各国との揉め事
王子が自国に戻ると、城中が厳戒態勢を敷いていた。
只事ではない事態に、王子は急いで父である王の元に向かった。
王は王子を見るなり、血相を変えて怒鳴った。
「お前は何て事をしてくれたんだ!この恥知らずが!!」
城についたばかりで、事情がわからない王子は状況を把握したかったが、
王の剣幕に圧倒されて、質問する事すら叶わなかった。
だが、王の言葉から自分が原因である事はわかった。
「その原因が『何か』をまず、知らなくては」
王に話を聞けず、衛兵達からも話を聞けそうな雰囲気でもない。
王子は、母である王妃の元へ向かった。
王妃は王子の顔を見ると
「無事で良かった」
と涙を流した。
涙が止まるのを待ち、王子は王妃に矢継ぎ早に質問した。
自分が旅をしている間に、国で何が起こったのか?
自分が原因で、城がこのような厳戒態勢になっていると王が言っていたのは、どういう事なのか?
いつから、このような状況なのか?
「本当に何も思い当たらないの?旅の途中で貴方がした行いを」
王妃は静かに言った。
王子は自分の旅での出来事を思い返した。
「私が旅をする中で、揉め事などは特にありませんでした」
「大きな出来事と言えば、とある国で美しい姫に出会い、プロポーズをしましたが……」
王子は、そこまで言ってハッとした。
「もしや、私が姫にプロポーズした事が原因ですか?」
王妃は、ゆっくりと頷いた。
「先日、お互いに貿易のある3ヵ国の王達の集まりがあったそうです。そこで、自分達の娘の結婚の話になり、婚約者を聞いたところ、皆が話した王子の国名が同じだった、と」
「始めは間違いではないか?となったようですが、王子の特徴が同じ」
「さらに、不審に思った王達が他国に遣いを出し、他にも2カ国で同じ特徴、同じ国名の王子が姫君と婚約した事がわかったそうです」
王子は青ざめた。
「まさか、そんな……」
王妃は、体の前で組んだ手を強く握り直し、
震える声で話を続けた。
「貴方が、プロポーズをした各国、全て合わせて5カ国の王達が、娘を傷つけ国を愚弄したと憤慨して、王子である貴方がいる我が国に攻め入る準備をしているそうです」
「貴方が無事に帰ってきてくれた事は、母として嬉しい」
「でも、貴方は取り返しのつかない事をしたのです。自分の浅はかな行動で国を危機に陥れるなんて」
王妃の体は小刻み震えていた。
「母上!違います、誤解です!」
「何が違うのですか!?」
「現に、こうして他国から宣戦布告を受けて、貴方の父上や衛兵達が攻撃に備えているのですよ!」
王妃が声を荒げる姿を見るのは、王子にとって初めての事だった。