【エピローグ】内田の魂・塚河の体
内田正太は内閣総理大臣を目指す熱い青年政治家であった。しかし彼は知ってはならないことまで知ってしまい交通事故によって志半ばにして命を落としてしまった。そして彼の魂は成仏することはできずにぷかぷかと浮遊し続けている。
○火石高校
「なんだよ微分積分いい気分って。くだらねえこと言ってんなよ。数学なんかやってられるかよ~」
やる気なくそうつぶやくこの男は塚河幸治、県立火石高校の生徒である。彼は今日も数学をサボるために保健室に向かっている。
「せんせーい!次数学なんでやすんでいいっすかー?」
「いいけど、理由どうするの?」
「私数学と聞くと腹痛を起こすんです」
「じゃあ紙書いて休んでねー」
彼はそうして休みを手に入れ、休養用のベッドへと進み、靴下を脱いで着衣をゆるめて布団をかぶった。その時彼はまさかわずか一時間後に別人になっているなど予想だにしなかった。
そのころ内田の魂は塚河が眠っている県立火石高校へたどり着いた。そこで内田は死んだように眠っている塚河を見つける。そしてこう思った。「こいつなら乗り移れる」と。塚河は体の中になにか熱いものがすぅっと入っていくのを感じた。塚河が目を覚ます。立ち上がる。着衣を整え保健室を出る。力強い足取りで自らの教室に向かっていく。その姿はたった一時間前の塚河とは全く違うものであった。