話し合い
翌日三人が登校すると、早速エドガーから呼び出しを食らった。
場所は保健室ということで、放課後になりそこに行くと、エドガーと青木がすでに待っていた。
「来たな、悪ガキ君達。呼ばれた理由は、勿論わかっているよね? 大雅君は連絡もなしで学校を休むし、健人君と駿君はボクの授業をさぼるし……ああ、ボクは気分が悪いよ」
エドガーはさほど気分を害しているようには見えないが「ペナルティーは何にしようか」と意地悪を言う。
桜井と五十嵐はしゅんとして下を向いたままだが、坂本はモヤモヤしていることを口にする。
「ねえ、エドガー先生。俺たちが噴水に襲われてびしょ濡れになったの、あれ、先生の仕業ですよね。俺たちは何も悪いことをしていないのに。先生はそれに対して、俺たちに何の説明もしてくれませんよね」
坂本は口の端を上げて『さあ先生、どうだい。お互い様でしょう』という顔をエドガーに向ける。
そう言われてエドガーは、苦虫を嚙み潰したような顔で押し黙り、頬を膨らました。
それを見て坂本は、満足そうにニヤリとする。
「ふふ、そうね。あれはやりすぎだったわ。エドガーは謝るのが苦手なのよ。代わりに私が謝るわ。本当にごめんなさい。許してね」
青木が爽やかに言い、エドガーの肩をトントンとつついた。
「青木先生は悪くないです。エドガー先生、さぼったのは悪かったです。すみませんでした。でも僕たちは、先生に会う前に少し時間が欲しかったんです。頭の中を整理しないと、状況を飲み込めなくて……」
五十嵐が、エドガーと青木と別れてからその後に起きたことを話しだすと、二人の表情が変わった。
「昨日は風もなく良い日だったよ。大雅君の所は強風だったの? すぐに止んだ?」
「はい。すぐ止みましたが、一時は台風のような強風でした。あれは何だったのかな?」
桜井はエドガーの反応を気にしながら答える。
「男がいたのは確か?」
エドガーが思案顔で、青木と視線を交えながら質問をする。
「はい、いたのは間違いないです」
桜井は自分が大きなうねりに巻き込まれているのを感じ、不安に押しつぶされそうだった。
「……色々と調べる必要があるな。それに、大雅君が世話になっている北村院長も何者なのか、調べるべきだね」
桜井の顔色を見て、エドガーが不安をかき消すような綺麗な笑顔をつくり、とんでもないことを口にした。
「あのさ、大雅君。ボクもキミを一人にするのは反対だ。でも、健人君も駿君も学生だし、キミらはちゃんと家に帰らなくてはいけない。だから、大雅君はボクの家に来ればいい」
五十嵐と坂本は、桜井をあの家で一人にするよりは良いと賛成したが、当の本人がなかなか『うん』と言わない。
「ねえ、大雅君。院長の素性がはっきりするまでは、距離を取ったほうがいいと思うのよ。期間限定で我慢できない?」
青木がエドガーの助っ人をするが、エドガーは「ボクといるのは我慢が必要なのか?」とぶつくさ言っている。
「エドガー先生は、時々人をイラつかせますからね。特に男子学生には受けが悪いから、気を付けたほうがいいですよ」
坂本がにやつきながら言うと、エドガーはムスッとした。
五十嵐と坂本と青木の三人に、嫌でも我慢しろと言われ、桜井は仕方なくエドガーの家に行くことに決まり、早急に院長について調べるから、それまでは病院に行かないように言われた。
「母のこともありますから、あまり長い間は無理です」
つらそうに言うと「ええ、それが問題なのよね」と、青木が伏し目がちにため息をついた。