愉快犯
パースの言葉に、シヴァは首を傾げている。
「たしか強い魔法使いって言ってなかった?」
「ああ。髪切ったら平凡になったけど、ああ見えてキョウは相当強いんだ」
「……まったく魔力らしいものを感じないのだけど?」
と、シヴァ。
一見して魔力の強さがわかる者もいればわかりにくい場合もあるから、一概に言い切れるものではないのだが。
「いや、そんなはずは……」
パースはキョウの強い魔力を知っている。
言われてみれば、さっきのキョウからは魔力をほとんど感じなかった。
その時、たこ焼き屋に客が来たので、シヴァはやはり営業スマイルでそちらを対応する。
*
「それがな」
その隙にパースに話しかけたのは、ランズ・ルカーだ。
ランズは五番隊隊長でもあり農家でもある男である。行商ではないが、大根がたくさん収穫できたので、行商に混ざっておでんの調理販売をしていた。
「あのきれいな髪、外からの愉快犯に切られたんだって」
「………」
確かにキョウはルウの地の南の外れの方に住んでるから、外からのならず者が髪を切って逃げ去るなんて考えられることだ。
「犯人はどこの誰かもわからないんだと」
そこまで聞いて、パースは髪だけ切って逃げたんだろうなと思ったが、次のランズの言葉に驚愕する。
「……それが一番隊と二番隊の合同訓練中に殴り込みかけて、女隊長を誘拐したんだと」
「外部の者が? そんなことしたら戦争ふっかけてるようなもんだろう?」
思わず、パースの声が大きくなる。
ランズが慌てて、パースの口を押さえた。
「声が大きい」
とランズが辺りを伺う。
「このことは口外しないように言われてんだから」
「……なんで?」
「さあ? 最高位からのお達しらしいよ」
「………?」
「女隊長と引き換えにキョウは髪を切ったってさ」
「……それっておかしくないか?」
ファウは女ながら隊長を務めるほどだ。剣の達人でもある。強さだけならキョウよりもファウの方が格段に上だろう。
いくらキョウの魔法が強いといっても戦い向きの魔法ではない。
キョウの髪が目的なら、ファウを誘拐するより本人をさらった方が早いだろうに。




