守秘義務
* * *
夕方――
人もまばらになり、そろそろ店じまいしようかと思った頃。
パースの店の前に長老が通りかかった。
「長老向けのいい商品があるよ」
パースは長老に呼びかける。
「傘なんかいらん」
長老は通り過ぎようとした。
「いやいや、傘じゃないよ」
パースは傘を陳列している台の下から、わらで出来た人形を出した。
「長老は呪いに関することが好きだから欲しがるかと思って仕入れてきた」
「汚い人形だな」
「わら人形っていうんだ。呪いの儀式に使うそうで、呪い方の説明書もあるよ」
「ふん、そんな迷信……」
「長老は、呪いとか毒とか好きだったろう? 気に入るかと思ってね」
そう言われると、長老はきょろきょろ辺りを見渡す。誰かに見られたらまずいと思ったようだ。
そばにいたシヴァは何やら調理器具を拭いているところだった。こちらを気にしてなさそうだ。
「じゃあ、他の誰かに売るよ」
「他に買うやつがいるのか?」
「そこは守秘義務ってやつだ。答えられないね」
「……買う」
パースが金額を告げると、長老は高いとぼやきつつ金を払う。
「毎度ありー」
パースは笑顔で商品を渡す。
「気に入ったらまた仕入れてくるから」
商品を受け取ると、長老はこそこそ懐に商品を隠し、足早に通り過ぎて行った。
「……迷信とか言いつつ買っちゃうんだね」
と、シヴァがパースに言った。実はしっかり聞いていたらしい。
「あー言うと買ってくれるんだ。なかなかの上客だよ。あと、こういうのは誰が何買ったとか言いふらしたりするなよ」
「わかってるよ。僕だって、一人で大量のたこ焼き買った人がいても言いふらしたりはしないんだから」
「やっぱり、シヴァは俺の運命の相手だなー」
二人とも商売をしているからか、そういう共通の認識はあるようだ。
* * *
露店はもう店じまいだ。
パースとシヴァと行商達は広場の後片付けをしていた。
そのそばで、環境維持ロボが二体、ゴミを集めつつ清掃作業をしていた。
黒い水晶と紫の水晶のロボだった。
「環境維持ロボって働き者なんだねー」
なんてつぶやきながら、シヴァは店を畳んでいる。
気のせいか、ロボが自分が見ているようにシヴァは感じていた。
後片付けも終わり、ふと見ると環境維持ロボはいなくなっていた。




