表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイレン 〜久々の旅行に出かけたら、体も恋人もシェアされそうになりました  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

死んでいないのにゾンビ?

 T字路を右に曲がり、もう一度ガソリンスタンドを検索する。

『五キロ先左側です』

 よし。

 後は軽トラがこっちに気づかず、さっきのT字路を過ぎ去ってしまうことを祈るだけだ。

 ガソリンスタンドの看板が見えてくると、順子はホッとした。

 スピードを少し落として走っていると、視野に変化があった。

 ルームミラーから後ろを確認すると、軽トラが見えた。

「えっ?」

 ダメだ。見える位置からスタンドに入ったら気づかれてしまう。

 どこまで逃げたらいいのか。

 どこまで走れるのか。

 逃げ切れたとしたら?

 私は助かる。けど、智はどうなる?

 智に会いに来たのではないのか……

 この道を走って、どこに着く? その地について私は幸せなのだろうか。

 順子は再びスマフォに行き先を告げる。

 スマフォの指示に従いながら、車を走らせ続けた。

 ついた場所は、最初に泊まったホテルだった。

 エンプティ・サインが出続けている。

 もうほぼ走れないと考えていいだろう。

 順子はホテルのフロントに入った。

 操られた智が襲ってきた時に、警察を呼んでくれた。

 少しは話が分かってくれるだろう。

 フロントに従業員がやってくる。朝の人とは交代しているようだった。

「すみません。お願いがあるんです」

「どちら様ですか?」

「今日、チェックアウトした藤村です」

 パソコンで何か確認すると、ホテルの従業員は何か頷いた。

「今朝のことで何かありましたか?」

「そうなんです。ずっと追いかけられてて」

「そう言われましても、警察ではないのでやれることが……」

「私の代わりに警察に通報してください。私の携帯だと」

 順子はスマフォを取り出した。

 電話をかける画面にしてみせると、スマフォの画面に出鱈目な番号が押されたり、キャンセルをタップしたような動きが現れる。

「ハァ…… 故障しているということですね」

 順子は悪寒がした。

「すぐに連絡」

 フロントの従業員の様子がおかしい。

「するわけねぇべ」

 そう言って、順子の手を取ろうとしてくる。

 飛び退いてその手を避けたが、従業員はカウンターを回って、順子を追いかけてきた。

 順子は走ってホテルをでた。そこには智と坊主頭の男がいた。

 それだけではない。

 人気のない町なのに、『さとし』の後方から数人が歩いてきている。

 このホテルの人だけではない。

 乗っ取った人間が、増えているのだ。

「何やっても無駄ですで」

 そうか。

 音声で掛ければいい。さっきの検索と同じ要領だ。

「緊急通報を」

 乗っ取られている『さとし』が言う。

「キャンセルですで」

 いや、他人の声は認識しないはずだ。

 そう思って順子は自分のスマフォの画面を見た。

 何か画面が出鱈目に勝手にタップされている。

 音声操作が画面操作でキャンセルされているのだ。

 ホテルから、従業員が追いかけてくる。

 順子はそのまま走った。

 初日に街の宿を回ったから、フロントのある場所は覚えている。とにかく『さとし』から離れて、正常な状態のうちに警察に電話をしてもらおう、と思った。

 あるいは物理ボタン式の電話を借りてしまってもいい。

 出来る限り遠くの宿に入り、フロントに話しかける。

「警察を呼びたいんです。電話を貸してください」

「電話? 警察? 何があったんですか?」

 順子は説明している間がないと判断して、カウンター越しに電話を使った。

「ちょっと、な、何するんです。電話代請求しますよ」

「警察にかけてるんですから」

 朝のことがあるから、すぐ行くとのことだった。

「電話したって無駄だで」

 またこの宿のフロントの人も乗っ取られた。

 そして、順子を捕まえようと動き始める。

 また逃げなければいけないのか。

 順子は宿を出る。

 連中は『噛まれた』ことで増えていく『ゾンビ』のようだ。

 順子は次第に不利になっていく状況に、気持ちが暗くなる。

 しかし通報した。街に警察が来るのは間違いない。

 走りながら、警察が来たらどうなるか、頭の中でシミュレートしていると、順子はあることに気づいた。

 まるで彼女が考えたことが分かっているかのように、後ろを追ってくる『さとし』が言う。

「誰か呼んだって無駄だで」

 いや、無駄じゃない。可能性はゼロではない。

 希望はある…… 順子は思った。

「いや。可能性はないだで。誰だって『穢れ』なしで生きてはおらんですで。誰を呼んでも、儂らのいいなりだで」

 小さな街の道を走りながら、順子は考える。

 確かにヤンチャしているような連中が、大人になって警察官をしていたりする。

 電話をして真っ先に到着するのはそういう人の可能性がある。

 いや、それが偏見だとしても、勉強だけして清廉潔白な人に思えても、人間、生きている間に何も『穢れ』がない、などは言い切れない。

 やはり、警察も、あっという間に乗っ取られてしまうだろう。

 なら、なぜ私は乗っ取られない?

 いや、乗っ取られたではないか。頭の近くで『鈴』を鳴らされた時には乗っ取られた。

 ただ、体を取り返せたすぎない。

 だから、やはりこの悪霊を祓わない限り、『さとし』を救えないし、この状況から助からない。

 何か方法が残っていないか。

 順子は通りの植え込みに飛び込み、身を潜めた。

「警察が操られたら、どうしよう……」

 警察官は銃を持っているかもしれない。

 銃を抜かれる。そんな事態になったら……

 私か『さとし』か、それとも他の誰か。

 誰かが傷つけられてしまう。

 小さな温泉町をうろうろしている連中を、隠れて覗きながら、順子は閃いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ