第2話 女王の種馬
カムイはシーラと共に王宮にやってきた。
本当はシーラを連れてくるつもりはなかった。まだ正式な夫婦になっていないからだ。
しかしシーラが頑なについてくと言うので、王宮が用意したラクダに乗り、王宮の門をくぐった。
「うわぁ…」
Ωとして生まれたカムイには、王宮など全く縁のないものだった。
見事なモザイク壁画
アラベスク模様に装飾
初めて見る王宮はとても美しかった
「シーラ!お前もよく見とけよ。こんな立派な装飾、なかなかお目にかかれないぞ。」
「私は…いいわ…」
王宮に来てからと言うもの、シーラはずっと暗い顔をしている。きっと緊張しているのだろう。
応接間に通される。
当然のことだが、王宮とだけあって厳重な警備がしかれている。
空気が重い。
「女王のおなりだ。おもてをさげよ。」
側近のようなものに支持される。
その高圧的な態度に少しムッとしながらも、カムイは指示に従った。
シャラン
美しい鈴の音がした。
「苦しゅうない。面をあげよ。」
恐る恐る顔を上げると、美しく真っ黒に伸びた黒髪に、シルクと金の装飾を纏った美しい女がいた。
ドクンッ
女王と目が合った瞬間、カムイに異変が起きた。
(なんだ…?この動悸…それに彼女からとてもいい薫りがする……もっと近くで…彼女の薫りを感じたい…)
自分でも訳がわからない、強い衝動に駆られた。
「フッ…やはりな…」
女王が不敵に笑う。
「そなた、名前は。」
「カムイ…カムイ・タラシャ」
「カムイ…。隣におるものは?
お前以外呼んだつもりはなかったのだがのぅ。」
「彼女は…俺の恋人」
「シーラと申します。」
シーラが自ら名乗る。
「ふぅん…まあよい。さて、カムイとやら。お前今年でいくつになる。」
「…18」
「発情期はもうきておるか?」
「はっ、発情期って…!?」
突然の質問に戸惑うカムイ。
「いいから答えよ」
「まだだ…」
「ほう、これは好都合。ほかのものと番われてたら元も子もないからな。いいだろう、ラオネ?」
女王が傍にいる側近に目配せする。
「…あなたの思いのままに。」
「ふん…。よし、カムイ。私の夫となれ。」
「はぁっ!?」
突然のことすぎて意味がわからない。
「だから、私の種馬になれと言っているのだ。カムイ。」