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月色の砂漠~帰ってきた行商~  作者: チク


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11/23

変貌

     * * *


 次の日、ルウの地は盛り上がっていた。


 行商たちが一か月ぶりに帰ってきたのだ。

 行商は地方を回り、ルウの地の産物を売り、また各地の珍しいものを買ってくる。


 ルウの地中央の広場では、行商たちが露店を開いていた。それをルウの民は市場と呼びお祭りみたいになるのだ。

 行商たちのほとんどは四番隊と兼任である。


「そこの女隊長さん、傘はいかが?」

 ファウに声をかけたのは、四番隊隊長でもある行商の男――パース・ソナリアだ。


 その露店の前で、ファウは足を止めた。

「珍しい。傘か……」

 ファウは少し考え、

「少し前に雨降ったし買おうかな……。これ」

 ファウが取ったのは紫陽花柄の傘だった。もっともファウはその花の名前は知らなかったが。


 ファウは、パースにお金を払った。


「じゃあ、私も買おうかな」

 と、隣にいたキョウも傘を選んでる。


 ファウの隣にいたのがキョウだと気づいて、パースは驚いた。

「……え? お前、キョウか? 髪、どうした?」


 パースは、ファウの隣にいた男がまったくの別人だと思っていた。

 キョウの長くあざやかな金色の髪は、今や灰色の短い髪へと変貌していた。

 一か月、ルウの地を離れていたパースが、キョウの髪のことを知らないのも無理はなかった。


 さらに。

 ファウとキョウが二人一緒にいるのも、パースには不思議だった。

「……お二人さん、出来てたのか」


「うん、そう」

 赤くなり否定しない二人に、パースはさらに驚いた。


「ええっ!? キョウ! お前は俺の運命の相手じゃなかったのか……」

 このパースという男は、男女関係なくこういう台詞をよく言うのだ。


「あははは……」

 いつものことなので、キョウはパースのセリフを本気にはしていなかった。


「そうか。まあ、うん、おめでとう。だからきれいな髪をばっさり切ったんだな?」



     *


「あ、まあ……うん」

 この際そういうことにしよう、とキョウは思った。


「この傘にしようかな」


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