始まりの町
眩い光が消えると柔らかな日差しがクロハの体を包み込む。目をゆっくりと開けるとそこには、噴水のある広場でたくさんの人で賑わっていた。
広場にはプレイヤーであろう人たちの露店が広がっており、そこで売られているアイテムを買い求めるプレイヤーで活気づいていた。
「すごーい!賑やかだねー!」
思わずの光景に感想をこぼすクロハ周りを見渡すが、先ほど仲間になったはずのアンがどこにも見当たらない。やっぱり無理だったかと肩を落とすクロハだったが。
「クロハさん!私ここですよ!!」
突然どこからともなく声が聞こえた。それは先程迄話していたアンの声だったがどこから声を掛けられているのかわからない。わかるのは自分より若干下辺りからだがいくら見まわしても見当たらない。
「クロハさん、手!手!」
「手?」
クロハは自分の手両手を見つめてみると、右手の薬指に銀色のリングに深く鮮やかな青色の宝石が付いた指輪が嵌っていることに気づいた。そしてその指輪からアンの声が聞こえてくるのだ。
「おそらく妖精を連れ出したのはクロハさんが最初だと思って、周りには気づかれないように指輪になってます!あ、私の声も周りには聞こえてませんので、私に合わせて喋ってると独り言だと思われちゃうので気を付けてください!心の中で喋ってもらえれば私には聞こえますので」
「(わかったよ)」
ひとまず、アンを無事に連れてくることができ一安心のクロハは、改めて周りの風景を見回す。ここはゲームの中だと頭では分かっていても、風景や人々の活気、体が感じる気温や風に至るまでもがリアルに感じとれる。アンもそうだったがNPCのAI技術にも、技術者の相当な思いを感じることができた。
ただリアルと違うとするのなら、みんな各々武器や鎧・ローブなどの装備を身にまとい歩いているという点だ。アンのような妖精もそうだが、やはり戦闘がメインなゲームだけあってそこだけは現実と違うので、ゲームの中であることを思い出させてくれる。
「(えっとアンちゃん、とりあえずここはどこなのかな?)」
クロハは周りを見渡しながら心の中でアンに問いかける。
「ここは始まりの町≪ビギン≫の中央広場ですね。プレイヤーさん達が自由に露店を出せるこの町唯一の場所で、初心者の方やそういった方たちをギルドへ勧誘する熟練の方が多い場所でもありますね。恐らくこの間にもクロハさんのことを吟味している人がいるかもしれませんので、ここを離れて冒険者ギルドに行きましょう」
「(OK)」
アンの提案に乗り、広場を後にするクロハは動きながら自分の装備などを確認する。現在は青いポロシャツに短パン、腰に短剣と初心者だと一目でわかる装備だったが、確認しているときに自分の髪が変化していることに気づいた。
「え!?なんだか髪の色すごいことなってるんだけど・・・・」
基本的にFreedom Worldは自身のリアルアバターをそのまま反映される。そのためスタート時点ではキャラクリエイト等、地震のアバターを弄ることができない。そのため、クロハのアバターをそのまま反映した場合、髪の毛は黒の腰まで伸びたロングヘアーになるのだが、髪の長さは変わらずサファイアを思わすような青と輝くような銀色グラデーションが入った色になっていた。
「これすごく目立つんでは・・・・」