんだぞ。その侍女は大丈夫なのか?」


「セシル?」


「マリアがいた方がモリリナが快適に過ごせると思って」


「ありがとうセシル。殿下、マリアはうちの馬丁の娘なので大抵の馬は乗りこなせます」


「ふむ。では許そう」


「ありがとうございます!」


「よかったねモリリナ。マリアが行けなかったら、僕が世話してあげたいと思っていたからちょっと残念だけど、君が嬉しそうだから僕も嬉しいよ」


ルイ王子はセシルをちょっと気持ち悪そうに見て、


「さっきの逆上ぶりもあれだったし、令嬢の面倒を見るとか。お前、そんな気持ち悪い事ばかり言ってるとそのうち嫌われるんじゃないか?」


「そうなのモリリナ?! 」


「えっ? ううん。セシルは私の事を好きでいてくれてるんだなって嬉しいわ」


感動したようにモリリナを見つめるセシルに2人の王子は呆れて顔を見合わせ、肩をすくめた。


「心底気持ち悪い。そういうのは2人の時にしてくれ」


「同感。まあ、少し座ろうよ。喉も乾いたしね」


ウィル王子が紐を引き、侍女を呼んだ。


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