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天鵞絨の吐息  作者: 空木白檀
第一章
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話し合い

 翌日三人が登校すると、早速エドガーから呼び出しを食らった。

 場所は保健室ということで、放課後になりそこに行くと、エドガーと青木がすでに待っていた。


「来たな、悪ガキ君達。呼ばれた理由は、勿論わかっているよね? 大雅君は連絡もなしで学校を休むし、健人君と駿君はボクの授業をさぼるし……ああ、ボクは気分が悪いよ」


 エドガーはさほど気分を害しているようには見えないが「ペナルティーは何にしようか」と意地悪を言う。

 桜井と五十嵐はしゅんとして下を向いたままだが、坂本はモヤモヤしていることを口にする。


「ねえ、エドガー先生。俺たちが噴水に襲われてびしょ濡れになったの、あれ、先生の仕業ですよね。俺たちは何も悪いことをしていないのに。先生はそれに対して、俺たちに何の説明もしてくれませんよね」


 坂本は口の端を上げて『さあ先生、どうだい。お互い様でしょう』という顔をエドガーに向ける。

 そう言われてエドガーは、苦虫を嚙み潰したような顔で押し黙り、頬を膨らました。

 それを見て坂本は、満足そうにニヤリとする。


「ふふ、そうね。あれはやりすぎだったわ。エドガーは謝るのが苦手なのよ。代わりに私が謝るわ。本当にごめんなさい。許してね」

 青木が爽やかに言い、エドガーの肩をトントンとつついた。


「青木先生は悪くないです。エドガー先生、さぼったのは悪かったです。すみませんでした。でも僕たちは、先生に会う前に少し時間が欲しかったんです。頭の中を整理しないと、状況を飲み込めなくて……」

 五十嵐が、エドガーと青木と別れてからその後に起きたことを話しだすと、二人の表情が変わった。


「昨日は風もなく良い日だったよ。大雅君の所は強風だったの? すぐに止んだ?」

「はい。すぐ止みましたが、一時は台風のような強風でした。あれは何だったのかな?」

 桜井はエドガーの反応を気にしながら答える。


「男がいたのは確か?」

 エドガーが思案顔で、青木と視線を交えながら質問をする。


「はい、いたのは間違いないです」

 桜井は自分が大きなうねりに巻き込まれているのを感じ、不安に押しつぶされそうだった。


「……色々と調べる必要があるな。それに、大雅君が世話になっている北村院長も何者なのか、調べるべきだね」

 桜井の顔色を見て、エドガーが不安をかき消すような綺麗な笑顔をつくり、とんでもないことを口にした。


「あのさ、大雅君。ボクもキミを一人にするのは反対だ。でも、健人君も駿君も学生だし、キミらはちゃんと家に帰らなくてはいけない。だから、大雅君はボクの家に来ればいい」


 五十嵐と坂本は、桜井をあの家で一人にするよりは良いと賛成したが、当の本人がなかなか『うん』と言わない。


「ねえ、大雅君。院長の素性がはっきりするまでは、距離を取ったほうがいいと思うのよ。期間限定で我慢できない?」


 青木がエドガーの助っ人をするが、エドガーは「ボクといるのは我慢が必要なのか?」とぶつくさ言っている。


「エドガー先生は、時々人をイラつかせますからね。特に男子学生には受けが悪いから、気を付けたほうがいいですよ」


 坂本がにやつきながら言うと、エドガーはムスッとした。

 五十嵐と坂本と青木の三人に、嫌でも我慢しろと言われ、桜井は仕方なくエドガーの家に行くことに決まり、早急に院長について調べるから、それまでは病院に行かないように言われた。


「母のこともありますから、あまり長い間は無理です」

 つらそうに言うと「ええ、それが問題なのよね」と、青木が伏し目がちにため息をついた。


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