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ホワイトボックス  作者: 藤子
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松本part2

「どうして?…」


 続く言葉はどうして今になってその事を聞くの?だが、敢えて皆までは聞かなかった。

 義母は、キッチンのテーブルの椅子に腰かけると片方の手で頬を押さえながら、肘立てして話し始めた。

 俺はというとご飯を磨ぎながら話を聞いている。

 主婦の朝は一分一秒も無駄には出来ないのだ。


「知り合いの食堂を営んでいる人がね、ちょっと旦那さん腰を悪くしてしまって、治るまでの間バイトを探しているの。だからうちの子達に良いんじゃないかって思って」


 その言い方だと俺だけではなく陽ちゃんも一緒に、ということか。

 なら俺に断る理由はないな。

 何かあれば守れるし、害虫も駆除できる。


「私は良いけれど、陽ちゃんはどうかな?」


「あー大丈夫、大丈夫。……あの子葉ちゃんが往くところなら何処でも付いていくから!!」


「はは…」


 母親がそんなんで良いのだろうか?と思わなくも無いが、この義母のカラッとした明るい性格にこの家は救われているのだ。

 太陽の様な人。……俺が尊敬できる女性だ。


「そういう事なら私はいつでも大丈夫ですよ。……ただバイトは初めてなのでお役にたてるかどうか…」


 葉が申し訳無さそうな顔をするとと、義母は嬉しそうに笑った。


「うちの自慢の子供達が行くんですもの…絶対に大丈夫!!」


「絶対ですか?」


「ええ、絶対によ!!」


 絶大に信頼してくれている両親。俺にとっては本当の親と同様に大切な人達だった。


「お母さん、今お味噌汁を直ぐに作るから、それだけでも食べてから寝て?…おかずは作ってラップをかけて置いておくからレンジで温めてから食べてね」


「本当に………あなたって子は……陽にも手伝わせなさい!!私が起こしてくるから!!」

 立ち上がって今にも起こしに行こうとする義母を何とか宥めて止めた。


「大丈夫!!…大丈夫だよお母さん。陽ちゃんはちゃんと手伝ってくれてるの。……料理は私が好きでやっていることだから(陽ちゃんの胃袋は今からガッチリ掴んでおかないと)」


 義母は、お味噌汁を『染みる~!!』と言いながら食べて眠りについた。

 俺は、二人分の弁当と朝食、洗濯まで終わらせると2階に上がり俺の部屋で寝ている陽ちゃんを起こしに行った。

 部屋に入るとまだ彼女は気持ち良さそうに眠っている。


「陽ちゃん、もうそろそろ起きようか?」


 肩を擦っても起きる気配はない。

 だから……俺の悪戯心の方が眠りから覚めてしまった。


「起きないと、キスするよ?」


 小声で囁く当たりが、オレの精一杯だ。

 気付いて貰えなくていい。……ただ言いたいだけ。

 だから、返事なんて勿論期待なんてしている筈もなく……。


「じゃあ、もうちょっと寝てようかな?」


「!!!陽ちゃん起きて!?」


 驚いてベットから距離を取ろうとする俺の腕を、彼女の細い手がガシッと掴む。


「今起きたんですう~、ちゃんと起きたからご褒美頂戴?」


 彼女はそう言って、自分の左の頬を俺の方に差し出す。

 俺が何もしないとでも思っているのだろうか?…さっきの言葉が、ただ……からかっただけだと、本気で考えているのだとしたら………悪いけど、俺だって、男だよ。

 彼女も他の人達も皆女の子だと思っているし、思わせているけど。


 俺は、捕まれている反対の方の手で彼女の頭を押さえると額にチュッとキスをした。


「はい、ちゃんと起きてね?」


 にっこり笑う俺に、彼女は頬を膨らませた。


「額も嬉しいけど、頬が良かったのに~!!アメリカの日常を写したテレビ番組見たいに頬にキスするのやってみたかったのに~!!」


 ベットの上に懸かっている布団をバンバン叩いて悔しがっている彼女。


「ハイハイ、また今度ね?」


「絶対だからね!!」


 陽ちゃんは律儀に起きて支度を始める。

 ただ、俺の目の前で服を脱ぐのだけは勘弁してくれ。

 俺は片付ける不利をしながら然り気無く視線を彼女から外した。

 本音は見たいけど、それは駄目だ。


「そういえば、お母さんが私達二人にバイトしないかって言ってたよ?」


「え、何処で?」


「場所は解らないけど、知り合いの食堂だって……陽ちゃんはどうする?」


「私は葉ちゃんが、やるならやるよ」


「そっか、じゃあ私の方からお母さんに伝えておくね?」


「うん、お願い!!」


 俺たち二人は朝食を取り、一緒に学校に向かうが俺は一人でやりたいことがあった。

 どうしても、松本が許せない。

 あいつに苛立ちを持つ事事態お門違いなのは解っているけれど、あいつが告白なんてしなければ……いや、ちゃんと陽ちゃんを送ってさえいれば、彼女は傷つく事なんて無かったんだ。


 彼女が気にしていなくても俺は許せそうもなかった。

 だから、昼休みあいつを、あいつが陽ちゃんに告白した場所に呼び出した。

 陽ちゃんには、職員室に用があると嘘を付いて迄……。





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