表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天鵞絨の吐息  作者: 空木白檀
第一章
31/93

救い、みんなきみが好きだよ

 足場の悪い小道を転びそうになりながら登りきると、視界が開けた場所になっていた。

どこにいるのだろうと視線を移すと、岩の上に桜井は立っていた。


 うつむいている顔をあげた桜井の視線とあった五十嵐は、胸が押しつぶされそうになる。

彼がいかに悩んでいるか、苦しんでいるか、五十嵐には手に取るように伝わる。


「何でここにきたんだよ。折角ダイチに送らせたのに」

 桜井は視線を逸らして呟く。


「ごめんね。力になってあげられなくてごめん」

 突然謝る五十嵐に、ピクッと体を震わせる。


「何で謝るの! 五十嵐君には関係ないことだろう!」

「ううん、僕には分かっていたよ。きみが悩んでいたことに。それが何なのか分からなかったから、深追いしなかっただけだ。知らんぷりしたんだ。ごめん。本当にごめん」

 桜井のもとに近づこうとすると、後ずさりした。


「来ないで! 僕はもう駄目だ。あいつらが憎くて憎くて仕方ない。苦しませたくてしょうがない」

 岩の淵まで後ずさり、悲しい顔で五十嵐を見つめる。


「待って、動かないで。僕はきみの味方だよ。きみがなにをしても、僕はきみの味方だから」

 五十嵐は、一歩前進する。


「坂本だってそうだよ。わかるだろ? きみのためにここまで来ている」

 また一歩、前進する。

桜井は目を瞑り頭を抱える。


「綾乃さんだってそうだよ。きみのために動いてくれている」

 また一歩、


「ここに居る全員が、きみのことを大切に思っているんだ。わかるだろう」

 そっと手を伸ばして、桜井の手を掴む。


「みんな、きみが大好きだよ」


 五十嵐は桜井を抱きしめ、岩から移動させる。

嗚咽で息を詰まらせる桜井に、坂本が手を貸す。


「そうだぞ。わざわざ桜井のために、こんなへんてこりんな場所に来てやったんだ……。とことん付き合うって、前に言ったよね! 忘れんじゃねえぞ!」 


 五十嵐が桜井の頭をクシャクシャする。

 小池は三人の友情を羨ましく感じ、ほろりとしている。

織部は取り敢えず危機を脱して、ホッと胸をなでおろしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ