救い、みんなきみが好きだよ
足場の悪い小道を転びそうになりながら登りきると、視界が開けた場所になっていた。
どこにいるのだろうと視線を移すと、岩の上に桜井は立っていた。
うつむいている顔をあげた桜井の視線とあった五十嵐は、胸が押しつぶされそうになる。
彼がいかに悩んでいるか、苦しんでいるか、五十嵐には手に取るように伝わる。
「何でここにきたんだよ。折角ダイチに送らせたのに」
桜井は視線を逸らして呟く。
「ごめんね。力になってあげられなくてごめん」
突然謝る五十嵐に、ピクッと体を震わせる。
「何で謝るの! 五十嵐君には関係ないことだろう!」
「ううん、僕には分かっていたよ。きみが悩んでいたことに。それが何なのか分からなかったから、深追いしなかっただけだ。知らんぷりしたんだ。ごめん。本当にごめん」
桜井のもとに近づこうとすると、後ずさりした。
「来ないで! 僕はもう駄目だ。あいつらが憎くて憎くて仕方ない。苦しませたくてしょうがない」
岩の淵まで後ずさり、悲しい顔で五十嵐を見つめる。
「待って、動かないで。僕はきみの味方だよ。きみがなにをしても、僕はきみの味方だから」
五十嵐は、一歩前進する。
「坂本だってそうだよ。わかるだろ? きみのためにここまで来ている」
また一歩、前進する。
桜井は目を瞑り頭を抱える。
「綾乃さんだってそうだよ。きみのために動いてくれている」
また一歩、
「ここに居る全員が、きみのことを大切に思っているんだ。わかるだろう」
そっと手を伸ばして、桜井の手を掴む。
「みんな、きみが大好きだよ」
五十嵐は桜井を抱きしめ、岩から移動させる。
嗚咽で息を詰まらせる桜井に、坂本が手を貸す。
「そうだぞ。わざわざ桜井のために、こんなへんてこりんな場所に来てやったんだ……。とことん付き合うって、前に言ったよね! 忘れんじゃねえぞ!」
五十嵐が桜井の頭をクシャクシャする。
小池は三人の友情を羨ましく感じ、ほろりとしている。
織部は取り敢えず危機を脱して、ホッと胸をなでおろしていた。




