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「異世界チート」なんて存在しない!!  作者: 宇治を愛する抹茶
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第1話 グダグダ新生活

異世界。時にモンスターを倒し、時にラブコメ展開へと発展する、まさに夢のような素敵な世界。

チート。ハーレム展開に王国建設、色々な夢を簡単に実現できるような最強の能力。


この手の話は大体面白く、読者も非常に多いので、瞬く間にラノベ界で一大ブームとなった。

そのブームに乗っかり、たくさんのラノベ作家や作家志望がいわゆる「異世界チートもの」を書くようになった。そして、ここにまた一人、異世界チートものに挑む男がいた。




「よし!投稿完了っ!!」


俺は日和 はじめ。異世界とチートをこよなく愛する高校1年生だ。小説を読むのは好きだが、それ以上に小説を書くのが大好きだ。ちょうど今、異世界チートものの小説を投稿したところだ。


「『異世界チート物語』…絶対流行るな…」


みんなが一番閲覧してくれる7時頃だし、異世界ものだし、絶対ポイント伸びると思う。今日は疲れたし寝てしまおう。明日の朝にどのくらい伸びてるだろうな。




~次の日~

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


感想欄を見ると、ボロクソに叩かれていた。

【異世界ものの中でもかなり酷い部類じゃね?これwww】

【流行りに乗ろうとした感がどうしても否めない笑笑】

こんなにこっぴどく評価されるとは。結構自信あった作品なだけに凹む。

悔しくて、ネットで「異世界チートもの 書き方」と検索してみた。すると、色々なサイトが出てきた。一つ一つ見ていったが、すごく難しかった。セリフの一つとっても、どこに入れるかなどを工夫しながら書くことが重要なのだとか。何より異世界ものの代名詞でもある、モンスターの描写を鮮明にするのに、細心の注意を払えと書いてあった。


「これ…ムリじゃね?」


正直、やる気が失われつつあった。

だけど、ページを遡っていると何やら怪しいサイトを見つけた。


『大丈夫!文を書くのが苦手なあなたも、女神様の丁寧な指導で文豪に!異世界チート書きたくない?』


怪しいけど、今の俺には救世主のようにみえた。文面の全てが俺の心を鷲掴みにしていった。


「これだっ!!!」


藁にもすがる思いで会員登録のボタンをタップした。電話番号とメールアドレスを入力して、待つこと3分。奇跡は起こった。突然ケータイが宙に浮いて、なんと液晶から女の子が出てきたのだ。長い髪の可愛い女の子だった。


「わたしは女神様!!誰がなんと言おうと女神様よ!名字は女、名前が神で『めがみ』と読むわ!!」


突然の気迫に圧倒されて、つい口をポカーンとしてしまった。


「お、おお俺は日和はじめです!女神様、どうか俺に最高の異世界チートを書かせてください!!」


最後の頼みの綱だ。必死の思いで土下座をすると、二マリと女神は笑った。


「よかろう、ついてこい!わたしにしっかり捕まれよ!さんにのいち、ハイっ!!!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


ベルトのめちゃくちゃ緩いジェットコースターに乗るような気分で、飛ぶこと数分。

俺は大好きな『異世界』に来ていた。




目を開けると、空が見えた。鳥の鳴き声がした。どこかすごく近いところから聞こえるような気がしたので、見回してみたけれど鳥らしきものはいなかった。だが、ものすごい速さで俺の隣を走っていく奴がいた。


「だずげでぇぇぇぇぇぇ」


さっきまで自信満々だった女神様だった。

女神様は何から逃げているのかと思い、後ろを見ると。


「だずげでぇぇぇぇぇぇ」


俺も同じ叫びをあげ走り出すことになった。すごいデカい鳥みたいな恐竜がとてつもない速さで追ってきていたのだ。


「はじめ君、これが異世界ものでよく出てくる、いや王道と言ってもいいモンスター!!ドラゴンだ、よーく見ておけ!」


いやいや、そんな悠長なこと言ってられないですよ!?見てみるとドラゴンは案の定ヨダレをたらしていた。絶対俺たち食われるぞあれは。


「いやいや、無理、死ぬっ、あぁぁっ!!」


その時もはやテンプレのタイミングで奇跡が起こった。


「Light Attack!」


俺の横を鋭い衝撃波が通り過ぎて行き、見事にドラゴンに命中した。衝撃波が飛んできた方向には、The.勇者といったような感じの服を着たイケメンが立っていた。


「大丈夫ですか!?」


イケメンが女神様に駆け寄った。だが女神様はイケメンそっちのけで俺に話しかけてくる。


「はじめ君、これがいわゆるお姫様展開というやつだよ!!わたしも今初めてやられたよヤバいよ興奮するよコレ!!」


鼻の穴を膨らませながら語ってくる。だがそんな女神様にせまる危険を俺は察知した。


「あ、危なぁい!」


ドラゴンが起き上がり、女神様に攻撃しようとしていた。しかしそれをも勇者は跳ねのけた。


「Styrofoam shieldッ! 」


巨大な白い塊が現れ、ドラゴンの爪をいともたやすく弾いた。


「ふぉぉぉぉ!かっけぇー!!!」


キャラ崩壊している女神様が、子供のように手を叩いている。


「危ないところだった。キミも大丈夫だったかい?」


おぉ、俺にも心配してくれるとは、流石勇者様だ!異世界チートものに出てくる主人公は、大体いい人だから好きだ。


「うん、ここは危ないからひとまず村へ行こうか。付いてきてくれ」


村には馬車で向かったため、車中は退屈だった。なので、持っていたスマホで「Light Attack」「Styrofoam shield」を検索してみた。翻訳結果が出てきたので見てみたら、こうなっていた。

【軽めの攻撃】【発泡スチロールの盾】

これを見て俺は一言だけつぶやいた。


「いやこれ勇者ダッサ」






ダサい勇者が連れてきてくれた村は、the・村といった感じの村だった。


「さぁここがボクたちの村、インポーター村だよ。自分の故郷のように思ってくれて構わないよ。好きなだけここで過ごすといいさ」


親切な勇者が案内してくれる。頑張って説明してくれてる後ろで「インポインポ~w」「インポ村w」とか言ってる子供たちは気にしないでおこう。


「ここが長老の家だ。一応挨拶だけはしておこう」


家の前に門番のような人が立っていたのでそれなりにすごい人なのかな、と思って入った矢先。


「おまいらパズストやってるかえ?」


80歳を越えているかどうかくらいの老人が、スマホを見ながら聞いてきた。俺の中での長老のイメージが崩れてきた…。幸いパズストはやっているので、俺のBOXを長老に見せた。


「おぉ!なかなかいいモンスターもってるのぉ!実はわし、三年近くやってて1体もアイリスたん持ってないんじゃよ~」


アイリスとは、パズストの中でも人気がかなり高く、性能も良い強キャラだ。比較的当てやすく、一年やってれば当てられるといわれている。俺はガチャ運が良く、3体持っていて…


「アイリスたん未所持勢からすると、アイリスたんフレンド枠にしてるやつとかマジうざいんじゃよ!アレ?1、2、3…フレンド枠は…」


ヤバい。アイリス3体所持バレた。長老は血管を浮かび上がらせながら言った。


「こいつら追い出せ」





「薄々気づいてはいたが、この世界ゴミしかいないんじゃないのか?」


長老の家を理不尽に追い出された俺たちは途方に暮れていた。そして女神様はというと、完全にキレていた。


「はじめ兄貴、あいつtmitterで晒します?」


そう言ってくる女神様のスマホの画面を見ると、【フォロー1225 フォロワー326】と書いてあり、なんとも言えない気持ちになった。


「というか、女神様はなんでこんなお仕事を?」


普通に考えて女神といえば、不自由なことはないだろう。


「いやパズストに課金したいんだけど、父上にお小遣いで課金するのは禁止って言われたんだよ」


もう滅茶苦茶だ。というか天界でもパズストが流行っていることに驚きだ。でも、この女神様に付いてきてよかったかもしれない。今までの固定概念がほぼ180度覆った。この世界をモチーフにして小説を書けば売れるんじゃないだろうか?とりあえずもう少しこの世界を研究して、絶対に面白い小説を書いてみせる!!俺はそう決めた。

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