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はじまりはじまり

ミア「はぁーレベル上げと金策しないと…」


私のいるこの世界、大帝国エンクシャータでは、

冒険者たちは毎日冒険者レベルを上げるべく、

日課のモンスター討伐をこなしたり、

自給自足の生活のため、

こつこつ職人業務にあたったりしている。


口癖のように言ってはいるものの…

私ミアは、地道な作業がとても嫌いだ!


ミア「なんか楽に稼げて、面白いことないかなー」

自宅の窓から小雨の降るどんよりした空を眺める。


情報を集めると言えば、酒場である。

酒場で玄人冒険者の話をきければ、

楽して稼げる方法が見つかるかも知らない。


ここエンクシャータでは、貧富の差がはげしく、

通貨リゼをある程度稼げなければ、見える世界はひと握り。

この小さな村「ピヤの村」で生まれたことが幸運である。

大富豪の集う、歓楽の大都市「オルターピア」と、

エンクシャータの首都である「ガーリンバル」のちょうど真ん中にあるピヤでは、

各地からの高レベルの冒険者が、足を休めに立ち寄ることが多いのであった。

当然ピヤの酒場は、隠れた情報の宝庫となる。

のだが…

現地の村人には敷居が高く、近づくことさえ許されない現状であった。


コンコン

コンコンコン


???「みー!!」


私をみーと呼ぶのは一人しかいない。

隣人のノンティである。

ミア「もうそんな時間…」

私達は同じ職場で職人をしている同僚でもあった。


ミア「毎回そんな叩かなくても、わかってるし、

ちゃんと行くよ!」


そそくさと準備をし、おっとこ食堂へむかう。


ノンティ「傘はー…?」

ミア「こないだ耐久なくなって、もうない」

無言でノンティの傘にいれてもらい、

村を下っていく。


ここを左に行けばリバーサイドバーに着くのに…

高嶺の酒場への道を横目に、

村民御用達食堂へ足を運ぶのであった。




オッセル「いっらしゃい!!

って、おまえらか…

早く仕込みてつだってくれ!」


マスター、といったらカッコつけすぎな気がするが、

おっとこ食堂の主人オッセルは、

どうせ暇なのに毎日意気込みは熱い。


ミア「あ…新しいフライパンも買わないと…」

冒険者は各々専用の職人道具を調達していて、

店からの支給はない。

この食堂では、雇われている私達の得意料理数点ずつを

集めて扱っている。

私の作れる「ピヤ豆クッキー」「ぐつぐつフォカッチャ」はメインにはなれず、

オッセルの作るステーキのお供か、お土産ていどなので、

雀の涙の給料は、自分の生活とフライパン調達で消えるのであった。

冒険者とは名ばかりで、いつ冒険するんだよ、

と毎日自分につっこんでいる。


カランカラン


見知らぬ冒険者「やってんのー?へぇ。美味そうじゃん」


オッセル「らっしゃい!」

トーコ「やってるよー!」


わたしがここを続けられる理由の一つ、

オッセルの奥さんであるトーコさんの人柄と、

見た目だ!

トーコさんはオッさんには勿体ないほどの美人ラパリア※である。

※ピヤ村はラパリアというウサギ種族がほとんどである


ミア「トーコさん今日も綺麗だなぁ…」

オッセル「ぼーっとしてねーで、ステーキ2はいったぞ!

付け合せ準備しろ!」


ノンティ「それにしても珍しいわね。身なりは普通だけど、

ウェアズ※の冒険者が、村奥までくるなんて…

物好きだわ。」

ミア「田舎を面白がってるだけでしょ。やだやだ…」

※ウェアズは西の方に多いらしいオオカミ種族である



見知らぬ冒険者「このステーキもまずまずだが、

こっちのウサギ肉の方が美味そうにみえるな?」


オッセル「お客様…!申し訳ありませんが、家内ですので、

おやめ頂きたい!」


ミア「トーコさん!?」

ノンティ「やめてっ!」


両耳をいきなり掴まれたトーコさんをみて、

ノンティが飛び出したいった。


見知らぬ冒険者2「おっと…。かわいいウサギさんキャッチ。

見ろよラキア。こっちのほうが活きがいいぜ?」

ラキア「ほんまやなぁ…。じゃ、お代はおいてくで!

このおばはんはええわ!でかしたルフィス!」


投げ出されたトーコさん、机にちらばった多すぎるリゼ。

瞬く間に事が起き、私は衝動的にルフィスと呼ばれたウェアズにダガーを突きつけようとしたその時


キーーーーン


麻痺。


ラキア「血気盛んやのう。そんな短剣じゃ俺らに届かんで」

武器は抜いてない。

視線だけで麻痺させられたようだ。


ノンティ「みー!いいから!大丈夫だから!」


言葉を発することも出来ず、なんて無様な…

そりゃぁ私達は弱いけれど、

いざという時に何も出来ない、

これほどに無力な存在なのか…


ルフィス「じゃお先♪」

ラキア「これなにが出ると思う?」


マヒでうごけない私達にむけて、ラキアという男は

タロットカードを宙に浮かべて見せた。


トンッ


大剣の柄で空気を叩くと、1枚のカードが私の顔の目の前までやってきた。


ラキア「星の正位置。いいカードやん」

ケラっと笑いながら、2人の男は食堂からゆっくり立ち去っていった。



数分後耐性の度合いなのか、オッセルが先にマヒが解け、

走って食堂から出ていくのが見えた。


オッセル「もう今日は店じまいだ。あいつらはランドしちまった。この辺りにはいないだろう…」


トーコ「ゲホッ…ランドって…大剣持ってたのに、

そんな上級魔法も使えるってこと…?

なんなの…もう、ああノンティ…無事でいてっ…」


泣き崩れるトーコさん。


そんななか、私は、怒りと惨めさに交じって

ゾクゾクしていた。

非日常のできごとに、胸踊っていたのだった。

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