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12.魔力検査

魔力検査の日である。


場所は大聖堂。

公爵家、侯爵家、辺境伯家、伯爵家の高位貴族の子供達が集められた。

子爵家、男爵家、準男爵家、騎士爵家は別の日だ。ちなみに王家はすでに別日に済ませている。



モリリナは大聖堂に向かう馬車で、アマリリスが自分に魔力があると普通に信じているのを知った。


私は何魔法属性かしら。全属性とかならいいなぁ。と、興奮したアマリリスが喋り出すまで、まさかそんなことを思っていたとは想像もしてなかったのだ。


魔力は無いのが普通だからと、同行している父のラベンロッド伯爵が説明したのだが、そんなはずはない! と言い張り、父とモリリナを困惑させた。


大聖堂に着くと、爵位関係なく着いた順に検査を受ける。


検査と言っても、大人の背丈ほどある大きな魔水晶の原石の前に立つだけだ。魔力のある人間が魔水晶の前に立つと色が変わるらしい。

実際、モリリナの前の男の子が立ったら、水晶が白く変わった。彼はヒーラーの能力があるということのようだ。


だが色が変わった瞬間、奥からワラワラと顔まで隠れる白い三角ローブを着た謎の集団が現れ、無言のまま男の子をあっという間に連れてっいってしまった。


連れ去られる男の子の顔は恐怖でひきつっていた。


それを見たモリリナは、どうか自分に魔力がありませんようにと本気で祈った。

結果モリリナに魔力は無かった。アマリリスにも無かった。


アマリリスは帰りの馬車でずっと無言だったが、屋敷に着くとそのままモリリナの部屋に押し掛けてきて、


「魔法の世界で魔力無しだなんて......」


モリリナのベッドに寝転んで、1人でぶつぶつ喋っている。


「まだ言ってるの?」


「やっぱこのままスローライフかなぁ」


「スローライフって何?」


「ああ? はいはい」


ムッとするモリリナ。


「悪役令嬢ってことはないよね?だって王子の婚約者じゃないし」


「? アマリリスは王子様の婚約者候補だよ?」


「......は? 私が婚約者候補なの?」


「うん。あ、婚約者候補の候補かな」


「どういうことよ? 全然知らないんだけど」


「5歳の時に王妃様のお茶会でアマリリスが王子様に一目惚れして、自分で婚約者候補に立候補したのよ」


「はあ?! じゃあなんでなんにも王子イベントないわけ?」


「イベント?」


「あーもう! だからなんで生活の中に王子が登場しないのよ?! 婚約者候補なら時々会ったりするでしょ普通は!」


「婚約者候補に立候補したけど決まってないから候補の候補よ。えっと。会えないのはまだ小さいから? わからないけど、 魔力検査が終わってから子供達の社交が始まるから? かな」


「てことは悪役令嬢かな。......やっぱスローライフしないと」


「何言ってるの?」


アマリリスは暫く枕に顔を埋めジタバタして、いきなりガバッと起き上がり、じゃあね! と言い捨て部屋を出ていってしまった。


残されたモリリナのベッドはぐちゃぐちゃで、枕もシワシワになっていて泣きたくなった。




◆◆◆◆◆




魔力検査が終わりしばらくすると、王妃様からお茶会の招待状が届いた。


毎年、魔力検査が終わった8歳の子供全員が招待されるのだ。


挨拶は緊張するが、子供達同士のの交流がメインなのでモリリナは友達を作る気満々である。


「マリア、可愛くしてね」


「はい。天使みたいなモリリナ様を今日はマリアが女神のように仕上げて差し上げます」


「髪の毛がモコモコなの変じゃない?」


「変なんて! モリリナ様は誰よりも可愛らしいですよ」


「ドレスはこれで大丈夫?」


「ええ! モリリナ様によく似合ってますし、優しい印象で素敵ですわ」


アマリリスとモリリナは、薄茶のクリクリ癖毛頭で淡緑の瞳。見た目はそっくりなのだが印象が全然違う。


水色のドレスのアマリリスは生命力に溢れ、若葉色のドレスに身を包んだモリリナはふわふわして優しげに見える。そしてどちらも素晴らしく可愛らしかった。


付き添いの母ジーンは、この2人の双子が誇らしくて上機嫌だった。


「2人ともとても可愛いわ! もしかしたらアマリリスは本当に殿下の婚約者候補に決まっちゃったりして!」


城に向かう馬車の中、はしゃいだ母がアマリリスに言う。


「いやよ。私、婚約者になりたくないの」


「お妃様になる為に凄く頑張っていたじゃない?!」


「お母様。あれは気の迷いだったみたい。私は大きくなってもお父様やお母様と一緒に居たいわ。ラベンロッド領も大好きだし」


母ジーンはとても驚いていた。


やはり母はアマリリスが変わったことを何も気付いて無かったのだな。と、モリリナは少しがっかりして悲しく思った。


馬車が王城の馬車溜まりに入る。



「その話は後でしましょう。さぁ、行くわよ!」


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