〜ラプンツェルとの出会い〜
とある国の王子が旅をしていた。
ある王国に向かう途中の森の中で、ポツンと建っている高い塔を見つけた。
こんな森の中に、なぜ塔があるのか不思議に思った王子が塔に近づくと美しい歌声が聞こえてきた。
歌声は塔の上にある窓から聞こえてくる。
どうやら、塔の中に人がいるらしい。
塔の入口を見つけると、門番が立っていた。
「なぜ、森の中にこのような高い塔が建てられているのか?」
「塔の中で歌っている人は、閉じ込められているのか?罪人か?」
王子は門番に尋ねた。
すると、門番も王子に尋ねてきた。
「貴方は、どこかの国の王子様ですか?」
王子は名乗る前に質問した事を門番に詫び、
自分の身分を明かした。
門番は以外な事を言った。
「貴方様をお待ちしていました」
王子は驚いた。
初めて訪れた場所で、今日ここを訪れたのも、たまたまだ。
しかし、門番はまるで自分が今日ここに来る事を知っていたかのようだ。
驚く王子に門番は話を続けた。
「この塔にいらっしゃるのは、我が国の姫君です」
「我が国には、王に仕える占い師がおります。その者が姫が誕生された時、ここに塔を建てる事を進言しました」
門番は更に話を続けた。
「そして、今日ここに他国の王子が現れる。姫君は、その王子と婚約するだろう」
「さらに占い師は、王子が現れた時、姫君が塔に居なければこの王子と結ばれず、望まぬ結婚をする事になるだろう。と話しておりました」
「それゆえ、貴方様をお待ちしていたのです」
王子にとっては信じ難い話だった。
王子の国には占い師という存在がいなかった。
しかし、現に今、自分はこうして森の中の塔に辿り着いている。
門番の話の通りなら、塔の上にいる姫と自分は恋に落ちるはずだ。
『まずは、姫に会ってみよう』
王子は、門番に尋ねた。
「姫にお目にかかる事はできますか?」
「勿論でございます。ご案内致します」
そう言うと、門番は塔の入口の鍵を開けた。
塔の中の長い長い階段を昇ると、扉があった。
扉の向こうからは美しい歌声が響いている。
門番が扉をノックして
「姫君。王子様がいらっしゃいました」
扉の向こうの歌声が止まった。
扉の向こう側から緊張感が伝わるような間があり、
しばらくすると
「お入り下さい」
先程の歌声とは打って変わって、か細い声が聞こえてきた。
「どうぞ」
門番が扉を開けて、王子に部屋に入るよう促した。
部屋に入る前に、王子は自分の名前を名乗り、国名を伝えた。
部屋に入ると、俯いた姫の姿が目に入った。
姫の足元まで伸びた髪は、輝く亜麻色をしていた。
王子は改めて自己紹介をして、お辞儀の後、
頭を上げると、姫も顔を上げていた。
姫の瞳は澄んだ海のようなエメラルドグリーンで吸い込まれそうな程に美しかった。
まつ毛も、髪と同じ亜麻色をしていた。
王子は、姫に一目惚れをした。
姫の名は『ラプンツェル』と言った。
姫も異国から来た王子に一目惚れをした。
端正な顔立に均整のとれた体、凛々しい表情、お辞儀などの立ち居振る舞い。
全てが美しかった。
それでいて、姫に微笑む時の優しく柔らかな表情のギャップが、姫を虜にした。
姫を連れて、門番の案内で姫の国へ向かった。
国に入ると水資源豊かで、城の周りには澄んだ水のきれいな湖があった。
城に入ると既に王様と妃、近くにいた占い師も揃っていた。
王子と姫の姿を見ると、皆が嬉しそうな表情を浮かべ喜んだ。
ラプンツェルの親である王国と妃に許しを得て、姫と婚約した。
「一度、国に帰り、自分の父である国王にも許しを得て改めて姫を迎えに来る」
と約束をして、王子は自国への帰路についた。
ラプンツェルは王子が迎えに来ることを心待ちにした。