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淫らな女の棲む海

作者: 紫 李鳥
掲載日:2022/03/23

 



 男は月明かりの(なぎさ)を千鳥足で家に帰っていた。


 (しばら)く歩いていると、波打ち際に倒れている女の姿を月光が照らしていた。


 それを目にした男は、見間違いかと思いながら早足になった。


 そこにあったのは、濡れたジョーゼットのワンピースに肉体を浮き彫りにした長い髪の女が、脚を開いた姿だった。


 酩酊(めいてい)していた男は、生唾を飲み込むと、鼻息を荒らげて薄い布の(すそ)(めく)った。――



 ――ズボンのファスナーを上げた男が、ふと女の顔を見た瞬間、女がパッと目を見開いた。


「ヒェーッ!」


 吃驚(びっくり)した男は、短い悲鳴を上げると、走り去った。




 翌朝、酔いが覚めた男は昨夜の事を思い出し、自責の念に駆られた。


 ……生きていたのか、死んでいたのか定かではない。仮に死んでいたとして、果たして、死んだ人間が目を開ける事などあるだろうか……。


 仕事に行く気も起きず、罪悪感から逃れるように酒を浴びた。


 酒に浸った男はいい気持ちになり、眠りについた。



 ――若い女が、海面から手招きしていた。男は誘われるがまま海に入り、沖に進む女の後を追って泳いだ。


「待ってくれ!」


 暫く泳いで、ふと前を見ると、女の姿がなかった。


 男が水平線に女を捜していると、


「アッ!」


 足に何かが絡み付いた。男が海中を(のぞ)くと、そこにいたのは、汀に倒れていた女だった。女は、見開いた目でジーッと(にら)んでいた。


「ウェーッ!」


 男は逃げようともがいたが、足は女の長い髪に絡み付いてほどけなかった。もがけばもがくほど、海の底へと沈んで行った。――




 翌朝、男の水死体が波に漂っていた。


 海辺の住人が最後に見たのは、男が長い髪の女と浜辺を歩く姿だった。






「浜辺に倒れていたのよ。助かって良かったわね」


 看護婦にそう言われた長い髪の女は、ベッドの上で小さく(うなず)いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] かわいい(*´∇`*) その女、何者?!と思いながら、長い髪の毛に惹かれました。わたし、髪の毛大好きなので。 殺人に入るのか事故なのか、絶妙だと思いました。しかし男を手招きしていた時点で…
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