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誰が為の黄昏  作者: あめ
【閑話】 夏休み
37/96

色々あってそうなった3

 ぷいっとそっぽを向いて不貞腐れる瑠雨を蒼はチラリと見た。瑠雨のこういう所が中々面白くて──癖になる。


「…………幽霊って食べられるの?」


 蒼の疑問に白樹は暫し考える。ちらりと縮こまっている幽霊を見、率直な感想、意見を述べる。


「──ゼラチン質みたいな感じでローカロリー……なんじゃないかしら? クラゲみたいな」


 蒼の冗談めかした疑問に真面目に返答するくらいには、白樹は疲れていた。「クラゲ食べた事無いですね」、と瑠雨。「クラゲ私は苦手だな。見てる方が楽しい」、と蒼。蒼はともかく瑠雨も頭がおつかれの様子だ。

 幽霊は──怯えて震えている。そりゃそうだろう。なぜか捕まえられた挙句、食べられるかどうかという話を目の前でされているのだから。たまったもんじゃない。白樹は醤油を掛けて食べたら美味しそうね、と言う視線で幽霊を見る。震える幽霊、やんちゃな目をした白樹。何をどうとは言わないが、立場が逆ではないだろうか?


「あの──」


 幽霊は勇気を出して声をかけた。ん? と言う疑問符を浮かべながら反応した三人……+1。+1?


「あれれ? 別個体だ」


 何かふわふわと浮かびながらやって来た。そのまま白夜にすーっと近寄ると「あれ? 寝てるし。寝不足だったのかなー? 悪いことしたかも」となぜか謝る。

 そして別個体と呼んだ幽霊に近寄るとつんつんつつき始めた。


「わー幽霊初めて見た! 本物? 君なんだかクラゲっぽいねー! 食べた事ないけどふわふわ漂ってて綺麗なんだよねあれ。一度水族館で見た事あるけど見蕩れちゃったよ。──んん? 何で紐でぐるぐる巻にされてるの? そういうプレイ? 引くわー。それともペット? あ、だいたい意味おなじか。で、おねーさん達誰? あ、銀髪の人は知ってるよ。兎さんと一緒に前地下牢に来てたよね。そう言えば最近赤髪の子来ないねぇ。生きてる?」

 

 ──変なお化けに絡まれたわね。


 白樹は腰からそっと特性のナイフを抜き取り、手に隠し持った。お喋りお化けは楽しそうに一人会話をしている。──一人で会話とは何だろうとか考えては行けない。考えたら負けなやつ。白樹の手元に、蒼は気がついていない。

 ナイフ。普通07機関等で配布されるナイフは黒いものだが、白樹のは紺色にとっぷりと塗られている。好み、と言うよりも質の問題で白樹のこれは丈夫さが取り柄ではない。このナイフは特別性なだけあって、


「えいっ」


 清々しいまでに躊躇わず、白樹はそれをふわふわ浮いていたお化けに投げた。直ぐに「うぎゃっ!」と言う悲鳴が上がる。お化けに突き刺さったのだ。いったい何をしたらそうなる。


「捕獲」

「待って待って待って白樹」

「あら? 白夜起きたの? おはよう」

「寝てないし!」


 意外と早く目覚めた白夜は寝てはいない。少しの間夢現の世界に引っ張られていただけだ。そう、決して寝てはいない。増してや気絶なんて。


「醤油で食べようか」


 きらりとした目で蒼が言う。「どちらかと言うとポン酢だと思うよ」、と白夜はしっかり突っ込んだ後、この数分間の現状を把握しようとする。


 ──増えてる……?


 把握しようにも非現実的過ぎて脳みそが追いつかなかった。




 ◆■◆




「かき氷 ところてん 冷やし中華」「焼きそば お好み焼き カレー」

「わあお……見事に二人で分かれたわね」


 時雨は、呆れ半分関心半分で火花をパチパチ散らしあっている双子を見た。庭で水遊びしているのだ。シャワーが描く虹は綺麗に弧を描いている。時折飛んでくる虫──綺麗な緑色に輝く玉虫を素手で捕まえては眺めるのもまた一興。

 血を目当てに寄ってくる蚊を容赦なく殺しながら、時雨は雪斗の名前を呼ぶ。


「んん……? 返事がない?」

「雪斗兄様、ついに熱中症になったのかしら」「仕方ないよね。部屋にこもってずっと本読んでるんだもの」

「辛辣……」


 容赦ないその言葉に時雨は唸った。その言葉にくすくすと双子は笑う。別に双子が雪斗を嫌っている訳では無い。からかっているだけなのだ。双子が食べたいご飯をメモしたあと、時雨はソファで死んでいる雪斗に声をかける。寝ているのか、死んでいるのか。

 薄い胸板が微かに上下しているのを見て、思わず舌打ちをする。


「息してるし」

「そりゃあな、息してなかったら死んでるだろ。でもちょっと訳わかんないメールが来てキャパオーバーにはなってる」

「双子が熱中症で死んでるんじゃないかって期待……げっほごっほ心配してたわよ。──訳わかんないメール? どこから?」

「知り合いから。多分槻がいる組織だと思う」






「組織にお化けが増えたって」


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