表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なろうラジオ大賞参加作品

キミのえんぴつになりたい

 あぁ……キミのえんぴつになりたい。


 授業中ずっとキミがぺろぺろと舐めている何の変哲もないえんぴつを、私はずっと眺めていた。

 キミはきっと無意識なんだろう。一心不乱に先生の授業を聞き続けている。こんな長話のどこが面白いのか私にはさっぱりわからないけど、私はこの時間が楽しい。

 だってキミの姿を見ていられるから。



 私がキミに恋した瞬間? そんなのは自分でもわからない。

 雷に打たれたような出会いも、言葉を交わしたこともない。ただ気づいたらキミを目で追っていて、キミのことが好きだった。


 でも超真面目なキミと不真面目陰キャな私じゃ全然釣り合わない。話しかけたってろくに答えてなんてくれないのは目に見えている。

 だから私はキミと話したいだなんて思わない。いつも遠目からキミを見つめながら、手に握り締められているそのえんぴつに嫉妬することくらいしかできないのだから。


 キミだけのために身を粉にする、一途で献身的なえんぴつ。

 憧れないわけじゃない。でも私はえんぴつには遠く及ばないし、キミの大切な存在になろうなんて傲慢なことは思わない。

 でもそれだけじゃ寂しいから、ほんの少しだけ意地悪をする。


 キミが愛するそのえんぴつ、授業の後にこっそり盗んで筆箱に。

 「あれ、またえんぴつがなくなってる」と言って慌てて探し始めるキミも可愛くて好き。確かこれで今週のえんぴつは三本目だったよね。ごめんね、いっぱい盗っちゃって。

 でもいいでしょ、すぐに買ってもらえるんだもの。



 こっそり持ち帰ったら、「愛してるよ」と囁いて、私はキミのことを思いながらえんぴつに口づける。

 間接キス。例え直接ではなくてもキミと繋がっていられると思うと嬉しくてどうにかなりそうだ。好き。大好き。えんぴつの先から芯まで隙間なく舐めて舐めて舐め取って、キミの全てを味わい尽くす。

 それからそのえんぴつは大切に大切に宝箱の中へ仕舞うんだ。



 そして翌朝、私は何事もなかったかのように登校する。

 そこにはいつも通り他に誰もいない静かな教室に一人ぽつんといて、何やらノートに文字を書いているキミの姿があった。一体何を書いているのだろう、新しいえんぴつを軽やかに走らせ、かと思えば手を止めて時折唸ったり考え込むようにしながらぺろぺろぺろぺろ。

 私はキミの背後に座って同じようにノートに何か書くふりをしつつ、無言のままでキミに熱い視線を送る。

 そんなことに気づかない、周りに無関心なキミは今日も素敵だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ひぇ〜((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
[一言] あらあら、うふふ♪ かわいらしいHENTIちゃんね! (*´艸`*)
[一言] じゅ、純愛だなぁ(°⌓°)白目
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ