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17.これからのこと

誤字報告ありがとうございます!

「父上!!」


セシルはモリリナの手を握ったままジマーマン侯爵グレンに駆け寄った。


グレンは子供達をチラッと見ると、振り回していた巨大な槍を下ろす。


「どうした」


「父上、オフシーズンをモリリナと一緒に過ごすことにしました。ラベンロッド伯爵に手紙を出して下さい」


「急だな。モリリナ嬢はそれでいいのか?」


「は、はいっ! わたしもセシルと一緒に居たいです」


「そうか。まぁ、俺は別に構わないが。だがセシル、お前はルイ様とギアデロに行くだろう?」


「あ、忘れてた。じゃあモリリナも一緒に連れて行きます。無理なら僕もギアデロに行くのは止めます」


「行くのを止めるのはルイ様が認めんだろうな。王にモリリナ嬢の同伴の許可をもらうことにしよう。ラベンロッドに手紙を書くのはその後だな」


「はい!」


「あ、あの、ギアデロ?」



モリリナは途中から意味のわからない話になったので戸惑う。


「セシル、ちゃんとモリリナ嬢に説明しろ」


「はい。向こうに行こうモリリナ! 説明するから」


「う、うん」



セシルに手を引かれ訓練所を出る。

チラッと振り返ると、グレンが小さく手を振った。




モリリナのお気に入りの、ピンクのバラ園のベンチに2人で座る。


「モリリナはこの国の王太子になる条件は知ってる?」


「ええと、王様は胸に女神様の印を持って生まれてくるのよね」


「そう。次代の王は女神の印がある。印っていうのは胸に刻まれた紋様なんだけど、それがあるだけでは何の力も無いんだ」


「え。でも王様は女神様の加護で覇気を持ち、邪悪を退けると習ったわ。今の王様も覇気が強くて毒や呪いも効かないって」


「そう。合ってるよ。でもそれは加護を得てからの話」


「加護を得る?」


「王子は印に加護を得て正式に立太子される。だから今の王太子はまだ正式ではないんだよ。印を持つ者が女神に加護を授かって、それから王の覇気が発現する」


「そうなのね。知らなかったわ」


「うん。これは王に近しい限られた人間にしか知られていないから」


「あ、あの、そんなことわたしが知ってはいけないんじゃ」


「モリリナは僕のお嫁さんだから。父上も説明しろって言ったしね」


「うん。......そっかわたしセシルのお嫁さんなんだ」


「そうだよ。モリリナ、内緒の事を知っちゃったからもう逃げられないね」


「そうかぁ」


セシルが嬉しそうにニコニコ笑い、モリリナも嬉しくなってニコニコする。

逃げる気なんかないから、セシルの家族になることがただ嬉しいだけだ。


「古い神話なんだけど、戦争と飢饉に苦しんでいたこの国の王子に恋をした女神がいて、王はこの国の加護と引き換えに王子を捧げた。そして女神が加護を授け、国中に光が溢れ大きな奇跡が起きた。そう書いてあるんだ」


「この国の加護と引き換えに王子様を捧げたの?」


「どこまで本当かどうかはわからないけどね」


「王子様が加護をもらえない事もあるの?」


「ない。ただ、どのくらいの時間がかかるかは王によるからわからないんだ」


「そうなのね」


「過去には印を持つ王子が暗殺されたこともある。でもそういうことをした関係者全員が例外なく呪いで死ぬ。怖いよね。それに暗殺しても王には必ず新しい王子が生まれる」


「呪い......」


「モリリナはギアデロは知ってる?」


「北の火山地帯にある鉱山国でしょう?」


「そう。そのギアデロで王子は加護を得るんだ。女神はギアデロの神だからね。ギアデロの火の神ペレイの娘なんだよ」


「そうなの?! わたし女神さまはこの国の神様だと思っていたわ!」


「うーん。この国の王に加護をくれるから、この国の神ともいえるのか? な?」


セシルは、いきなりモリリナの手を取ると、指に口づけを落とした。

モリリナが真っ赤になるのを嬉しそうに笑う。

とはいえセシルの顔もそれ以上に真っ赤になっていたが。


「モリリナもギアデロに行こう!」


「セシルは王子様と一緒にギアデロに行くということなのよね?」


「うん。印を持つ王太子は第2王子ルイなんだけど、一応いちおう幼馴染みなんだ。1個上だからあっちは勝手に兄貴気取りしてるけど。それでまあまあ仲良いんだけど、ルイがギアデロのお供に僕を指名したんだ。誘われたのが、モリリナに出会う前だったから、なにも考えずにいいよって返事しちゃったんだよ。でも! モリリナが行きたくないなら断る!」


「行くって行ったのならそんな理由で断ったらいけないわセシル」


「でも」


「それにわたしも行ってみたい! 色々な国を旅をするのが夢だったの」


「よし! 決まりだ!」


「でも王子様、嫌がらないかな」


「大丈夫だよ!」


「そうだと嬉しいなぁ! ジマーマン侯爵様も一緒に行くのでしょ?」


「父上はルイの護衛だよ。ルイと父上と僕の3人で身分を伏せて行く予定だったから、モリリナが加わって4人だね」


「まあ!」


「父上が強いから、道中の盗賊なんかの心配いらないよ」



ニコリと笑うセシル。


彼の父グレン・ジマーマン侯爵は、鬼神と呼ばれる剣の天才で、


騎士団や他の部所に所属せずに国王の特命で動いている。


今回も王の特命での王太子の極秘護衛で、セシルの同行とは全く関係ないらしかった。

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